雨のあとに虹・Part2 その79
「青い龍の魯文仁さんですね?」
大輪が言うと健春が大輪の隣で周囲を鋭く凝視していた。
「あなたたちはどなたですか?」
魯が言うと
「その日本人を返してもらいたいだけですよ。」
大輪は言った。
「その日本人が日本の警察と自衛隊で特殊訓練を受けていた事を忘れて油断しましたね。」
健春が翔太の事を言うと
「君たちは警察の人間か?」
魯は言った。
「私は闘真拳の師範である李和平先生門下の王大輪です。」
大輪が言うと
「同じく陳健春です。」
健春は言った。
「李先生と我々門下生の中国における立場はお解りですね?」
大輪が言うと
「逆らえば国家権力を持って青い龍を潰すということですか?」
魯は言った。
「李先生はそんなお方ではありません。」
健春が言うと
「その覚悟があると言いたいだけです。」
大輪は言った。
「どうしてそれほどまでにしてこの日本を助ける理由があるのだ?」
魯が言うと
「もうその人を離しても大丈夫ですよ。」
健春は翔太に向かって言った。
「その人を放しても大丈夫だと言っているよ。」
俊之は翔太に言った。
「はい。」
翔太は魯を離して言った。
「どんな会話をしているのですか?」
久美子は心配して陽子に言った。
「英語なら解るけれど中国語までは解らないわ。」
陽子は困惑して言ったのである。
「その人は我々の兄弟子で弟子の中では闘真拳の最高峰を極めていらっしゃるお方です。」
健春は俊之の事を魯に言った。
「この日本人は企業の経営者だ聞いているのは嘘だったのかね?」
魯が言うと
「日本企業の経営者ですが30年ほど前に李先生から1年ほど闘真拳を教わっています。」
健春は言った。
「そういうことか?」
魯は悔しそうに言った。
「ミスター高村を救うためならば本当に国家権力で青い龍を潰しますよ。」
健春が言うと
「それは本気で言っているのか?」
魯は言った。
「今回は我々も本気です。」
大輪が言うと
「お互い無益な殺生は避た方が得策ですよ。」
少しの沈黙が流れてから健春は言った。
「解かりました。」
魯は重い口を開いて言った。
「青い龍のボスは頭が良くて助かります。」
大輪は言った。大輪と健春の周りに立っている8人の門下生はそれでも緊張を解かなかった。
「その日本人とは近いうちに再会が出来るような気がするよ。」
魯は言った。背を向けて歩き出す魯を確認すると暗がりの中で見えなかった30人の青い龍のメンバーも歩き出してこの場を立ち去ろうとしていた。
「何かあったのかね?」
雨のあとに虹・Part2 その78
「さすが元警視庁SITの隊員ですね。」
明かりの中からひとりの男が出て来ると日本語で言った。久美子は少し身体に震えが来るのを感じでいたがすぐに俊之の手を握り締めたのであった。
「大丈夫よ。」
陽子は直子が震えているのに気づいて言った。
「私たちが何とかします。」
泰子が言うと
「あなたは青い龍のボスですね。」
翔太は男に言った。
「私は青い龍の魯文仁です。」
魯は言った。
「僕たちの行動はあなたたちにばれていたみたいですね。」
翔太が言うと
「少しの間だけあなたたちを手厚くおもてなしをしようと思いましてね。」
魯は丁寧であるが力強い口調で言った。
「僕たちを人質にして日本政府から身代金を取るつもりですね?」
翔太が言うと
「それだけはないですよ。」
魯は言った。
「中国政府にも打撃を与えようと考えていますね?」
俊之が言うと
「さすが日本を代表する総武グループのトップは理解が早いですね。」
魯は俊之を見て言った。
「これは中国の五輪開催に異議を唱えての行動ですか?」
俊之が言うと
「その先は知らない方があなたたちのためになりますよ。」
魯は言った。
「人質に8人も要らないでしょう?」
俊之が言うと
「私にどうしろとおっしゃるのですか?」
魯は俊之を見たままで言った。
「僕ひとりが人質になれば済むことですよ。」
俊之が言うと
「何を言うのですか?」
陽子は言った。
「そんな事が出来るわけないでしょう。」
久美子が言うと
「私たちも一緒ですよ。」
直子は言った。
「私も軽率な行動をとった責任があります。」
立花が言うと
「今回は私たちの負けね。」
泰子は言った。
「悔しいですよ。」
関口が言うと
「日本人は信頼関係が強いようですね?」
魯は言った。
「僕は企業のトップとして仲間や部下を守る義務があるからね。」
俊之が言うと
「そのために生命を差し出す覚悟があなたにあると言う事ですか?」
魯は俊之から視線を逸らさずに言った。
「それが出来なければ企業のトップは辞めるべきです。」
俊之が言うと
「某国の政治家に聞かせたい話ですね。」
魯は言った。
「今なら僕ひとりの生命でもそれなりの価値はあるはずです。」
俊之が言うと
「残念ですがみなさんは3日間だけ拘束させていただきますよ。」
魯は言った。俊之たちを照らしていた照明が消えて小さな街灯がひとつだけが照らし出されて周囲は闇に包まれていた。
「そこで終わりにしてくれないか?」
大輪が闇の中から現れて言うと10人の男たちが俊之や魯を囲んでいた。
「今だ!」
翔太が言うと隙を見て魯に飛び掛って行き魯を後ろから押さえ込んでいた。
「しまった。」
魯は悔しそうに言った。
雨のあとに虹・Part2 その77
「どうしたの?」
ゆき乃は育子の顔を見て言った。
「先ほどから胸騒ぎがしてしようがないのよ。」
育子は練習の疲れも見せずに言った。
「明日の試合で緊張しているからよ。」
ゆき乃が言うと
「そうではないと思うよ。」
育子は言った。
「今夜は早めに休まないとダメよ。」
ゆき乃が言うと
「早く寝たいけれど眠れるかな?」
育子は言った。
「その前に何かを食べようよ。」
ゆき乃が言うと
「しっかり食べないとスタミナがなくなるね。」
育子は言った。
「食堂に行こうよ。」
ゆき乃が言うと
「気分転移しないとダメだよね?」
育子は言った。ふたりは楽しそうに食堂へと歩いて言ったのである。
「そろそろ出ましょうか?」
関口が言うと
「早くしないとタイミングを逃しますよ」
泰子は言った。
「順番に落着いて逃げてください。」
翔太が言うと泰子を先頭に陽子が続いて直子に久美子の順番で出口に向かっていた。そのあとに俊之が続いて立花に関口が続いて最後は翔太であった。
「簡単に抜け出せるのね?」
陽子が言うと
「今まで時間をかけて敵に信用をさせていますからね。」
泰子は言った。
「慎重に頼むよ。」
翔太は泰子に言った。
「こちらです。」
泰子が言うと俊之たちは順番に手際よく脱出していた。暗がりを歩く時には俊之たちひとりひとりが持つペンライトの明かりだけが夜の闇を照らしていたのである。
「大丈夫ですか?」
久美子は直子に言った。
「私は大丈夫だから久美ちゃんも気をつけてね。」
直子は言った。
「僕が軽率でしたね。」
立花が言うと
「今は逃げ出す事を考えるのが先決だよ。」
俊之は優しく言った。
「足が少し痛くなってきたみたいです。」
直子が言うと
「もう少しだからね。」
俊之は優しく言った。
「この先に自動車を用意してあります。」
関口が言うと
「自動車まであと少しですよ。」
泰子は言った。
「足元に段差があるから気をつけてください。」
関口が陽子に言うと
「ありがとう。」
陽子は言った。
「この道は歩き憎いですね。」
直子が言うと
「ゆっくり歩きましょうよ。」
久美子は直子を気遣って言った。
「僕が自動車まで走ってここまで運転士して来るよ。」
俊之が言うと
「僕が行きますよ。」
翔太は言った。
「お願いできるかい?」
俊之が言うと
「任せてください。」
翔太は言った。自動車に向かって翔太が走ろうとした時に大きな照明が俊之たち8人を照らして一面は眩しいくらいに明るくなった。
「眩しい。」
立花が言うと
「青い龍に知られていたのか?」
翔太は言った。
「みんなは大丈夫かい?」
俊之はこの場にいる全員を気遣って言った。
「私は大丈夫です。」
久美子が言うと
「私も大丈夫です。」
陽子は言った。
「私も大した事はありません。」
直子が言うと
「僕も平気ですよ。」
立花は言った。
「全員無事のようです。」
泰子が言うと
「あいつらにばれてしまいましたね。」
関口は言った。
「このままギブアップは出来ないよ。」
翔太は照明を睨みつけて言った。