永遠についての証明

岩井圭也 角川書店 2018年8月


 



 

特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能を持つ瞭司に惹きつけられるように三人は結びつき、共同研究で画期的な成果を上げる。しかし瞭司の過剰な才能は周囲の人間を巻き込み、関係性を修復不可能なほどに引き裂いてしまう。出会いから17年後、失意のなかで死んだ瞭司の研究ノートを手にした熊沢は、そこに未解決問題「コラッツ予想」の証明と思われる記述を発見する。贖罪の気持ちを抱える熊沢は、ノートに挑むことで再び瞭司と向き合うことを決意するが――。




最近気になっている岩井圭也さんのデビュー作。


六年前に亡くなった瞭司の研究ノートを手にした熊沢を描いた現在と

瞭司と熊沢と佐那が大学で知り合った過去が交互に描かれる。


瞭司と熊沢と佐那。

数学のことはわからないけど、共同研究している時の彼らの熱量が伝わってきた。

いい関係だ。


しかし、

瞭司を大学に導いた小沼をはじめ、熊沢と佐那が、それぞれ違う道に進んで行く中、瞭司は、元の場所から進めずにいた。


瞭司の孤独、苦悩が胸に突き刺さる。


そして、瞭司を死なせてしまった罪悪感から熊沢はのがれられない。



けれど、

日本数学会年会の熊沢の講演、迫力があった。


ラストは、若い世代に引き継がれいきそうな予感。

熊沢や佐那らは、違う方向に進んだとしても、数学を捨ててないところがよかった。




気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐







夜と跳ぶ

額賀澪 PHP研究所 2024年8月



 

 

不祥事を起こし謹慎中の中年スポーツカメラマン与野は、ある夜渋谷で、東京五輪金メダリストの大和エイジと偶然出会う。金メダリストでありながら、次のパリオリンピックに出ようともせず、自由気ままに滑るだけのエイジに反感を覚えつつ、その圧倒的な力に魅了され、与野はエイジの専属カメラマン、通称「フィルマー」として、彼の日常の滑りを撮影することに。ともに最高のトリック(ジャンプ、空中動作、回転などの技)を追い求める二人だが、次第に連続窃盗事件や通り魔事件など、深夜の渋谷を取り巻く奇妙なトラブルに巻き込まれていく……。




スケボーの金メダリストのエイジと、エイジのトリックに魅了されたスポーツカメラマンの与野の物語。



パリオリンピックで盛り上がっている今、タイムリー な小説と いえる。



毎日しんどい練習をして、参加標準記録だかなんだかをクリアするための大会に出て、目指せオリンピックっていうのがおじさんの思うスポーツってことでしょう?〉



〈スケートボードは ストリートから生まれたスポーツなのに、街で滑っていると邪魔者扱い。〉


スポーツや スケートボードに関して、

エイジの言葉にハッとさせられることも~




エイジは、東京オリンピックで金メダルをとったのに、パリオリンピックに出ようとしないのはなぜか。



与野がどんな不祥事をおこし謹慎処分となったのか。

彼は、これからどうするのか。


与野は、エイジのフィルマー(専属カメラマン)となり、エイジのトリックを撮影するようになるが、ふたりが、事件に巻き込まれ、解決していくなかで、ふたりが信頼しあえる関係になっていくところがよい。


エイジ って、自由奔放にみえるけど、芯はしっかりしている。


エイジが滑っている映像が目に浮かぶ。

きっと美しく爽快だろうな。



気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

この夜が明ければ

岩井圭也 双葉社 2021年10月



 

 

季節バイトをしに北海道に集まった七人の男女。
ある晩一人が遺体となって見つかり、荷物から脅迫状が発見された。
警察を呼ぼうとした工藤秀吾は、携帯電話を他のアルバイトに奪われ、通報を反対される。
どうやらこの場の人間は、こぞって警察を避ける理由があるようで……。



漁業の季節バイトで集まったうちのひとりが遺体で発見される。

工藤秀吾は警察に 通報しようとするが、他の人たちは、通報に反対する。


警察に身分を明かしたくない理由が、それぞれ語られ、これまでの苦悩とともに事情が明らかになっていく過程が読んでいておもしろい。


工藤秀吾は、正義感が強いなあ。


正しい事が、いつもいつも、適切というわけでない。

時には、逃げることも必要なこともある。

でも、逃げ続けられるのか。


この結末はどうなのだろう。

破綻がおきそう。


気に入り度⭐⭐⭐




あいにくあんたのためじゃない

柚木麻子 新潮社 2024年3月



 

 

過去のブログ記事が炎上中のラーメン評論家、夢を語るだけで行動には移せないフリーター、もどり悪阻とコロナ禍で孤独に苦しむ妊婦、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドル……いまは手詰まりに思えても、自分を取り戻した先につながる道はきっとある。この世を生き抜く勇気がむくむくと湧いてくる、全6篇。


コロナ禍、webでの炎上などで苦しんでいる人たちを描いている。


めんや 評論家おことわり

ラーメン評論家が書いた画像付きのブログが炎上。

そのために;有名;になり被害を受けた人たちの復讐劇。


BAKESHOP MIREYS

お店を開く夢をもつ未怜。秀実さんは、オーブンをおくってくれた。

未怜は、夢みているだけだったのに、オーブンが重荷となった。


秀実の行為は、おせっかいなのか?

未怜が、母から 自立して、変われるといいな。




トリアージ2020

 ひとり親の妊婦。ネットで知り合ったよこちんの母が訪ねてくる。

こういう、ネットでのつながりが、実際の生活と関わって、ひとりで過ごしていた妊婦の心の癒しになるという話は、とてもよかった。


パティオ8

コロナ禍、外出が規制され、中庭で子どもたちが遊んでいる。

その声がうるさいので、商談がうまくいかないと101号室から文句を言われる住民たち。

彼らは、協力し合い、自分の得意なことを活かしてその商談を阻止しようとしているのが面白かった。


スター誕生

人気がなくなった元アイドル。

拡散されている動画の人と組みたいとその人を探すが……

恥ずかしいのを乗り越えて、一生懸命に踊る信介。スターになれるといいね。



他、商店街マダムショップは何故潰れないのか?





お気に入り度⭐⭐⭐



 





いのちの停車場

南杏子 幻冬舎 2020年5月



 

 

東京の救急救命センターで働いていた、62歳の医師・白石咲和子は、あることの責任をとって退職し、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療の医師になる。
これまで「命を助ける」現場で戦ってきた咲和子にとって、「命を送る」現場は戸惑う事ばかり。咲和子はスタッフたちに支えられ、老老介護、半身麻痺のIT社長、6歳の小児癌の少女……様々な現場を経験し、学んでいく。家庭では、老いた父親が骨折の手術で入院し、誤嚥性肺炎、脳梗塞を経て、脳卒中後疼痛という激しい痛みに襲われ、「これ以上生きていたくない」と言うようになる。

「積極的安楽死」という父の望みを叶えるべきなのか。咲和子は医師として、娘として、悩む





終末医療とどう向き合うのか。

患者、家族の覚悟が描かれている。



在宅医療というと、

老人が死を家で迎えるという印象だったが、半身麻痺のIT社長や小児がんの少女の話と、さまざまなケースがあるようだ。


少女の話は、まず、親に現状を把握してもらうことから始まる。

つらい現実だろうが、残された親が、これから先も生きて行くために、いい思い出を残せたのではないだろうか。


医師として、患者と向き合うのと、娘として親の病気に向き合うのは、違うのだと思う。


安楽死のことは、答えが出ない。

難しい問題だ。



気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


予言の島

澤村伊智 角川書店 2019年3月




 

「わたしは死ぬよ。言葉で。呪いで」
瀬戸内海に浮かぶ霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が生涯最後の予言を遺した場所だ。彼女の死から二十年後、《霊魂六つが冥府へ堕つる》という――。
天宮淳は幼馴染たちと興味本位から島へ向かうが、宿泊予定の旅館は、怨霊が下りてくるという意味不明な理由でキャンセルされていた。
そして翌朝、幼馴染みのひとりが遺体となって発見される。しかし、これは予言に基づく悲劇のはじまりに過ぎなかった。
不思議な風習、怨霊の言い伝え、「偶然」現れた霊能者の孫娘。祖母の死の真相を突き止めに来たという、彼女の本当の目的とは……。
あなたは、真実に気づくことができるか――。島の秘密が暴かれたとき、惨劇の幕が開く。




毎日暑い日が 続いているので、ホラーもいいかなと思って読んでみた。


霊能者・宇津木幽子の予言、信じているわけではないだろうが、それに近い出来事が次々と起きると、もしかしたら、この予言は、あたっているのかもという心理になってしまう。


そこへ導きながら、真実が明かされて、そういうことだったのかと納得。

ホラーと思わせて、しっかりと答えのあるミステリーだった。


しかし、それからも、話は続く。

その真実が明かされた時、唖然。

そんなの、気づかないよ。


違う意味でのホラーだね。



気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



春休みに出会った探偵は

大崎梢 光文社 2024年3月





 

 

中学2年生の花南子は、父親の海外勤務によって春休みから一人暮らしを始める。その場所は曾祖母の五月さんが経営するアパート「さつきハイツ」。その矢先、五月さんがぎっくり腰で入院、心細い花南子のもとに宛先不明の謎の封書が届く。同級生男子とともにその謎を調べ始める花南子だが、偶然出会った”名探偵“の存在が、花南子の生活を大きく動かし始める…



中学2年生の花南子 が、料理部に所属する、となりのクラスの根尾新太と、日常のなぞを解いていく物語。


謎を解き明かす過程で、探偵の今津と知り合う。


出来事は、中学生にしては重い内容で、今津も心配するように、中学生たちが 首を突っ込みすぎの行動にハラハラした。


花南子たちを助けてくれる今津がとてもいい印象だったのだけど……

その正体に唖然……


花南子が受け止められるのか心配。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐


ロールキャベツ

森沢明夫 徳間書店 2023年5月





 

 


人生の脚本は、 自分で書き換えられる! 夢も趣味もない大学2年生の夏川誠をかえたのは、 ただ椅子に座るだけの遊び「チェアリング」の 仲間たちだった。 『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』の著者が贈る 青春起業小説! チェアリングとは? 椅子を持ち歩いて、好きな場所でくつろぐこと。 さぁ、椅子を持って出かけよう! 




チェアリングとは、

椅子を持ち歩いて、好きな場所でくつろぐこと。


美しい景色 を目の前にしてのチェアリングは、心が癒やされそう。


チェアリングのメンバーのうち4人は、それぞれ将来やりたいことが決まっていたが、夏川誠は、やりたいことが見つからず、就職活動にも身が入らない。


やりたいことが決まっているとはいえ、そこにいたるまでには、苦難がある。

誠にいたっては、方向さえ見いだせていない。


そんなチェアリングのメンバーが、助け合い成長していく様子が描かれている。


さわやかな青春小説。

ほっとするあたたかさがあった。




過去から見たらいちばん経験豊富で未来から見たらいちばん若々しい」


この言葉がとても気に入った。


生まれ変わるなら生きてるうちに」

何かを始めるのに年は関係ない。
後悔のない人生を。
というエールもらった。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐



令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法

新川帆立 集英社 2023年1月





 

 

通称:令和反逆六法――
六つのパラレル・レイワ、六つの架空法律で、現行法と現実世界にサイドキック!

「命権擁護」の時代を揺さぶる被告・ボノボの性行動、「自家醸造」の強要が助長する家父長制と女たちの秘密、「労働コンプライアンス」の眩しい正義に潜む闇……。
痛烈で愉快で洗練された、仕掛けだらけのリーガルSF短編集。





架空の世界の話

哺乳類に人間の子どもと同等の権利が認められている社会
SNSでチンパンジーのレオがとった行動が訴えられる


酒作りに家庭の味が求められる社会
専業主婦の万里子は、義母の要求で、酒作りの講座に参加するが……

バーチャルな世界と現実世界が混在する社会
メタティカ共和国が南極で独立宣言をした

労働者保護法が制定された社会
労働者の健康管理が徹底され、食堂で昼食をとること、6時間以上の睡眠、30分以上のウォーキングが課された 。 

キャッシュレス社会
現金はYUKICHIと称され、一部の物物交換の一種として やりとりされていた

賭け麻雀が合法化された社会
塔子は政治家に賄賂を渡すため、相手方に勝たせる麻雀を行っていた


こんな架空の世界をよく考えだしたものだ。
動物愛護、バーチャル、キャッシュレス、長時間労働、賄賂……
現実世界を風刺している内容で、こんな社会あるかもと思ってしまう。
ブラックユーモアの効いた話だ。


第二話 自家醸造の女では、

義理の両親に求められたら、万里子のような行動をとってしまう気持ち、わかる気がする。


第四話 健康なまま死んでくれってあったけど、それはいつの時代でも、そう願うよと思う。



第五話 最後のYUKICHI

恐ろしい結末!





騙す側が騙されたり、自分が思っているようにことが運ばないのは、どんな時代でも同じだな。




お気に入り度⭐⭐⭐⭐

家族解散まで千キロメートル

浅倉秋成 角川書店 2024年3月





 

 

実家に暮らす29歳の喜佐周(きさ・めぐる)。古びた実家を取り壊して、両親は住みやすいマンションへ転居、姉は結婚し、周は独立することに。引っ越し3日前、いつも通りいない父を除いた家族全員で片づけをしていたところ、不審な箱が見つかる。中にはニュースで流れた【青森の神社から盗まれたご神体】にそっくりのものが。「いっつも親父のせいでこういう馬鹿なことが起こるんだ!」理由は不明だが、父が神社から持ってきてしまったらしい。返却して許しを請うため、ご神体を車に乗せて青森へ出発する一同。しかし道中、周はいくつかの違和感に気づく。なぜ父はご神体など持ち帰ったのか。そもそも父は本当に犯人なのか――?




父が盗んだと思われるご神体を家族が協力し、山梨県から十和田白山神社に返しに行くロードムービー。


神社の明日のお祭りまでに返さないといけない。

ご神体を乗せる車はどうするのか?

途中、あとをつけてくる車がいるが、いったい誰なのか?

ご神体を盗んだのは本当に父なのか?


話は二転三転して、着地点はいったいどこなのか、さっぱりわからなかった。


協力しあって返しに行くことで、家族の絆が深まるのかと思ったけど、そんな単純なことではなかった。


家族ってなんなのだろう。


この家族は、解散した方が、自分らしく過ごせるのかな。


お気に入り度⭐⭐⭐