雨のあとに虹 その170
「お待たせ致しました。」
久美子は珈琲を出して言った。
「次のお客様はこちらへどうぞ。」
ひとみは言うとタイミングよく処理をした。
「パスタのお客様お待たせしました。」
久美子が言ってパスタを持って歩いて行った。
「ポイントカードをお持ちですか?」
小百合が言った。混雑していてもすばやくこなす事が出来ようになったのは少しずつ従業員たちが慣れてきたからであった。
「堀川さんは先に休憩に入ってね。」
ひとみが言うと
「次に休憩に入ります。」
久美子は言った。
「バタバタしていてすみません。」
駅前の雑踏で俊之は桑田の姿を見つけて駆け寄って来て言った。
「気にしないでください。」
桑田は言った。
「5分遅刻しましたね。」
俊之が言うと
「今日は別な方面の話を聞きたいだけです。」
桑田は手短に言った。
「別の話とは何でしょうか?」
俊之が言うと
「高村さんの小学校や中学の時にはどんなお子さんだったのですか?」
桑田は言った。ひとつずつ質問が始まっていた。
純一は周囲を見回していた。純一は自宅裏にある畑で仕事をしている事が多い。季節ごとに花を生産して取引先に出荷する事で収入を得ていた。数人のパートやアルバイトを雇って畑で作業をする純一であったが半年くらいは経営が苦しく生産どころではなかったのだ。資金繰りに奔走したあとに畑から戻る途中で人の気配が強くなった。誰かに見られているような気配を感じる純一であったが玄関の前まで来るとその気配が消えてしまうのだ。玄関から畑までのわずかの時間にそれがあるのだった。
「ただいま。」
純一は言って玄関を入った。
「お帰りなさい。」
千晴が言った。
「今日は学校じゃなかったのか?」
純一が言うと
「インフルエンザが流行して学級閉鎖になったのよ。」
千晴は言った。
「ところで静江は?」
純一が言うと
「仕事だと思うよ。」
千晴は言った。
「帰りが遅いな。」
純一が言うと
「時間通りに終わるとは限らないそうだよ。」
千晴は言った。
「そうか。」
純一は言った。
久美子が改札口を出て来るのを俊之はすぐに見つけた。先に右手を上げた俊之は笑みを浮かべて久美子を見た。久美子も俊之を見て
「私の方が遅刻しちゃったね。」
と言いながら微笑んだ。
「少しくらい構わないよ。」
俊之は言った。
「お腹空いたでしょ?」
久美子が言うと
「空いたね。」
俊之は言った。
「どこか空いているお店にでも入りましょう。」
久美子が言うと
「向こうのにおしゃれな店があるよ。」
俊之がイタリアンレストランを示して言った。