雨のあとに虹 その202
「困った事になりました。」
立花は社長室に入って来て言った。珍しく慌てているのがすぐに解った。
「どうかしたの?」
俊之は言って見ていた書類から目を立花の方へ向けた
「実は総武鉄道の延長に伴い開発中の駅ビル建設工事にクレームをつけてきた団体がありまして困っています。」
立花が困った顔をして言った。
「それはどんな団体なの?」
俊之が言うと
「江紫組という暴力団です。」
立花は言った。
「それを何とかするのが立花さんの仕事でしょ?」
俊之の横に居た陽子が言った。
「そうですけどね。」
立花が言うと
「高村さんを危ない目にあわすつもりなの?」
陽子は少し怒ったように言った。
「解ったよ。」
俊之が言うと
「どうするのですか?」
立花は驚いたように俊之の目を見て言った。
「明日の午後一番に話をつけに行こう。」
俊之が言うと
「それはよかったです。」
立花は言った。
「情けないわね。」
陽子が言うと
「一緒にお願いします。」
立花は言った。
「江紫組にアポイントを取っておいてください」
俊之が言うと
「私もご一緒します。」
陽子は言った。
「今電話で話して大丈夫かな?」
育子が言うと
「大丈夫ですよ。」
久美子は言った。
「今度の休みに夕方から会わない?」
育子が言うと
「いいですね。」
久美子は言った。
「私は笹川さんを連れて行くから久美ちゃんは高村さんを誘ってよ。」
育子が言うと
「私から俊さんを誘ってみます。」
久美子は言った。
「昼間はお互いにどこかで遊んで夕方方くらいに落合おうよ。」
育子が言うと
「そうしましょう。」
久美子は言った。
「楽しみにしていてよ。」
育子は久美子を妹のように感じて言うと
「よろしくお願いします。」
久美子は言った。休憩時間が終わりカウンターに戻る時間になっていた。
「堀川さん。」
小百合が言って久美子を見た。
「親分!」
柳田が言うと
「何だ。」
町島は柳田を見て言った。事務所には歴代組長の写真が飾ってあり高級な机や椅子が置いてあった。
「総武側から明日会いたいと言ってきました。」
柳田が言うと
「返事が早かったな。」
町島は言った。
「総武は次期社長が来るそうです。」
柳田が言うと
「総武の次期社長とは誰の事だ。」
町島は言った。
「誰だと思いますか?」
柳田が言うと
「白仁正樹が来ると思っていたが違ったな。」
町島は言った。
「高村俊之さんですよ。」
柳田が言うと
「それを早く言え!」
町島は大声で言った。
「私は驚きました。」
柳田が言うと
「高村俊之さんは大物になったな。」
町島は言った。
雨のあとに虹 その201
「わざわざお呼びだてしてすみません。」
俊之は社長室で織田と向かい合って言った。
「仕事を貰うのだからこちらからお伺いするのは当たり前ですよ。」
織田が言うと
「織田さんにはお世話になりっぱなしですね。」
俊之は言った。
「それはお互い様ですよ。」
織田が言うと
「ちょうど総武グループでもインターネット環境を充実させていこうという方針を出すので織田さんのお力を借りたいと思いましてね。」
俊之は言った。
「弊社でできる事なら何でもお手伝いをさせていただきますよ。」
織田は冷静な表情で言った。
「具体的な事は管理本部の立花のところが担当していますからあとでご紹介します。」
俊之は言った。
「石井さん?」
弘子が言った。純一の携帯に弘子から電話があったのは初めてだった。
「あんたからかけてくるとは珍しいね。」
純一が言うと
「実は日程を来週に延ばしてほしいと思ってね。」
弘子は言った。
「どうしてもすぐに金が入用だから何とかならないか?」
純一が言うと
「その代わりに2倍の金額を払うから来週まで待ってよ。」
弘子は哀願するように言った。
「仕方がないな。」
純一が言うと
「お願いよ。」
弘子は言った。
「金額を2倍払ってくれるのなら来週でいいよ。」
純一が言うと
「そうしてくれると助かるわ。」
弘子は言った。
「今度とは引き延ばさないでくれよ。」
純一が言うと
「いつものところで待っていてね。」
弘子は言った。電話を切った弘子に牛島が
「どうだった?」
と言った。
「金額を2倍払うと言ったら待ってくれたわ。」
弘子が言うと
「それでいい。」
牛島は言った。
「仕方がないね。」
ワールドコミュニケーションズの社長室で深水が言うと
「すみません。」
久美子は言った。
「もう考えは変わらないよね。」
深水が言うと
「私もいろいろ考えて結論を出しましたので変わらないと思います。」
久美子は言った。
「堀川さんは若いけどしっかりした考えを持っているので簡単に結論は変わらないと思いますよ。」
久美子の隣に座っていたひとみも言った。
「それは堀川さんのしぐさで解ったよ。」
深水が言うと
「せっかくのお話なのにすみません。」
久美子は言った。
「時間を取らせてすまないね。」
深水が言うと
「とんでもありません。」
久美子は言った。
「それにしても残念だよ。」
深水が言うと
「すぐに優秀な人材が入って来ますよ。」
ひとみは言った。
「堀川さんもがんばってね。」
深水は言うと深水は立ち上がった。
「ありがとうございました。」
久美子は言って頭を下げた。
「堀川さんは社長の目にとまって羨ましいってみんな言っていたわよ。」
ひとみは微笑んで言った。
雨のあとに虹 その200
「おはよう!」
山本が出勤して来て言った。
「おはようございます。」
まどかは広い役員室で珈琲を入れて言った。
「田所くんは今日も来ていないのかね?」
山本が言うと
「はい。」
まどかは短く言った。
「困った奴だな。」
山本が言うと
「ご自宅に電話を入れてもつながりません。」
まどかは言った。
「つながらないとはどういう事だね?」
山本が言うと
「お客様のご都合によりおつなぎできませんとメッセージが流れました。」
まどかは言った。
「田所の奴は何をやっているのだ。」
山本はあきれて言った。
「高村さんはこちらに目を通しておいてください。」
陽子が言うと俊之はその書類の中を見た。
「数字は先月とほぼ同じだね。」
俊之が言うと
「少しいいですか?」
陽子は言った。
「いいよ。」
俊之は言って陽子を見た。
「ここ数日お元気がないようですね。」
陽子が言うと
「そう見えるかい?」
俊之は言った。
「余計なことだと解っていますけどね。」
陽子が優しく言うと
「遠慮しないで何でも言ってください。」
俊之言った。
「時には強引さも必要ですよ。」
陽子は俊之の目を見て言った。
「今日もテストは簡単で良かったね。」
昼食のあともうひとつ残っているが調子が良い時には次のテストも簡単な問題が出るような気がして純子は言った。
「次はそんなに難しくないと思うよ。」
久美子は冷静に言った。学食は込んでいたがそんな事を気にしてはいられないのだ
「難しい問題が出たらどうしようかな?」
純子が言うと
「先日のレポートの延長戦みたいなものよ。」
久美子は言った。
「それなら簡単じゃないの。」
純子が言った時に久美子の携帯電話が鳴った。表示は珍しくひとみからであった。
「堀川です。」
久美子が言うと
「ローテーションの事で確認したい事があるけれど良いかしら?」
ひとみは言った。
「私は大学が休みになるのでフルに出勤できますよ。」
久美子が言うと
「今週から土日は休みにした方が良いと思ってね。」
ひとみは言った。
「土日は忙しいのに大丈夫ですか?」
久美子が言うと
「そんな事はどうでもいいわよ。」
ひとみは言った。
「お店も大変ですよね?」
久美子が言うと
「カナダへ行く前に高村さんとの思い出をたくさん作らないといけないでしょ?」
ひとみは言った。
「そうですよね。」
久美子が言うと
「1年はとても長いのよ。」
ひとみは言った。