「やっやべぇ。早く帰らないと、とうちゃんになぐられる」
「えっ?」
「おれんちのとうちゃん すぐなぐるんだ。
今日はお手伝いする約束なんだよ。じゃぁな」
そう言うとねこのドラは、遊びをやめて走って家へ帰りました。
「とうちゃん。ただいまぁ」
ドラのパパは、背中をより丸くして浮きをけずっていました。
「おう。おかえり。ドラ、おめえは虫さんのにせもの作りな。かあちゃんが、てぐすを持って帰るから、そしたら、さおにそれをつけな」
パパは漁師さんであり、魚屋さんでもあります。
魚をつかまえるために使う道具は、家族みんなで作ります。
「とうちゃん。ドラ、今帰ったよ」
ママが、細いとうめいな糸を持って帰って来ました。
「かあちゃん、おかえり。ねぇ、とうちゃん。なんで魚さんをつかまえるのに、にせものの虫さんをつけるの?」
「ばかたれ。つりをするたびに虫さんにお亡くなりなっていただいちゃぁ、もうしわけないだろ。おいらたちが生きる為に魚さんに成仏してもらってる。そのうえ虫さんまでなんて…ばかたれ!」
くすっ。ばかたれは、ドラパパの口ぐせのようですね。