狂気的なまでに美に執着していた皇妃エリザベートでしたが、そんなエリザベートのダイエット食以外の、日常食とはどのようなものだったのでしょう。
今日はおおまかに、その様子を再現してみたいと思います。

乗馬姿のエリザベート

まず朝食午前9時ころ。
主に食べられていたメニューは、「宮廷酪農所」から送られてくる新鮮なミルク、紅茶、バター、ハムなど。

午後5時ころに遅い昼食
ここでは加熱された少量の肉料理、野菜、それに加えてアイスクリームかシャーベットが食されていました。
肉料理は、あくまでダイエットにこだわるエリザベートのことですから、牛肉や豚肉は脂肪分が多いとして避け、代わりにカモ鹿などの野生肉が好まれていました。
そしてダイエットしているのにアイスクリーム!?と思うかもしれませんが、実はエリザベートは甘いものが大好きで、氷菓に関しては毎日食べない日はないくらいに食していたそうです。

ダイエットにこだわるエリザベートには、宮廷晩餐会は悩みの種でした。
とにかく太りたくなかった彼女は、宮廷晩餐会をそもそも欠席してしまうか出席しても他の人びととは別の特別メニューを食していたようです。
そしてその特別メニューが一体どんなかというと・・・

菓子パン1個
コップ1杯のワイン
子牛の生血


・・・など。

これで周りの顰蹙を買うようなことはなかったのでしょうか。
こちらが心配になってしまうほどです。
ちなみに家族での食事会に関しても、エリザベートは出席を拒んでいました。
それはなぜかというと、
「健康な世継ぎを産むことが皇妃の最大の責務である」
と考えている姑ゾフィーが、エリザベートの食に関して干渉してくることを嫌ったためだと言われています。

他にエリザベートがよく食していたものをあげると、ウィーンの専門店から取り寄せたデリカテッセンがあります。
利用していたお店のなかで特にお気に入りだったのは、1618年創業の「シュバルツェン・カメル」(黒いらくだという意味らしい)。
ここで彼女は、「ティー・エッグ」というものを注文した記録が残っています。
これは、半熟状にした卵の殻をむいて、紅茶、香辛料、しょうゆ、塩などで長時間加熱した卵のこと。
中国からつたえられた前菜料理らしい。
これにハチミツをかけてスウィーツとして食べるやり方もあるようです。

他にもエリザベートは甘いものを好んだため、その数々のレシピなども残っているのですが、とにかく全体を通じて言える宮廷でのエリザベートの食のポリシーは、低カロリー、低タンパク、低脂肪、といったような感じだといえそうです。

ところで一旦宮廷を出て、旅に出ているときのエリザベートは、開放感のせいか、かなり食欲が暴発していたようですが・・・。
エリザベート・アマーリエ・オイゲニー
(1837年12月24日 - 1898年9月10日)



オーストリア・ハンガリー帝国の皇帝(兼国王)フランツ・ヨーゼフ1世の皇后。ハンガリー語名はエルジェーベト(Erzsébet)。「シシィ」(Sissi, Sissy, Sisi)の愛称で知られる。
バイエルン公マクシミリアンの次女。
1854年、フランツ・ヨーゼフに見初められて結婚。1男3女をもうける。
60年頃から体調が悪くなり、転地療法の名のものとに、流浪の日々を送るようになる。
67年、ハンガリー王妃として戴冠。
89年に皇太子ルドルフを亡くして以来、生涯喪服で過ごした。
98年、スイスで無政府主義者の手によって暗殺される。


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エリザベートの日常食

皇妃エリザベートのダイエット法

「ヨーロッパ一の美姫」とうたわれたことで有名な皇妃エリザベートですが、その名声を維持するためにはかなり過激なダイエットが行なわれていたようです。
今日は、その主なダイエット方法3種をあげてみたいと思います。

エリザベートの写真 

約30歳頃と思われる。
確かに今見てもとても綺麗な人だ・・・



果汁療法

オレンジぶどうりんごなどのジュースを飲む方法。
皇妃は一日オレンジ3個分ですませることもあったよう。
かなり愛飲していたようで、その飲みっぷりといったら、皇帝が「ジュースの飲みすぎで胃酸過多になって胃酸過多が悪化するのではないか」と心配するほどだったとか。


乳清療法

乳清は「ホエー」と呼ばれ、チーズを作るときにその副産物としてできたりします。
これは牛乳からカゼインを除去した透明で黄緑色の液体で、牛乳に酸を加えてpH4.5くらいに保つとカゼインが固まるので、それをろ過することで得ることが出来ます。
カゼインには牛乳中のたんぱく質の80%が含まれているので、それを取り除いたものである乳清には当然たんぱく質はほとんど含まれていません。
けれども、カリウム、カルシウム、ビタミンなどが含まれているため、現在ではこれに果汁や炭酸、コーヒー、ココアを加えたものが市販されています。

そんな乳清ですが、この当時これは「生命の水」と称えられ、あらゆる病を治し、永遠の若さを保つ飲み物としてもてはやされていました。
1850年からは皇妃のための乳清作りが始まり、そのための職人が高給で雇われていたほど。

けれども現在となってみては、乳清の栄養分はそれほどのものではないということがわかっています。
乳清には整腸作用があるともいわれていますが、エリザベートは1850年ころから便秘薬をその後50年にわたって飲み続けていて、そのことから少なくともエリザベートには整腸作用は効果がなかったということがわかります。

そして結局、乳清にはカルシウムが牛乳の半分しか含まれていないことや他の無理なダイエットがたたって、エリザベートには早くから骨粗しょう症の症状が現れます。
そしてたんぱく質不足はむくみ坐骨神経痛なども加わり、エリザベートの健康を害していくのです。


肉ジュース療法

これは今からしてみると、エリザベートが行なったダイエット法のなかで最も奇妙なものかもしれません。
どのようなものかというと、子牛の生のもも肉をプレスして搾り出した血を直接飲むという方法。
エリザベートはこれを「肉ジュース」と呼んで、1867年から愛飲していました。
プレス機などは、わざわざフランスから取り寄せたようです。
実際1890年ころのパリでも、牛の生血が薬と考えられていたことがありました。
アミノ酸やビタミン、ミネラルなどが含まれていたので、病人に良いと考えられていたのだそうです。

肉ジュースを作るためのプレス機

けれどもこれによってエリザベートは胃カタル胃けいれんなどの障害を引き起こしたと言われています。
現代医学でも、細菌やウイルス感染の点で、もちろんそれは良くないことだとされています。

ちなみに、エリザベートはこの生血を生産するためのプレス機を旅行先にも必ず持っていくほどのこだわりを持っていたようですが、ある日食事をともにした皇帝が、皇妃のもとに運ばれてきた赤い液体が子牛の生血であることを知って、さすがに不快感をあらわにしたというエピソードもあるようです。

なおこの生肉、美肌効果があるとも信じられていたので、エリザベートはパックにも使用していたそうです。


それにしても、どのダイエット法も、美しさを保つために良かれと思ってやっていた方法ですが、健康を害してしまうのでは元も子もありませんね。
エリザベートは、この他にも長時間の運動を行なっていました。
そして一日に5回は体重計に乗り、そのときの数値によって夕食を食べるかどうかを決めていたそうです。
ここまで美に執着するとは、もはや狂気を感じるほどですが、それについては様々な理由が重なっていたと言われています。

それについてはまた別の機会に・・・。