ルイ14世の食事はどのようにして始まったのでしょう。
食事とはいってもヴェルサイユのことですから、さぞかし儀式的だったに違いありません。
ここでは
正餐を例にとってみてみたいと思います。
ヴェルサイユ宮殿での、国王と王族の食事
国王の正餐は、通常は
寝室でとります。
寝室という名前ではあっても、それは決してプライベートな空間ではなく、国王の寝室には真ん中のあたりに柵が設けられてあることからもわかるように、どう見ても多くの人々が訪れることを想定した造りになっています。
そこでまず、一人の衛兵が
「国王のお肉ですぞ」と叫ぶのを合図に、料理がやってきます。
そして国王の食卓の近くで、国王に良く見えるような場所にテーブルがもうけられます。
そこに
塩、薬味、パン、食器、ナイフ、フォーク、スプーン、ナプキン、つまようじなどが置かれて、怪しい物が混入されていないかどうかのチェックが行なわれます。
その検査のやり方は、
家令と
大膳職の二人がパン切れを指でつまみ、検査物件にパンをこすりつけたあとにそのパン切れを食べる、というもの。
ワインと水は
杯盤係が毒見をし、食べ物についても、
給仕役の貴族が同じやり方でチェックをしますが、これらはどうも厳密なものではなく、形式的なものだったようです。
最初は意味があってやっていたものが習慣化し、その結果、形だけが重視されるようになったのかもしれません。
宮殿内の長いルートを王のいる場所に向かって料理が行進をし、そしてこのような儀式の後、やっと料理はルイ14世の口元までやってくるのですが、そんな料理はさぞかし冷めていたことでしょう。
国王というのは何をするにしても、大仰で大変なものです。
参考:『18世紀パリの明暗』