雨のあとに虹 その208
「とんだハプニングでしたね。」
翔太が言った。田所が警察に身柄を拘束されると関口たちは警察官に感謝されたのであった。俊之たちは出来る限り被害者たちの救護をした。育子はここでも知識を発揮して久美子に的確な指示を出していた。俊之は人工呼吸などを翔太と連携をとっていっていた。警察で田所の話をしてから空いてるレストランに入ったのであった。
「育子さんは動じないで的確な行動をとるとはさすがだ。」
俊之が言うと
「久美ちゃんも動じないで偉かったよ。」
育子は言った。
「私は緊張していてよく覚えていないですよ。」
久美子は言った。
「久美子さんも立派でしたよ。」
翔太が言うと
「普通の女の子ならあの場合はパニックするけどね。」
育子が言うと
「私はひとりではなくてみんなが一緒だったから出来たと思います。」
久美子は言った。
「みんなが一緒でよかったよ。」
俊之が言うと
「ひとりだったらどうなっていたか解らないですよ。」
久美子は少し緊張して言った。
「関口さんたちにはいつもお世話になって感謝しているよ。」
俊之は言った。
「関口たちにはきちんと話がついていますから大丈夫ですよ。」
翔太はとあっさり言った。
「春香さんにも確認した上で関口さんたちと総武で雇用契約を結ぼうと思っているよ。」
俊之が言うと
「いい考えですね。」
育子は言った。
「関口さんたちも生活が安定して努力が報われますよ。」
久美子が言うと
「高村さんにお任せしますよ。」
と翔太は言った。
「関口さんは突っ張って見えるけどいい人よね?」
育子が言うと
「どうして解るの?」
俊之は言った。
「悪い人ならあそこまで真剣にならないでしょ?」
育子が言うとみんなが頷いていた。
雨のあとに虹 その207
「今までお世話になりました。」
静江が純一に言った。
「うん。」
純一は短く言った。
「月に一度は様子をおとうさんの様子を見に来るからね。」
千晴が言うと
「おかあさんの言うことを聞かないとダメだぞ。」
純一は言った。
「お母さん行こうよ。」
千晴が言うと
「当分会えないけど千晴を月に一度会いに来させますからね。」
静江が言うと
「月に一度なのか?」
純一が口の中で言った。静江と千晴が歩いて行くのを純一は玄関で見送っていた。
「いろいろとおしゃな物が多いね。」
俊之が言うと
「このネックレス素敵ね。」
久美子は言った。
「男の僕でも欲しくなるよ。」
雑貨店の中で俊之が言うと
「このカップも変わったデザインでしょ?」
久美子が言いながら俊之に見せた。俊之がカップを見ると女性の悲鳴と男性の叫び声が聞こえた。異様な殺気とも言えるものを俊之は感じていた。
「どうしたのだろう?」
俊之が言って店の外を見ると逃げ惑う人たちが見えた。さらにその後ろに大声を出しながら逃げる人を追ってダガーナイフを振り回している中年男が見えた。周囲には刺されて倒れこむ人が無数に見えていた。
「みんな早く逃げないと危ない。」
俊之の後ろで久美子が言った。俊之は中年男の顔を見ると田所であった。
「田所がどうして何を暴れているのだ。」
俊之は言うと田所の方へ歩き出していた。
「高村さんは危険ですから行ってはダメです。」
関口たちが叫んで6人のメンバーと一緒に俊之の傍へ来ていた。
「関口さんには久美ちゃんを頼むよ。」
俊之が言って田所の方へ近づいて行った。
「俊さんも気をつけてね。」
久美子は言った。
「高村さんひとりでは危険です。」
翔太が近くに来て言った。
「私たちも協力するよ。」
横に来た育子も言った。
「ふたりともいい所で会ったね。」
俊之が言うと
「何とかしましょう。」
翔太は言った。
「これ以上被害を出すわけには行かないからね。」
俊之が言うと翔太は頷いていた。今の俊之は誰にも止められなかったのである。
「育子さんは久美子さんを頼むよ。」
翔太は言った。
「任せてよ。」
育子が言うと
「関口はここに来て育子さんと変わってくれ!」
翔太が大声で言った。関口が翔太の方へ走って来ると育子が久美子の方へ走って行った。田所が逃げ惑う人々を追いかけているのがよく見える。刺されて倒れ込む人も多かったが救急のサイレンはまだ聞こえていなかった。田所は俊之に気付き歩いて近づいて来た
「ここは僕が何とかします。」
翔太が言って身構えると
「彼は僕の元同僚だから僕が相手をするのが礼儀だよ。」
俊之は言うと田所の方へ近づいて行った。
「俊さん気をつけてね。」
久美子が言うと
「高村さんがんばってね。」
育子は言った。やがて俊之と田所は対峙していた。
「俺を馬鹿にした奴らに思い知らせてやるぞ。」
田所は言ったが目は完全に正気ではなかった。今の田所に俊之の姿も認識できてはいないようであった。田所がダガーナイフを振りかざして俊之の方へ走って来きた。俊之も田所の方へ走って行った。
「死ね!」
田所が言ってダガーナイフを俊之の腹部に向けて刺してきたが俊之は避けて拳に力を入れると田所の顔面に命中させていた。田所の動きが止まると俊之は田所の手に蹴りを入れてダガーナイフを空中に飛ばしていた。その瞬間を見逃さずに関口たちが田所を押さえ込み翔太はダガーナイフを拾った。押さえ込まれた田所は完全に身動きが取れなくなっていた。
「警察が来るまで頼むぞ!」
翔太が大声で関口に言った。
「久美ちゃんと育子さん。」
俊之が言うと久美子と育子が走って来た。
「私も何か手伝います。」
久美子が言うと
「人工呼吸しないとね。」
育子は言った。
「流れている血液に気をつけてよ。」
俊之が言うと
「はい。」
久美子は言った。
「任せてよ。」
育子が言うと
「血液に触れると感染症の恐れがあるからね。」
俊之は冷静に言った。
雨のあとに虹 その206
「運気を上げると言うことは他力本願ではなくて自分の力を確実に発揮する事が大切です。」
俊之は言った。教室内に80人ほど居る受講生たちが俊之の目を見て聞いていたのである。天門が開運術の講習会で俊之をゲストに呼んでの講義は大盛況だった。特別ゲストとして俊之が天門に招かれて話をするのは初めてであるがもっと早くに実現していてもよかったのである。天門と天門の一番弟子の鈴木方正と桑田に久美子も俊之の話を聞いていたのである。
「久美子さんは高村さんの講義を聞くのは初めてですか?」
天門が小声で久美子言うと
「今まで一度も講義を聞く機会がありませんでした。」
久美子も小声で言った。
「女子高校生の5人組に声をかけられましたが周囲には人がたくさん人居るから少し恥ずかしくなりましたよ。」
俊之が言うと少し笑いが起こっていた。
「高村さんの話術は人を引きつけますね。」
桑田が天門に言うと
「これだけの人数を注目させるとはさすが高村さんだよ。」
天門は言った。俊之の声は部屋中に響いていた。
「運気は自分が能動的に動かないと上がらないようですね。」
久美子が言うと
「久美子さんは頭が良いね。」
天門は言った。
「高村さんも天門先生の術を受け継ぐ才能がありますね。」
鈴木方正は俊之を見て言うと
「私もそう思いました。」
桑田は小声で言った。
「久美子さんもしっかり大事な事を理解されたようですね。」
天門は嬉しさを隠せずに言った。天門は俊之の体験談だけで基本的な姿勢を理解した久美子に感心していたのである。
「それではそろそろ時間のようですのでこれで終わりにしたいと思います。」
俊之は言った。
「ありがとうございました。」
受講生たちが言って全員から拍手が起こっていた。
「早いね。」
翔太は言った。待合わせの場所に約束の時間より早く着いたが翔太であるが育子はさらに早く着いていたのだ。
「ちょうど今来たところだよ。」
育子は微笑んで言った。育子はアスリートには見えなくて雑誌のモデルのようである。翔太は改めて育子をじっと見ていた。
「まずは珈琲でも飲もうよ。」
翔太が言うと
「いいよ。」
育子は言った。
「どうもお疲れ様でした。」
天門は笑顔で言った。レストランはまだ空いていて少し早い昼食であった。
「天門の依頼なら何をおいても駆けつけますよ。」
俊之が明るく言うと
「俊さんがあんなに話術が上手だなんて知らなかった。」
久美子は言った。俊之と久美子に取材中の桑田が天門との楽しい時間を過ごしていた。
「高村さんは話をする仕事に向いていますよ。」
桑田が言うと
「大学の大川教授より解りやすいです。」
久美子は言った。
「自分では何も意識しないで話をしていますけどね。」
俊之は少し照れて言うと
「その部分も漫画ではしっかり表現しておきますよ。」
桑田は言ってしっかりメモをした。
「昨日の連中は裏道会の構成員だよ。」
翔太は珈琲を飲みながら言った。
「ひとりの女性にたくさんの男がなんて許せない。」
と育子が言うと
「場合によっては育子さんに協力して貰わないといけないかもしれない。」
翔太は言った。
「私でよかったら協力するよ。」
育子が言うと
「お願いできるかい?」
翔太は言った。
「直子さんがかわいそうだからね。」
育子は言った。店は少しずつ混んできていた。
「翔ちゃんたちと約束の時間にはまだ余裕があるね。」
俊之が言うと
「歩行者天国を散歩したいな。」
久美子は言った。
「おしゃれな店もあるから見て回ろうよ。」
俊之が言うと
「そうしよう。」
久美子は微笑んで言った。ふたりは誰が見ても恋人同士に見えていた。
「さすがに取材とは言えデートまでは一緒に行くわけにはいかないからね。」
桑田はひとりで呟くと歩き出した俊之と久美子の後姿を見送っていた。