雨のあとに虹・Part2 その14
「お母さん。」
久美子は電話で母親の堀川知子に言った。
「久美子は自分の部屋からなの?」
知子が言うと
「大学から帰って一休みしたところよ。」
久美子が言うと
「大学もそろそろ夏休みになるね。」
知子が久美子の元気な声を聞いてホッとしたように言った。
「夏休み中に1度は帰るからね。」
久美子が言うと
「1度と言わず好きなだけ帰って来なさい。」
知子は言った。
「それでね。」
久美子は考えながら言うと
「何かあったの?」
知子が心配して言った。
「会わせたい人がいるけど会ってくれる?」
久美子が言うと
「どんな人か楽しみだわ。」
知子は言った。
「お母さん!」
久美子の妹である堀川詩織が知子に言ったが電話中である事に気づいて言葉をすぐに止めたのであった。
「会ってくれるのね?」
久美子が言うと
「久美子が選んだ人だからどんな人か会ってみたいわよ。」
知子が言うのを詩織が聞いていた。
「お姉ちゃんが彼氏を連れてくるの?」
詩織は大きな声で言った。
「久美ちゃんかい?」
俊之は携帯を耳に当てて言った。
「今話をして大丈夫ですか?」
久美子が言うと
「今はゆっくりしていたところだから大丈夫だよ。」
俊之は笑顔になって言った。
「俊さんは夏休みの予定を立てていますか?」
久美子が言うと
「今の時点で特にないよ。」
俊之は言った。
「まだ何も決まっていないのですか?」
久美子が言うと
「立場さんたちは僕が休まないと休みにくいみたいでね。」
俊之は言った。
「それなら時間は取れますよね?」
久美子が嬉しそうに大きな声で言った。
「大丈夫だよ。」
俊之が言うと
「それはよかった。」
久美子は安心して言った。
「久美ちゃんは何処か行きたい所はあるかい?」
俊之が言うと
「行きたい所はたくさんありますよ。」
久美子は言った。
「何処でも久美ちゃんの好きな所へ行こうと思っているよ。」
俊之が言うと
「私の実家で母に会ってのですが会ってくれますか?」
久美子ははっきりとした口調で言った。
「警察の方がお見えになりました。」
陽子が言うと
「応接しにお通してください。」
俊之は言った。
「はい。」
陽子は言ってすぐに社長室を出て行った。
「すぐに高村が参りますのでこちらで少々お待ちください。」
陽子が言うと桜田と菊池は軽く会釈をしたのであった。俊之はネクタイを調えて大きく深呼吸をすると応接室の方へ歩いて行った。静かにドアをノックすると
「はい。」
桜田が言った。
「失礼します。」
俊之は言って静かにドアを開けたのであった。
雨のあとに虹・Part2 その13
「もうそろそろ新幹線の時間だよ。」
敏弘が言うと
「うん。」
深澤久美子は言うと寂しさが込み上げてきたのであった。次に敏弘と会えるのは2週間先になるのだ。
「ふたりがいる場所は東京と大阪でもメールで映像も送れるから俺が毎日映像を送るよ。」
敏弘が言うと深澤久美子は敏弘の目を見て笑顔になった。視線を合わせたふたりが夏の日差しを受けていた。
「あと2週間先ね。」
深澤久美子が言うと
「次は大阪で会おう。」
敏弘は言った。深澤久美子は列車に乗りって敏弘を見ると
「2週間は先なんて寂しいから早く会いたい。」
深澤久美子が言うとすぐにドアが閉まっていた。敏弘は黙って列車が加速していくのを見送っていた。深澤久美子はホームが見えなくなってから自分の席に座って窓外を見た。東京の景色が後ろへ後ろへ飛んで行き少しずつ大阪に向かって新幹線は走っていた。平日の夕方でも乗客はほぼ満席状態であっただ。窓外を見ていた深澤久美子は去り行く東京の景色を見ているうちに瞳から涙があふれてくるのを感じていた。最初は涙の量は多くなかったが東京という街が深澤久美子にとって優しい街であればあるほど目に映る景色が涙で見えなくなっていたのである。
「警察から捜査の協力を要請してきていますがどうしますか?」
陽子は言った。
「捜査なら構わないからここに通してください。」
俊之が言うと
「それが今ではなくて明日だそうです。」
陽子は言った。
「そんなにゆっくりで良いのの?」
俊之が言うと
「意外とゆっくりしていますね。」
陽子も拍子抜けしたような表情で言った。
「明日の予定に入れておいてください。」
俊之が何かを見通すような目で言った。
「ちょっと聞いて良いかな?」
若い男が言うと校門の前で言うと久美子はその若い男を見た。声をかけた男はサッカー選手の三田人志であった。
「はい。」
久美子は言った。
「時間があるのならこれから食事でもどうだい?」
三田は馴れ馴れしく言った。
「私は急ぎますので失礼します。」
久美子が言うと
「そんな事を言わないで俺と付き合えよ。」
三田は言った。
「私も都合がありますから無理です。」
久美子が言うと
「お前だって俺のファンだろう?」
三田は言った。
「違います。」
久美子が言うと
「俺のファンでないとは君もバカだね。」
三田は横柄な口調で言った。
「ここで降りるよ。」
俊之が言うと田中が運転する社用車は道路わきに静かに止まった。
「ここで降りますか?」
田中が言うと
「ここでいいよ。」
俊之は言った。
「お疲れ様でした。」
田中が言うと
「お疲れ様。」
俊之は言うと社用車を降りた。
田中が運転する社用車は静かにスピードを上げて走り去って行った。俊之は歩き始めたが周囲を見回していた。静かで誰もいないはずであるが
「翔ちゃん!」
俊之が言うと翔太が物陰から姿を現したのであった。
「高村さんの耳に入れておきたい事がありましてね。」
翔太はいつもの口調で言った。
「僕の耳に入れたい事とはなんだろう?」
俊之が言うと
「警視庁捜査一課に桜田陽一郎という警部がいます。」
翔太は言った。
「桜田陽一郎警部。」
俊之は言うと
「高村さんと同じ首都圏大学法学部出身のキャリアです。」
翔太が言った。翔太はキャリアではないので桜田のようなタイプは別世界の人間に思っていたのである。
「その桜田警部がどうかしたの?」
俊之が言うと
「高村さんの周辺を捜査しているみたいです。」
翔太は言った。
「捜査と言っても僕は疑われるような事は何もしていないよ。」
俊之が言うと
「桜田警部は闘真拳に興味があるみたいですよ。」
翔太は言った。
「つぼを刺激して痛みを感じる神経を一時的に敏感にした事だね。」
俊之が言うと
「間違いないでしょう?」
翔太は頷いて言った。
「僕は傷害罪になるのかな?」
俊之が言うと
「そんな事はありません。」
翔太は言った。
「素人に技をかけるのはいけない事だと思うけれどね。」
俊之が言うと
「今の日本の法律では気孔や風水をはじめ超能力などでは裁く法律がない状態です。」
翔太は言った。
「僕の拳が相手の身体に当たっていれば重罪だよね?」
俊之が言うと
「それを言ったら僕や関口は即刑務所良きですよ。」
翔太は笑いながら言った。
雨のあとに虹・Part2 その12
「これで薬師寺さんが一息つけるね。」
社長室で俊之は恵子を労って言った。恵子だけでなく陽子も立花も三友商事との提携で総武グループが本格的にアフリカ進出へのための一歩を踏み出した事を理解していた。
「総武のアフリカ展開に三友商事の力が必要な事を悟られないように強気出たのが良かったのでしょうね?」
恵子が俊之に言った。
「この提携は大成功だよ。」
俊之が言うと
「三友商事にマイナス材料になる事件がありましたから総武にとって有利でしたね。」
立花は言った。
「あの事件があった事で一時的には三友商事にダメージを与えたが長い眼で見たら不安材料を一掃できたからそれで良かったと思うよ。」
俊之が言うのを陽子も立花も恵子も聞いていた。
「警部!」
菊池が桜田の横で資料を見ながら言った。桜田も人間であるから集中力には限界があり席に座って一休みしようと思っていたのであった。
「何かありましたか?」
桜田は珈琲を口に運びながら菊池を見て言った。
「その闘真拳の事をもっと詳しく聞かせてくれませんか?」
菊池が言うと
「これは捜査からはずれる事ですよ。」
桜田が菊池を見て言った。
「「それでも教えてください。」
菊池が言うと
「これは事件が起きたわけではないですよ。」
桜田が言うと
「解っています。」
菊池は言った。
「私は気になる事は納得がいくまで調べる癖があるから気にしないでください。」
桜田は無表情で言った。
「詳しい事を私にも聞かせてくれませんか?」
菊池が言うと
「もう少し時間をくれませんか?」
桜田は言った。
「いいですよ。」
菊池はがっかりして言った。
「今日は忙しそうだな。」
増田康文がいつもの口調で言った。
「今日は三友商事のとの提携が締結されたからね。」
俊之は言った。増田が総武の社長室に俊之を訪ねてくるのは久しぶりであった。
「首都圏大学との交渉はどうだ?」
増田が言うと
「これも近いうちに話がまとまりそうだよ。」
俊之は言った。
「あとはうちの三友電機との提携だな。」
増田が言うと
「君のところとは話が明確だから簡単に締結できそうだよ。
俊之は言った。
「失礼します。」
陽子は言うと会釈をして入って来た。陽子は増田の目を見て頭を下げると珈琲を俊之と増田のところに置いた。
「ありがとう。」
増田はと言った。陽子が姿勢を正して歩くのを増田は目で追っていた。
「せっかくだから珈琲を飲もう。」
俊之が言うと
「お前がうらやましいな。」
増田は明るい表情で言った。
「久美子も三田選手の姿を見てから帰るでしょ?」
純子が言うと
「見てから帰りたいけど今日は時間がないからね。」
久美子は言った。
「それは残念ね。」
純子は言ったが久美子が忙しいのは知っていた。
「俊さんに実家を案内するからその日程も早く決めたいしね。」
久美子が言うと
「いよいよ高村さんを紹介するもうその段階まできたのね。」
純子が言うと
「そういうわけではないけれどいいチャンスだからね。」
久美子は嬉しさを隠せないで言った。
「あれから4ヶ月経つとは早いね。」
純子が言うと
「あまりから飼わないでね。」
久美子は言った。
「私は調べたい事があるから図書館に寄ってから帰るね。」
純子が言うと
「それなら私はこれで帰るね。」
久美子は言った。立ち話が終わると純子は背を向けて図書館の方へ歩いて行った。純子の後姿を見送ってから久美子は校門のへと歩き出していた。