雨のあとに虹 その207
「今までお世話になりました。」
静江が純一に言った。
「うん。」
純一は短く言った。
「月に一度は様子をおとうさんの様子を見に来るからね。」
千晴が言うと
「おかあさんの言うことを聞かないとダメだぞ。」
純一は言った。
「お母さん行こうよ。」
千晴が言うと
「当分会えないけど千晴を月に一度会いに来させますからね。」
静江が言うと
「月に一度なのか?」
純一が口の中で言った。静江と千晴が歩いて行くのを純一は玄関で見送っていた。
「いろいろとおしゃな物が多いね。」
俊之が言うと
「このネックレス素敵ね。」
久美子は言った。
「男の僕でも欲しくなるよ。」
雑貨店の中で俊之が言うと
「このカップも変わったデザインでしょ?」
久美子が言いながら俊之に見せた。俊之がカップを見ると女性の悲鳴と男性の叫び声が聞こえた。異様な殺気とも言えるものを俊之は感じていた。
「どうしたのだろう?」
俊之が言って店の外を見ると逃げ惑う人たちが見えた。さらにその後ろに大声を出しながら逃げる人を追ってダガーナイフを振り回している中年男が見えた。周囲には刺されて倒れこむ人が無数に見えていた。
「みんな早く逃げないと危ない。」
俊之の後ろで久美子が言った。俊之は中年男の顔を見ると田所であった。
「田所がどうして何を暴れているのだ。」
俊之は言うと田所の方へ歩き出していた。
「高村さんは危険ですから行ってはダメです。」
関口たちが叫んで6人のメンバーと一緒に俊之の傍へ来ていた。
「関口さんには久美ちゃんを頼むよ。」
俊之が言って田所の方へ近づいて行った。
「俊さんも気をつけてね。」
久美子は言った。
「高村さんひとりでは危険です。」
翔太が近くに来て言った。
「私たちも協力するよ。」
横に来た育子も言った。
「ふたりともいい所で会ったね。」
俊之が言うと
「何とかしましょう。」
翔太は言った。
「これ以上被害を出すわけには行かないからね。」
俊之が言うと翔太は頷いていた。今の俊之は誰にも止められなかったのである。
「育子さんは久美子さんを頼むよ。」
翔太は言った。
「任せてよ。」
育子が言うと
「関口はここに来て育子さんと変わってくれ!」
翔太が大声で言った。関口が翔太の方へ走って来ると育子が久美子の方へ走って行った。田所が逃げ惑う人々を追いかけているのがよく見える。刺されて倒れ込む人も多かったが救急のサイレンはまだ聞こえていなかった。田所は俊之に気付き歩いて近づいて来た
「ここは僕が何とかします。」
翔太が言って身構えると
「彼は僕の元同僚だから僕が相手をするのが礼儀だよ。」
俊之は言うと田所の方へ近づいて行った。
「俊さん気をつけてね。」
久美子が言うと
「高村さんがんばってね。」
育子は言った。やがて俊之と田所は対峙していた。
「俺を馬鹿にした奴らに思い知らせてやるぞ。」
田所は言ったが目は完全に正気ではなかった。今の田所に俊之の姿も認識できてはいないようであった。田所がダガーナイフを振りかざして俊之の方へ走って来きた。俊之も田所の方へ走って行った。
「死ね!」
田所が言ってダガーナイフを俊之の腹部に向けて刺してきたが俊之は避けて拳に力を入れると田所の顔面に命中させていた。田所の動きが止まると俊之は田所の手に蹴りを入れてダガーナイフを空中に飛ばしていた。その瞬間を見逃さずに関口たちが田所を押さえ込み翔太はダガーナイフを拾った。押さえ込まれた田所は完全に身動きが取れなくなっていた。
「警察が来るまで頼むぞ!」
翔太が大声で関口に言った。
「久美ちゃんと育子さん。」
俊之が言うと久美子と育子が走って来た。
「私も何か手伝います。」
久美子が言うと
「人工呼吸しないとね。」
育子は言った。
「流れている血液に気をつけてよ。」
俊之が言うと
「はい。」
久美子は言った。
「任せてよ。」
育子が言うと
「血液に触れると感染症の恐れがあるからね。」
俊之は冷静に言った。