• 23 イルカのルカへ

    「やっやべぇ。早く帰らないと、とうちゃんになぐられる」

    「えっ?」

    「おれんちのとうちゃん すぐなぐるんだ。

    今日はお手伝いする約束なんだよ。じゃぁな」

    そう言うとねこのドラは、遊びをやめて走って家へ帰りました。

    「とうちゃん。ただいまぁ」

    ドラのパパは、背中をより丸くして浮きをけずっていました。

    「おう。おかえり。ドラ、おめえは虫さんのにせもの作りな。かあちゃんが、てぐすを持って帰るから、そしたら、さおにそれをつけな」

    パパは漁師さんであり、魚屋さんでもあります。

    魚をつかまえるために使う道具は、家族みんなで作ります。

    「とうちゃん。ドラ、今帰ったよ」

    ママが、細いとうめいな糸を持って帰って来ました。

    「かあちゃん、おかえり。ねぇ、とうちゃん。なんで魚さんをつかまえるのに、にせものの虫さんをつけるの?」

    「ばかたれ。つりをするたびに虫さんにお亡くなりなっていただいちゃぁ、もうしわけないだろ。おいらたちが生きる為に魚さんに成仏してもらってる。そのうえ虫さんまでなんて…ばかたれ!」

    くすっ。ばかたれは、ドラパパの口ぐせのようですね。

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  • 23 イルカのルカ最初へ

    「さっきは、寂しそうだったけど何かあったの?」

    ルカが、シュンに聞きました。

    「あのね。今日、大好きなハルナとけんかをしたんだ」

    シュンは、けんかの事を話しました。

    ルカは、水ぎわぎりぎりまで出て来て、ぷっと水をシュンのほほにかけました。

    「心が泣いてるね」

    ルカはつぶやきました。ルカがかけた水の粒はまるで涙のようにシュンのほほをつたいました。それを見てルカが、

    「あぁ、シュンそろそろ月が顔を出すよ。沖を見てごらん。いいものを君にあげよう」

    と、言いました。

    ルカに言われて、シュンは大きな月が少しずつのぼって行く水平線の方を見つめました。

    するとどうでしょう。月からの光で水面がきらきらと光かがやき出しました。

    「シュン。見えるかい?神様が全てのものにプレゼントしてくれる美しい金貨だよ。ほら、空からきらきら 降ってるだろう?君の心に貯めて持って帰って、君の大好きなもの達にもプレゼントしてあげるといいよ」

    シュンは、金貨がとてもきれいで、どきどきしてうれしくなりました。

    そして、ハルナとママにも見せたいと思いました。

    「シュン この金貨は 大事なものを教えてくれるんだよ」

    「え?ルカそれは何?」

    シュンは、不思議に思ってルカに聞きました。

    「シュン。今君の心に浮かんだものだよ」

    ルカにそう言われてシュンは、はっとしました。

    「ルカ!!ありがとう、また来るよ。大事なものを連れて」

    そう言うとシュンは、手をふりながら走って家に帰って行きました。

    ルカは、またまた 水をぷっと吐き出して、金貨の降る方へ泳いで行きました。

    「ママ!遅くなって ごめんなさい」

    シュンは、今日の出来事をいっしょうけんめいママに話ました。

    ママはそっとシュンを抱きしめました。

    「ママ、帰りがおそくなってごめんなさい。明日ハルナにもごめんなさいを言うよ。そして、みんなで、金貨を見に行こう!」

    ママはシュンの耳を そっとなでながら

    「でも、もうママは美しい金貨を見せてもらったわ」

     「え?」

    ― あなたのひとみに ― 

    ママは心の中でつぶやきました

  • 22 あまつぶへ

    「なんだよ、ハルナなんて…」

     おやおや、シュンはハルナとけんかをしたようです。シュンは、悲しくて、悲しくてとぼとぼと歩いていました。気がつくと、海まで来てしまっていました。

    白い砂浜はもう、夕焼けに染まり始めています。 シュンは寂しそうに砂をにぎっては、風に流していました。すると、ぱちゃぱちゃという、波を打つ音がしました。

    「おや?」

    見ると、一匹のイルカが、浅い所まで来ていました。

    「こんにちは」

    シュンがあいさつをすると、

    「あらら、もうそろそろ こんばんはだよ。お家に帰らないと」

    イルカは、心配そうな顔をしています。

    「あぁ、ありがとう。そうだね。でも何だか体が重いんだ。なぜだろう」

    「それはきっと、心が重いからだね。何か悲しい事でもあったの?」

    シュンがだまっていると、イルカは、ぷっと水を口からシュンに向って吹き出しました。

    それを見て、シュンは笑い出しました。

    「あはは、面白いね。ぼくはシュン、君は?」

    イルカは、もう一度水を ぷっと 吹き出して

    「僕はルカ、よろしくね」

    二人は、すぐに仲良くなりました。  つづく

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  • 22 あまつぶの最初へ

    「でもね。僕はいつも同じコースなんだ。みんなに、いろいろな話をできなくてね」

    あまつぶは残念そうに言いました。

    「ふうん」

    「だって 皆すごいもの!いろいろな所へ行っていて」

    「そっか、じまんしたいんだ」

    シュンがそう言うと

    「えっ!そういうわけじゃ…」

    つゆはそう言ってだまってしまいました。

    「ならさ。みんなのお話きくのでいいじゃない。いろいろな所へ行くだけ、こわい事もあるかもしれないし良い事ばかりじゃないかもよ。それに、あなたもこれから行ける チャンスがあるじゃない」



    ― お話を聞くことも素敵な事ではないでしょうか―



    「そんでさ、たくさんお話を頭に入れておけば 何かの役に立つよ きっと」

    シュンが、ほほ笑みながらそう言うと

    「君は すごいね」

    とつゆは言って葉の上で、ぷるんとなった後 土へこぼれ落ちました。

    「今度は ぼくのかたに落ちてきなよ。みんなに しょうかいするよ」

    シュンは、つぶやきました。  おしまい

  • 23 イルカのルカへ
  • 21 かたつむりへ

    「やぁ、何か面白いことでもあるのかい?」

    あじさいの花をシュンが見ていると、葉上の一粒のつゆが話しかけてきました。

    「かたつむりさんを探しているんだ」

    シュンが答えると

    「ぼくらの話を 聞きたくないかい?」

    つゆが言いました。すると、

    「うん、きく きく」

    と、シュンが自分の長い耳をつゆの方に向けました。

     つゆたちが雲の中にいる時の一番の話題が落ちる場所です。

    雨のつぶとなって、川や海へおちたなら、

    世界中をずっと かけめぐる事ができるかもしれません。

    もしかすると、魚や動物や人の口に入ってしまうかもしれません。

    しかし、スポンジのように しみこみやすい物の上ならすぐに形が見えなくなります。

    土の中にしみ込んだなら、木やお花の中に入るかもしれません。

    そして、しみこめない物の上に落ちたなら、こんな風につゆとなって、空をながめる事ができるかもしれません。

    でも、どこへ落ちても最後にはまた、雲に帰ってまた落ちるのくり返しです。    つづく

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  • 21 かたつむりの最初へ

    城の庭には、お姫様の大好きな紫陽花が、咲き乱れていました。

    「姫。あなたの為に、姫の大好きなピンク色の紫陽花をたくさん用意しました」

    王子様がにこにこ笑って言いました。

    すると、突然お花の色が紫になりました。

     王子様は、あわてて

    「ひひめ。紫も夜明けの空のようで美しいでしょう」

    と言いました。

    すると 、今度は突然青になりました。

    「ひひひめ… 青も まるで海の…海の…」

    王子様は変わる花の色で、ふと海の事と人魚姫を思い出しました。

    黙ってうつむいている王子様にお姫様は

    「王子様?どうされました?青は寂しい感じだからピンクにならなければ、明日みんな切ってしまいましょう」

    と、言いました。

    それを聞いた巻貝はあわてて色をピンクに戻すように、魔法使いに頼みました。

    「全部切られては、花がかわいそうです」

    魔法使いは

    「お前のいかりは どうする?」

    と、巻貝にたずねました。

    ― 仕返しは 悲しいだけですね ―

     紫陽花の為に巻貝は、いかりを忘れる事にしました。

    でも人魚姫を思うと、いかりが時々出てきてします。

     陸で暮らすようになった巻貝は、そのせいで角がはえて、それを時々出してしまいます。

     次の朝シュンは、かたつむりの角を やさしく触ると、かたつむりは角を引っ込めました。

    「おこらない、おこらない」

    シュンは、かたつむりにほほえみました。 おしまい


  • 22 あまつぶへ
  •  雨上がりの庭で、シュンが遊んでいました。

    シュンは、紫陽花の葉にかたつむりを見つけました。

    「からの中に入って眠るのかなあ。便利だね」

    シュンが、かたつむりをちょんとつつくとからの中にかたつむりは隠れます。

     その夜、シュンは夢を見ました。

    人魚姫が泡になりながら、魔法使いに言います。

    「私の代わりに、王子様の幸せを見守る誰かを、つかわせてください」

    魔法使いは人魚姫を哀れに思って、小さな巻貝の一つを陸へ投げました。

     巻貝は、王子様のお城へやって来ました。

    王子様は、お姫様と幸せそうでした。

    巻貝はあまりに人魚姫がかわいそうで、王子様をこらしめたくなりました。

    でも、小さな巻貝には、何もできません。

    そこで 魔法使いに相談しました。

    「でもね。人魚姫がした約束だよ。しかし、お前の気持ちを思って、一つ意地悪を王子にしてやろう」  つづく

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  • 20 ゆめの最初へ

    「あっ!そうだ」

    シュンはそう言って、植物図かんを持ってき

    ました。そして、

    「ぼく、たくさん勉強して、野菜から肉を作るよ。そうすれば、らいおんさんは、きりんさんを食べなくてすむからね」

    シュンの目が、かがやいています。


    ママはシュンをだきしめながら

    「ママ、おうえんするわ」

    と、つぶやきました。


    ― すてきなゆめ ありますか? ―


     桜の木の上の大きな星のそばに、小さな星が一つふえたようです。

    シュンは、ほっぺの横で、その星に手をふりました。

                  おしまい

  • 16 ハルおばあちゃんへ
  • 19 やさしいうそへ

    しく しく しく

    かえるのママが泣いています。

    「どうしたの?」

    シュンが、たずねました。

    「かわいい私の赤ちゃんが、へびさんに食べられたの」

    「ええっ!」

     その夜、シュンは窓辺で空を見ながら

    「ママ、お星様が、また ふえたよ」

    と、かえるのママの話しをしました。

    するとママは、ジャングルの話をしてくれました。


     きりんの赤ちゃんが、らいおんに食べられてしまった話でした。

    「悲しいけど、生きていく為なのよ」

     ママは遠くを見ながら話しました。 つづく

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  • 19 やさしいうその最初へ

    そして、月日が流れその女の子が大人になって、くつ屋のおじさんの所へやって来たそうです。

    「これね、あの赤いくつが、持って行きなさいって言ったの」

    そう言って手作りのドーナツを差し出しました。だいぶしらがのまじった頭をかきながら、おじさんは、

    「そっか、あいつは、幸せなんだね」

    と、つぶやきました。

    「はい、今は私の子供の足で元気にしています」

    そういって、おかあさんになった女の子は、手を引いている娘の足を見ました。そこには、あの赤い靴がお日様に輝いてほほえんでいたそうです。

    ― 嘘はいけないけれど、やさしい嘘なら みんなが幸せになれるようについて下さい―

    「そっかぁ。くつがしゃべるわけないもんね」

    ハルナが、ほほえみました。

    「うん。でも こんな嘘ならゆるせるじゃん。

    ハナコにも、もっとすてきなかみどめが、いつか来るかもね」

    シュンがいうと、

    「大人になったら、かえってくるかもね」

    と、ハナコもほほえみました。 おしまい

  • 20 ゆめへ