• 魔法使いの最初へ

    「やっぱりおばあちゃんは、すごい魔法使いだったね」

    良太が、美代ちゃんに耳のそばでこっそり言うと

    「うん!」

    美代ちゃんは元気に返事をして、はっと何かに気がづいたように口に手を当てました。美代ちゃんは、美代ちゃんのお願いを神様が聞いてくれて、おばあちゃんを天国からつかわしてくれたのかもしれないと思ったのでした。美代ちゃんは空を見上げて天国を想像しました。ぽっかり浮かぶ白い雲のずっと上に、大きな大きなお城があります。お城のまわりにはたくさんのりんごやももやみかんがなっている木があります。そして、美しいお花畑もあります。そのお城の大きな金ぴかのいすに神様が座っていて、子供達のお願いを毎日聞いています。そして、とてもかわいそうな子供のお願いを聞くと、魔法使いのおばあちゃんを神様は呼びます。そして、

    「あの子を助けてあげなさい」

    と、言います。すると、おばあちゃんは魔法のほうきに乗って地上に降りてきて、かわいそうな子を助けるのです。

    美代ちゃんは、

    「神様が私のお願いをきいてくれて、つよし君を良い子にしてくれたのかもしれない」

    良太にそう言いました。

    「そうかもしれないね」

    良太も目をかがやかせてうなずきました。

      良太と美代ちゃんは、町中のおじいちゃんやおばあちゃんの中には魔法使いがいっぱいいるかもしれないと思いました。そして、それからはどんなおじいちゃん、おばあちゃんにもあいさつをするようになりました。

    「みんなもおじいちゃんおばあちゃんにあいさつしようね。魔法使いかもしれないから」

    良太と美代ちゃんは、公園のお友達みんなに言いました。

      ある日、おばあちゃんがいつも座っていたベンチに見知らぬおじいちゃんが座っていました。良太と美代ちゃんはかけよって聞いてみました。

    「おじいちゃんは、魔法使い?」

    すると、おじいちゃんはにっこりとほほ笑んで

    「ああ、良太君と美代ちゃんだね。おばあちゃんからだよ」

    そう言うと、おじいちゃんはあの金太郎あめを二人の手に乗せてくれました。

    「あっ。おじいちゃん魔法使いのおばあちゃんを知っているの?」

    「はい。ばあさんに頼まれてね」

    「えっ。おばあちゃんは?」

    良太と美代ちゃんは一声に聞きました。

    「先に天国へかえったよ。ありがとうって言っていたよ」

    良太と美代ちゃんは、やっぱりおばあちゃんは本当の魔法使いだったのだと思いました。

    「おばあちゃん。ありがとう」

    二人は空を見上げて言いました。

    すると、ちらばっていた白い雲が集まっておばあちゃんの顔のようになって、やさしくわらってくれた気がしました。  おしまい

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  • 「おばあちゃんがいないなぁ」

    「そうだね。どうしたの?何か用事?」

    良太が聞くと、

    「そろそろ、弟をいっぱい泣かしたからほうきをふってもらおうと思ってね」

    つよし君が、言いました。

    「何回 泣かしたの?」

    「え、そんなの覚えてないよ」

    つよし君は、いばって答えました。

    「だって、覚えておかないと自分で直せないじゃない。1回悪い事をしたら、2回良い事をしないといけないんだよ」

    「ばかだなぁ。良い事をしなくてもいいんだよ。そのためにおばあちゃんがいるんじゃん」

    つよし君は、ふんっと顔を良太からそむけて、向うへ行ってしまいました。

     でも、次の日も次の日もおばあちゃんは公園へ来ません。不安になったつよし君は、ママに聞いてみました。

    「さいきん、あのおばあちゃん見ないね」

    「どのおばあちゃん?」

    つよし君はママに聞かれて、いつもおばあちゃんが座っているベンチを見ました。すると、

    「ああ、いつも公園を掃除している汚いおばあちゃんね。風邪でもひいたんじゃない?」

    と、ママはきょうみがないように言いました。

    おばあちゃんが来なくなって、公園のごみが目立つようにもなりました。つよし君は、公園が汚れていくのと一緒に自分の羽もどんどんぼろぼろになっていくような気がします。つよし君はとてもとても不安になってしまいました。

    「どうしよう」

     それから毎ばん、つよし君は地ごくのこわい鬼に、いじめられる夢をみます。つよし君が弟をいじめたのと同じように、いじめられるのです。つよし君は、がまんできなくなって、おばあちゃんがどうしたのか、良太のママに聞いてみました。つよし君は自分のママにもう一度聞くと、どうしてそんなことを聞くのか答えないといけなくなると思ったからです。

    「良太のおばちゃん。掃除のおばあちゃんはどうしたのかなぁ」

    「あら、何か用事?」

    「ううん。いつもいないなぁって思って」

    「どうされたのかしらね。お年だしね」

    「お年?」

    「うん。もう天国へ行かれたかもね」

    「えっ!そんなの困るよ」

    とうとうつよし君は、泣き出してしまいました。

    「どうしたの?」

    つよし君のママが聞きました。

    「なんだか、掃除のおばあちゃんのことが心配みたいよ」

    良太のママが、そっとつよし君のママに言いました。

    「つよし、この前も聞いていたけど、なんでそんなにあのおばあちゃんが気になるの?」

    つよし君のママが、つよし君に何度も聞きます。けれども、つよし君はおばあちゃんとの事を言うと、叱られると思ってただ、泣くばかりです。

    つよし君は、心の中で

    「当分良い子でいなくちゃ」

    と、とても反省しました。

    それからというもの、つよし君はみんなをいじめなくなりました。 つづく


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  • 「あんた達!帰るわよ」

    つよし君のママの掛け声で、みんな自分のママの所へ走りました。

    「知らない汚ならしいおばあちゃんと話しちゃだめでしょ」

    つよし君のママは、おばあちゃんをにらみながら言いました。

    それを聞いて、

    「キキ、あれじゃぁみんなの羽が汚れるね」

    おばあちゃんは、悲しそうにつぶやきました。すると空も雨を落とし始めました。

     家に帰るとすぐにつよし君はママに聞きました。

    「ねぇ。僕に弟とか妹がくるの?」

    「あら、どこのおばちゃんに聞いたの?」

    「えっ。それじゃぁ。本当なの?」

    「ええ。もう少ししたら、言おうと思っていたんだけどね。来年の春前に生まれるのよ。貴方も大きい組になるんだから…」

    つよし君はママの最後の言葉も聞かずに、家を飛び出しました。そして、良太の家へやって来て、

    「たいへんだ、たいへんだ。りょりょうた。

    あのおばあちゃん本当の魔法使いだ!」

    と、叫びました。

     それからの数日は、みんなとても良い子でいました。良太は大きらいだったピーマンを食べるようになりました。美代ちゃんは、パジャマのお着替えが一人でできるようになりました。他のみんなもそれぞれに、良い子になるようにがんばりました。

     でも、根っからのあばれん坊のつよし君は、そのうちにがまんできなくなってしまい弟とまたけんかをしてしまいました。泣いている弟をほったらかしにしたまま、つよし君が遊びに行こうとすると、黒猫がつよし君の前を通り過ぎました。つよし君ははっとして、公園へ急ぎました。

    おばあちゃんは、魔法のほうきでごみをはいていました。

    「おばあちゃん。弟とけんかしちゃった」

    泣きそうなつよし君の顔を見ておばあちゃんは、笑いながらほうきをふってくれました。

    「さぁ、きれいになったよ。でも仲良くしないとだめだよ」

    「へへへ」

    つよし君は、てれくさそうに笑いました。

    しかし、つよし君は、その時悪い事をすればおばあちゃんの所へ来ればいいと思ってしまったのでした。

    それからつよし君は、何度も弟を泣かしたり、お友達に意地悪をしてしまいます。

    「そろそろ、おばあちゃんの所へ行くかな」

    つよし君が、公園に行くとその日はおばあちゃんがいませんでした

     つづく

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  •  それから、おばあちゃんは、みんなの背中に羽が見えるお話をしてくれました。

    すると、

    「それじゃ、なんでぼくたち飛べないのさ」

    つよし君が、また意地悪そうに言いました。

    「それは、みんな天国から地球に落ちたからだよ」

    「えー、ぼくたちママのお腹からでてきたんだよ」

    つよし君が、そんな事も知らないのと言いたげに、言い返しました。

    けれども、おばあちゃんはほほ笑んだまま

    「ママのお腹に入る前は天国に居たんだよ」

    と、言いました。

    「あぁ。そっか」

    なおき君が、また腕組みをして、うなずきました。

    「天国と地獄なんて本当にあるの?」

    つよし君が、むきになって言い返しました。

    するとおばあちゃんは、ほほ笑みながら

    「きっとあるよ。でも、万が一なくても、あった時困らないようにした方が良くないかい?」

    すると、みんな、うなずきました。

    「人に意地悪すると、どんどん羽は黒くなって、天国に帰る時が来ても飛べなくて天国へ帰れなくなるんだよ」

    「天国へ帰る時って?」

    今度は良太が聞きました。

    「そうだねぇ。死ぬ時だよ」

    「あぁ、ママが言ってた。悪い事をしたら、死ぬと天国じゃなくて地獄へ行くって」

    まりちゃんが、泣きそうな顔をして言いました。

    「そうだよ。けんかばかりしていると、背中の羽がやぶれてだめなんだよ」

    おばあちゃんが、怖そうに言うと、つよし君の顔がゆがみました。

    「どうしたらやぶれた羽は元に戻るの?」

    つよし君が、真剣に聞きました。つよし君はけんかばかりするので、自分の羽はきっとぼろぼろにやぶれていて、絶対に飛べないと思ったからです。すると、おばあちゃんはほほ笑んで

    「つよし君大丈夫だよ。けがをしても治るみたいに、良い子にしいてれば、羽の傷は治るからね。飛べるようになるよ。1回悪い事をしたら2回良い事をしなさいね」

    と、やさしく言いました。

    「そっか」

    つよし君は、少し安心しました。

    みんなは、それぞれ顔を曇らせて自分の背中を見ようとしています。

    すると、おばあちゃんは笑いながら

    「じゃぁ、みんなの羽を治してあげるから」

    そういって、ほうきをえいっと振りました。

    「ほら、もうみんなきれいだよ。もう汚さないでおくれね」

    「やったぁ」

    お天気とは反対に、なんだかみんなの心は 晴れ晴れとして、みんなばんざいをして喜びました。

    おばあちゃんは、満足そうにキキの頭をなでると、キキは大きなあくびをしました。   つづく

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  •  数日後のもわっとした生あたたかい風が吹く午後でした。

    「雨が降りそうね」

    ママ達が空を見上げてお天気を気にしています。

    「お洗濯物、入れてこようかしら」

    一人のママが言うと、ママ達はみんないっせいに家へ帰って行きました。

    「チャンス!」

    つよし君が、叫ぶとみんながおばあちゃんのそばへ駆け寄りました。

    「おばあちゃん、魔法使いなんだってね。嘘でしょ?」

    つよし君が、まっ先に聞きました。

    するとおばあちゃんは、ほほ笑みながら

    「いじめっこのつよし君だね」

    「えっ、僕の名前を知っているの?」

    「ああ。弟とよくけんかして、ママに叱られるだろ。お友達の事もよくいじめているね」

    「えっ。なんで知っているの?」

    つよし君は、おどろいて目を白黒させました。

    「あぁ、そこの赤いリボンの子が、まりちゃんだね」

    おばあちゃんは、得意げにピンク色のスカートをはいた女の子の方を見て言いました。

    「えっ」

    まりちゃんもとても、おどろきました。

    「まりちゃんは、キティーちゃんが大好きだね」

    まりちゃんは、スカートについているキティーちゃんのポッケに、手を入れて恥ずかしそうにうなずきました。

    そうやって、おばあちゃんは八人いるみんなの名前を全部言い当てました。

    「これは。魔法だ」

     なおき君が、腕組をしてうなずきながらつぶやきました。

     「おばあちゃんのねこの名前はキキだもんね」

    美代ちゃんが、胸をはって言いました。

     すると、つよし君はまた口をとがらせて

    「それじゃぁ、ほうきで飛んでみせてよ」

    と、言いました。

     おばあちゃんは、困った顔をしました。しかし、すぐに笑顔になって、

    「ごめんね。みんなの前ではそれはできないんだよ。ママ達に見られたら大騒ぎになって、おばあちゃんここに来ることができなくなるだろう」

    と、言いました。

    「なあんだ。やっぱり嘘じゃん」

    つよし君が、意地悪そうに言いました。すると、おばあちゃんの目がきらりと光りました。そして、

    「それじゃぁ。つよし君今日帰ったら、ママに聞いてごらん」

    おばあちゃんは、つよし君をそばに呼んで内緒話をするような小さな声でつよし君に言いました。

    「つよし君にもう一人弟か妹ができるよ」

    「えっ」

    つよし君はとてもおどろきました。  つづく


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  • 魔法使いの最初へ

     それからというもの時々、良太と美代ちゃんは、ママの目をぬすんではおばあちゃんのそばへ行きました。たくさんの魔法を、おばあちゃんにこっそり見せてもらう為にです。

    ある時、おばあちゃんが空を見ながら、

    「雲が東に流れているね。夕方には雨が降るよ」

    と言いました。すると本当に、だんだん曇ってきて夕方には雨が降り出しました。

    「今日は、夕焼けがきれいだね。明日はきっと晴れるよ」

    おばあちゃんがそう言うと、次の日は晴れになりました。良太と美代ちゃんは、おばあちゃんは本当に魔法使いで、空と話ができるのだと思いました。

    ある日美代ちゃんが、困った顔をしておばあちゃんに言いました。

    「おばあちゃん。いじめっ子をたいじして欲しいの」

    「いじめっこ?」

    おばあちゃんは、少し考えるとほほ笑みながら

    「ここにみんなを連れておいで、おばあちゃんは魔法使いだって言うと良いよ」

    と言いました。良太も美代ちゃんもこの公園で一緒に遊ぶつよし君という子によくいじめられます。特に美代ちゃんは、おさげの髪をひっぱられたりしてよく泣かされるのです。美代ちゃんは何度神様に『つよし君にいじめられませんように』と、お願いしたことでしょう。

     次の日、さっそく良太と美代ちゃんは、おばあちゃんの事をみんなに話しました。

    するとすぐに、

    「うっそだぁ」

    と、いじめっこのつよし君が口をとがらせて、言いました。

    「だって 本当だもん」

    良太と美代ちゃんは、声を合わせて言い返しました。

    「じゃぁ、今度おばあちゃんに魔法を使わせてみろよ」

    つよし君は、両腕を前で組んでいばって言いました。

    「いいよ!」                          つづく

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  •  良太達が住んでいる団地のそばに小さな公園がありました。そ

    の公園で毎日のように子供たちは遊び、ママ達はおしゃべりをします。そこにいつも全身黒尽くめのおばあちゃんが居ました。良太達はそのおばあちゃんのことを魔法使いのおばあちゃんだと噂をしていました。なぜなら、おばあちゃんのそばに黒猫とほうきがいつも置いてあったからです。しかも、ママ達は、おばあちゃんに近づいてはいけませんと言います。

     良太は、ママ達に見えないようにそっと、おばあちゃんが座っているベンチの後ろからおばあちゃんに話しかけました。

    「おばあちゃん、なにか魔法を使ってみて」

    ママ達の様子を見ながら良太は早口で言います。すると おばあちゃんは、

    「魔法?」

    と、言って少し考えていました。

    でも、美代ちゃんがそっと手を伸ばしてほうきにさわると、おばあちゃんは、はっとした顔をして、肩から斜めがけにしている黒いバックの中をごそごそと、かき回しました。そして、おばあちゃんが、バックから手を出してぱっと手を開くと、そこには白い棒がのっていました。

    「さぁ、見てごらん。金太郎さんの顔があるだろ?この棒はね、どこを切っても金太郎さんの顔が出るんだよ」

    そう言って、棒をぽきっと折ってくれました。すると、本当に同じ顔が出てきました。

    「すごいね」

    良太がおどろくとおばあちゃんは、得意げにまたぽきっと折ってくれました。

    すると、また同じ顔が出てきます。

    「わぁ。本当ね」

    美代ちゃんも手を叩いておどろきました。

    「さぁ、おあがり。これはあめだよ」

    良太と美代ちゃんは、顔を見合わせて少しもじもじしていましたが、一緒にそのあめを おばあちゃんの手から取ってお口に放り込みました。

    「甘い。すごいねぇ、おばあちゃん」

    それを聞いたおばあちゃんは、大きな声で笑い出しました。

                              つづく

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