世話を焼かない四人の女

間宮ゆり子 光文社 2019年





 

 

裏の顔を持つ住宅メーカー総務部長、2トントラックを乗りこなす宅配ドライバー 、“敏感すぎるセンサー”に悩むパン屋アルバイト、逃げた夫に代わり経営者となった清掃会社社長――わたしを幸せにするために働く女性たち。頑張りすぎるあなたの背中をやさしく撫でる、新時代お仕事小説。





個性的な女性四人のお仕事小説。

人と違うことで、苦しい思いをすることがあるが、自分を認めることで、乗り越えていく。

勇気をもらえる話だ。

 


これは、「敬語で旅する四人の男」の続編とも言える作品。

内容ほとんど忘れていたけど、自分の書いた感想読んで思い出してきた。


「敬語で旅する四人の男」の斉木が、どの話にも絡んでいて、いい味を出していた。




お気に入り度⭐⭐⭐⭐

先祖探偵

新川帆立 角川春樹事務所 2022年7月





 

 

「あなたのご先祖様を調査いたします」
風子は、母と生き別れてから20年以上、野良猫のように暮らしてきた。
東京は谷中銀座の路地裏で、探偵事務所をひらいている。
「曾祖父を探してください」「先祖の霊のたたりかもしれないので、調べて」など様々な、先祖の調査依頼が舞い込む。
宮崎、岩手、沖縄……調査に赴いた旅先で美味しい料理を楽しみながら、マイペースで仕事をしている風子。
いつか、自らの母を探したいと思いながら――



先祖様を探す探偵なんているの?

何のために調べるのだろう?

と思いながら読み進めていくと……


単に先祖が有名な武士だったとわかって自慢したい人もいるみたいだけど、

先祖を探したい本当の理由がわかったり、事件に巻き込まれたりとなかなかおもしろいストーリー展開だった。


風子がこの探偵を始めたのは、自分の母を見つけ出したいからで……



無戸籍について考えさせられる。

紙きれ一枚のために、親子が離ればなれにならなければいけないなんて、こんな理不尽なことはない。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


ガラスの海を渡る舟

寺地はるな PHP研究所 2021年9月





 

 

兄の道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調したり、他人の気持ちに共感したりすることができない。
妹の羽衣子は、道とは対照的に、コミュニケーションが得意で何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいる。
正反対の性格である二人は互いに苦手意識を抱いていて、祖父の遺言で共に工房を引き継ぐことになってからも、衝突が絶えなかった。
そんなガラス工房に、ある客からの変わった依頼が舞い込む。それは、「ガラスの骨壺が欲しい」というもので――。



小学生の頃、落ち着きがなく、まわりとあわせられない兄のことで、からかわれる。

母親は兄 につきっきりになり、少しのことで兄を褒める。


なんでもそつなくこなす妹の羽衣子は、苦い思いや悲しい思いをしたことだろう。


兄が嫌いだという羽衣子。

でも、何かがあったら、相談を持ちかけるのは兄。

思った答えが返ってこなくても、兄のまっすぐなところを羽衣子は理解するようになったのではないのか。



相手の気持ちはわからないという道。

障害があるとか、ないとかに関係なく、道は道なのだ。

わからないことは話あえばいいことなのだと思う。


兄のような才能がないと悩む羽衣子だが、毎日ガラスと向き合っている事実があると言ってくれた繁 賽さんの言葉が心に響いた。


祖父のガラス工房を兄妹で継ぐと決心し、お互い足らないところを補い助けあい、成長していく様子がよかった。


 「だいじょうぶですか」

「なにがですか」

道と葉山さんのやりとりにニヤリ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐





傷だらけの僕らは、それでもいつか光をみつける

汐見夏衛 スターツ出版 2023年11月





 

 

自分に正直であること。それがいちばん正しい。そう思って過ごしてきた高校生の瑠璃。そんな生活が一変したのは、友達をさしおいてバスケ部の部長になってから。お弁当を持って逃げるように教室を出る日々に心が折れそうになっていたとき、旧校舎の空き教室で、同じ学年の紺と出会う。彼は人前で話をするのが大の苦手でほとんど背中を向けていたけれど、その言葉は誠実で瑠璃の心を癒してくれた。そして、嫌がらせがいよいよエスカレートしたその時――。大声をだして助けてくれたのは、あの紺だった。傷だらけのふたりは、よりそいながら…それぞれの方法で光をみつけていく。真っ暗な苦しみの中にいる人へ――今日を乗り越えるための物語。





自分に正直な分、思ったことをすぐに口に出してしまう瑠璃。

バスケ部の顧問に推薦され、部長になったことから、同じバスケ部の友達から、嫌がらせをされるようになる。


嫌がらせ、それも、今まで仲のよかった友達からというのはきついだろう。

 どうしていいかわからないまま、時間がすぎるのを待つ。




つらいことがあっても、わかってくれる人がひとりでもいるということは、心の支えになるだろう。

一日を乗り越え、明日へとつなげる。

今までの自分を反省し、明日への道を見つけて行く。


作者の作品は、心が癒やされる感がいい。


お気に入り度⭐⭐⭐


ジャッジメント

小林由香 双葉社 2016年6月





 

 

大切な人を殺された者は言う。「犯罪者に復讐してやりたい」と。
凶悪な事件が起きると人々は言う。「被害者と同じ目に遭わせてやりたい」と。
20××年m凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。それが「復讐法」だ。
目には目を歯には歯を。この法律は果たして被害者たちを救えるのだろうか?




衝撃的な内容だった。


 復讐法ができ、被害者の家族は、合法的に刑罰として犯罪者が受けた被害内容を執行できる。復讐法を選ばない場合は、旧来の法に基づく判決となる。

この時、どちらを選ぶのか?


合法とはいえ、自らの手で復讐しなければならない。

世間の声も気になるだろう。


さまざまな事例の感情が、ていねいに描かれていて、重い内容だが、心に響いた。


どちらを選んでも被害者家族の心が晴れ渡ることはないだろうと思った。


執行監視員の仕事は、心を病むだろうな。


10歳の少年が執行者となるのは、過酷 すぎる!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐




虹を待つ彼女

逸木裕 角川書店 2016年9月






 

 


あとを継ぐひと

田中兆子 光文社 2020年4月





 

 

父親から下町の駄菓子工場を継いだ素人の娘。老舗旅館の女将を継ぎたい、トランスジェンダーの息子。障碍者を雇用する会社で、仕事に、人間関係に悩む新入社員。祖父の農場を継ぐという息子を心配する父親。なにかを「継ぐ」にはトラブルがつきもの。それでも前の世代から何かを引き継ぎ、次へ伝えようともがく人々を描く、連作短編集。



初読み作家さん。


家業を継ぐということは、昔は当たり前の ことだったけど、今はどうなのだろう。


親として、家業を継がせたい気持ちと、廃れていくこの家業を継がせることの不安……


子どもにとっては、家業を継げない申し訳ない気持ち。

新しいかたちでの後継ぎ……


問題はいろいろあるけれど、

家業を継いだとしても、他の職業についたとしても、親から受け継いだものは、あるのだと思う。


サラリーマンなら、家業を継ぐということはないけれど、同じサラリーマンという立場で、話があうこともある。

娘と父、野球観戦に一緒に行く話がよかった。


健常者と障害者、同じ職場で働くのは、たいへんなこともあるが、相手のことを知り、思いやる気持ちで接していれば、誰とでもうまくやっていける。


どれもが希望の見えるラストがよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


五つの季節に探偵は

逸木裕 角川書店 2022年1月





 

 


高校二年生の榊原みどりは、同級生から「担任の弱みを握ってほしい」と依頼される。担任を尾行したみどりはやがて、隠された“人の本性”を見ることに喜びを覚え――。(「イミテーション・ガールズ」)
探偵事務所に就職したみどりは、旅先である女性から〈指揮者〉と〈ピアノ売り〉の逸話を聞かされる。そこに贖罪の意識を感じ取ったみどりは、彼女の話に含まれた秘密に気づいてしまい――。






高校二年生の榊原みどりは、父親が探偵という理由で、同級生から、いじめられていることを相談され、担任の弱みを握ってほしいと頼まれる。初めて、尾行をするみどりだったが……


高校生探偵の話かと思ったが、2002年、2007年、2009年、2012年、2018年と成長したみどりかが、その時に出会った事件を描いている。


お香の話や指揮者の話など、興味深い話だった 。


みどりは、鋭い視点で事件を暴く。

それが、この先どんな結果になろうと事実を知らせる。

みどりは、人間の本質を見極めることに興味を示す。

事実だから仕方ないことだけど、後味悪い。

新人の探偵、要がいい感じ!


お気に入り度⭐⭐⭐



息をつめて

桂望実 光文社 2022年11月





 

 

都会の片隅でひっそりと暮らすひとりの女。何かから逃れるように、孤独な日々を送る。パチンコ景品交換所、連れ込み宿の清掃、訪問介護の現場。仕事を転々とする彼女にも、かつて幸せな暮らしがあった。充実した日々は、ある違和感から少しずつ壊れていく。そして、ついにある事件を発端に、彼女の人生は破滅するーー。衝撃の問題作。



真面目に働く麻里だが、身元がばれそうになると仕事を変える。

何かから逃げるように~


その訳は、途中から明らかになる。


麻里は、ホームヘルパーとして個人宅を訪問するうち、さまざまな人と出会う。

彼らの生き方に触れるうちに、自分の生き方を考える。


親に、どこまで子どもの責任があるのか?

卒婚、卒親……

家族であっても、ずっとその関係を続けていかなくてはならないわけではない。

家族の関係で悩んでいるなら、その関係を切った方が、自分らしく生きられるのか。


題名通り、息のつまる物語だ。


お気に入り度⭐⭐⭐


救いいの森

小林由香 角川春樹事務所 2019年2 月






 

 

いじめや虐待、誘拐など命の危険を感じた時に起動させると、児童救命士がかけつける「ライフバンド」。
児童保護救済法が成立し、義務教育期間の子どもにその着用が義務づけられた。
ある日、新米児童救命士の長谷川は「ライフバンド」の検査で小学校に出向き、
そこでわざと警告音を鳴らす少年と出会う……。
明日の未来を支える子どもを守るため、僕たちはあきらめない。
生きづらい現代に希望を照らす、感動の物語。





いじめや虐待、誘拐など命の危険を感じた時に起動させると、児童救命士がかけつける「ライフバンド」という架空の制度 のもと、児童救命士として働く新人長谷川とパートナーを組む新堂の活躍を描く。



架空の物語でありながら、虐待やいじめは、実際にありそうで、恐ろしい。


SOSを発している子どもに、まわりの大人は、どのように接すればいいのか、考えさせられる。


新米の長谷川の成長物語でもある。

やる気がなく、さぼっているような 新堂だが、彼には、つらい過去があり……



短編で、ライフバンドを使用した事案が描かれていて、それぞれに 読みごたえがあるが、最後の章で、それらがまとまりをみせる。

最後の 盛り上がりには、ハラハラさせられた。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐