いのちの十字路

南杏子 幻冬舎 2023年4月



 

 

愛おしい人を、最後まで愛おしく思って生きられるように――。

医師国家試験に合格し、野呂は金沢のまほろば診療所に戻ってきた。娘の手を借りず一人で人生を全うしたい母。母の介護と仕事の両立に苦しむ一人息子。末期癌の技能実習生。妻の認知症を受け入れられない夫。体が不自由な母の世話をする中二女子。……それぞれの家庭の事情に寄り添おうとするけれど、不甲斐ない思いをするばかりの野呂には、介護していた祖母を最後に“見放してしまった”という後悔があった。



「命の停車場」

の続編。

まほろば診療所で訪問診察をしていた白石先生は、加賀大学の強い要請を受け、医学部の特任教授を兼務することになった。また、新型コロナウイルスの感染が続く中、付属病院で緊張医療の陣頭指揮を執っている。

というわけで、
以前ドライバー兼雑用係としてアルバイトしていた野呂が、医師国家試験に合格し、まほろば診療所に戻ってきた。

この野呂が主人公の話。

フットワークの軽い野呂だが、コロナウイルスの蔓延もあって、さまざまな問題と対峙することになる。

娘の世話にはなりたくないと言い張る母。
娘が嫌いというわけではなく、逆に娘の時間を大切にしてほしいという想い。

〈介護を受けるのを強制されない権利〉もあるということを知る。



末期癌の技能実習生が国に帰らない理由とは?

制度として見直さなければならないことがあると感じた。



ヤングケアラーや老老介護など、問題は山積み。

‘ケアラーにバカンスを’ その通りだと思う。



野呂も祖母のことで後悔を抱えていた。
けれど、過去と向き合うことができてよかったと思った。




重い内容であるが、まほろば診療所の人たちが明るい。

それに……

《家族会エル よろずのご相談をお待ちしておりますという貼り紙に、
家族、会える と勘違いするところや

Young Carer を 毛穴 と聞き間違えるなど、クスッと笑える場面も…

お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


獏の掃除屋

風森章羽 講談社 2023年1月



 



「獏憑き」の黒沢彩人は従兄弟の桂輔が社長を務める白木清掃サービスで、悪夢の原因となる穢れを取り除く「夢祓い」を行っている。
実家のパン屋を継ぐ夢を絶たれた館平奈々葉、
妻子と別れ、占い屋を営む根津邦雄、
四歳の娘にどうしても優しくできない笑原香苗ーー

獏憑きは穢れを喰べるほどに寿命が縮む。
しかし彩人には、残された時間でどうしても喰

べたい悪夢があったーー




夢の中に入って、夢祓いを行う。

憎しみ、嫉妬、劣等感、罪悪感など負の感情が悪夢となって現れるのだから、それを喰う場面は、恐ろしく、まがまがしい感じだった。



彩人は、坦々と仕事をこなしているけど、

獏憑きとして生まれたことのしがらみ、 苦悩。

その葛藤ははかりしれないだろう。




獏憑きは穢れを喰べるほどに寿命が縮む。


彩人が弱っているとき、それが寿命だからとあきらめることなく、彩人を助けようとする桂輔の懸命な姿がよかった。


まさかあんな方法をとるとは!!


これまでの出来事 と題名までもが伏線だった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


5分後に意外な結末③白い恐怖

学研プラス 2013年12月



 

 

笑い、感動、友情、ちょっとだけシニカル。
短時間で読めて、ラストにドンデン返し!

累計100万部突破の大人気シリーズ。
本シリーズは、どの巻からでも、どのお話からでも読むことができる、1話完結の読みきり型です。
どの話も短いので、朝読にも最適。また、どのお話にも、ラストに「意外な結末」があるので、読書好きでも、そうでない子どもにも大好評です。

SF、ホラー、ミステリー。くすっと笑える話、ぞっとする話、感動する話。ページにして数ページ、5分程度の時間で読めて、最後に「あっと驚くドンデン返し」。大人気アンソロジーシリーズの第3弾。





い恐怖というだけあって、怖い話が多かった。


気にいらないことをひとつ、ふたつと数えていって、三つになったら…

ゾッとした。


鬼ごっこ

犯罪を犯してしまうのだが、心温まる話だった


オアシス

水を売ってほしいのに、ネクタイを売りつけて くる。

ネクタイが必要なわけは?



愛を貫く勇気
娘と別れろという脅迫状。
愛を貫くのか、それとも別れるのか?
意外な結末 だった。

呪いをかけられた王子
童話のような話。

魔法のランプと人生
教訓めいた話。

落語の「まんじゅうこわい」に模した話もあった。

すき間時間に読むのにちょうどいい。

お気に入り度⭐⭐⭐

成瀬は信じた道をいく

宮島未奈 2024年1月



 

 

成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応え、ますますパワーアップの全5篇!






成瀬は天下を取りにいく の続編


成瀬にまた会えてうれしい。

大学生になっても成瀬は成瀬だった。


「ぜぜから」にあこがれる小学生。

成瀬のバイト先のスーパーへのクレーマー主婦。

娘の大学受験を心配する父。

成瀬観光大使となって活躍する女子大生。

幼なじみの島崎。


成瀬と関わったこれらの人々の視点で、成瀬のことが語られる。


成瀬に感化されて変わっていく人たちがよかった。


島崎は、成瀬と離れてしまい、島崎の知らない成瀬がいて、新しい人たちと仲良くしていることに嫉妬を感じる場面も …


その気持ちもわかるけど、成瀬と島崎の関係は特別だよ。



けん玉の腕前があそこで披露されるとは!


〈コンビーフはうまい〉って、いったいどんな電話番号?


気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


クワトロ-フォルマッジ

青柳碧人 光文社 2023年2月



 

 

丘の上の小さなピッツェリア「デリンコントロ」。閉店間際に飛び込んできた男性客が、マルゲリータを食べた途端、絶命した。ピザに毒が入っていたのか? 今夜はオーナー不在、店のスタッフは4人……ということは、犯人はこの中にいる!?
離れて暮らす娘を持つバツイチの仁志、なぜか仁志に敵意を見せる女子大生・映里、天真爛漫を装う小悪魔・久美、実はピザが嫌いな伸也。誰もが秘密を抱えていて、誰もが怪しいーー

事実は1つ。でも事情は4つ。
すべての真相は店の中にある。仕掛け満載のワンナイト・パズラー!





さなピッツェリア「デリンコントロ」

閉店間際に来た客が泡を吹いて死んでしまう。

毒殺?

ここの従業員が犯人なのか?


事件を次々解決していく連作かと、勝手に想像していたが、ひとつの事件を追う長編小説だった。



この日、オーナー不在のため、店を任された紅野仁志。

大学生アルバイトの八木沼映里。

厨房でピザを焼く調理人、言葉少ない片山伸也。

天真爛漫に振る舞う調理人宮田久美


それぞれの視点で話が語られる。

同じ場面が繰り返されるので、退屈と感じる部分はあるけれど、その時のその人の気持ちがわかってこれはこれでおもしろい。


秘密を隠している人たち。

それがいつばれるのか?


店長代理だからと、何かをしようとするたびに

「あなたは何も知らないのだから」って言われている仁志が、仲間はずれにされている印象で、ちょっぴりかわいそう。

彼が、裏表のない、一番純粋な人物かも!


ミステリーとしても、伏線がはってあって成立。


 従業員の人間関係をみるのがおもしろかった。


仁志の娘のさやかちゃんって利発な子だ。

推理、鋭い。


 お気に入り度⭐⭐⭐⭐




一線の湖

砥上裕將 講談社 2023年12月



 


主人公・青山霜介が、ライバル・千瑛と湖山賞を競い合った展覧会から2年が経った。
大学3年生になった霜介は水墨画家として成長を遂げる一方、進路に悩んでいた。
卒業後、水墨の世界で生きるのか、それとも別の生き方を見つけるのか。
優柔不断な霜介とは対照的に、千瑛は「水墨画界の若き至宝」として活躍を続けていた。
千瑛を横目に、次の一歩が踏み出せず、新たな表現も見つけられない現状に焦りを募らせていく霜介。

そんな折、体調不良の兄弟子・西濱湖峰に代わり、霜介が小学一年生を相手に水墨画を教えることになる。
子供たちとの出会いを通じて、向き合う自分の過去と未来。
そして、師匠・篠田湖山が霜介に託した「あるもの」とはーー。

墨一色に無限の色彩を映し出す水墨画を通して、霜介の葛藤と成長を描く、感動必至の青春小説!






大学3年生になった青山霜介は、揮毫会に参加するが、緊張のあまり失敗してしまう。


そんな時、体調不良の兄弟子・西濱湖峰の代わりに小学生に水墨画を教えることになる。


子どもたちの描いた絵に感動し元気をもらう。


そして、その小学校は、母親が働いていた小学校だった。

教師として活躍していた生前の母親と向き合うことになる。


霜介は将来、どの道へ進むのか?

霜介は師匠から譲り受けた筆を使いこなす ことは出来るのか?


霜介の葛藤と成長を描いた作品。



墨で描き出される水墨画が、ありありと目に浮かぶよう。細やかで静謐、それでいて大胆!


 

霜介は、そういう道を進むと思ったよ。

霜介らしい選択を応援したい。




お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐




誰かがジョーカーをひく

宇佐美まこと 徳間書店 2023年11月



 

 

地方都市にすむ本作な平凡な主婦・沙代子はおんぼろ軽四・ピンクのラパンで走行中、飛び出してきたキャバラ嬢・紫苑と接触事故で遭遇。
現金3千万円入りのボストンバッグを受け取る羽目に。
入れあげていたホストの俊に依頼された紫苑は、沙代子と折半にしようと、金の持ち逃げを提案…






平凡な主婦の沙代子が接触事故を起こしたところから、物語は始まる。被害者のキャバクラ嬢-紫苑に頼まれて仕方なく、バッグを取りに行った沙代子だか、そのバッグには、大金が入っていた。
  紫苑の提案により、ふたりで山分けしようと画策するが…

紫苑の楽観的な計画に、沙代子は疑問を持つが、 意見をいう性格でもなくて、従わざるを得ない。

そんなふたりが 、怪しい組織ややくざに追われることになったり、会社の権利争いにまで巻き込まれたり…
いろんな人物と絡みあって物語は進んでいく。


あの金は、何の金なのか?
だれが手にするのか?
沙代子と紫苑の運命はいかに?

話は二転三転。

先を読まずにはいられないノンストップアクション。

おもしろかった。


人に流されてばかりいた沙代子が、自分の意思を持ち、反撃するところが最高!


気に入り度⭐⭐⭐⭐

風待ちのひと

伊吹有喜 ポプラ社 2009年6月



 

 

心の風邪”で休職中の39歳のエリートサラリーマン・哲司は、亡くなった母が最後に住んでいた美しい港町、美鷲を訪れる。哲司はそこで偶然知り合った喜美子に、母親の遺品の整理を手伝ってもらうことに。疲れ果てていた哲司は、彼女の優しさや町の人たちの温かさに触れるにつれ、徐々に心を癒していく。
喜美子は哲司と同い年で、かつて息子と夫を相次いで亡くしていた。癒えぬ悲しみを抱えたまま明るく振舞う喜美子だったが、哲司と接することで、次第に自分の思いや諦めていたことに気づいていく。少しずつ距離を縮め、次第にふたりはひかれ合うが、哲司には東京に残してきた妻子がいた――。




最近、気になる作家さんのデビュー作を読んでいて、 今回は、伊吹有喜さんの「風待ちのひと」


亡くなった母の家を片付けに美鷲に来た哲司。

偶然知り合った喜美子に音楽を教えるかわりに遺品整理を手伝ってもらうことに~


会社や家庭に疲れていた哲司は、美鷲での生活で次第に心が和らいでいく。

喜美子は、おせっかいなおばちゃんって感じだったけど、印象が変わっていった。

オペラを着物姿で行った時の彼女は、凛々しい感じがした。


美鷲の風景と土地の人たちと音楽とオペラが心をほぐしていくようだ。


哲司の妻は、相手の気持ちを考えないいやな印象だったけど、彼女は、彼女なりに必至だったのだと思う。

彼女にも心のやすらぎが訪れますように。


 心が折れて頑張れない。

そんな時は心の休暇が必要で、まわりに

それをわかってくれる人がいることが重要だと思った。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

なんで死体がスタジオに

森バジル 文藝春秋 2024年6月



 

 

バラエティプロデューサー・幸良涙花は、がけっぷち、である。
筋金入りのお笑いファンかつテレビっ子だが、不運体質(?)のせいか、失敗に失敗を重ね、会社からは「次がダメなら制作を外す」と告知されている。

進退をかけた「次」の番組は、その名も「ゴシップ人狼」。
出演者たちが持ち寄ったリアルゴシップについて語りながら、紛れ込んでいる嘘つきを推理する、というトーク番組で、季節ごとの改変期に放送される人気特番だ。
マンネリ化する番組のテコ入れに、これを「生」で放送しろ、と上司は言うが、コンプラ的にも、事務所対応的にも無茶な企画。奮闘する幸良が、本番前に出会ったのは……






ゴシップ人狼」という嘘つきを推理する人気番組を生放送するという無茶な企画。

本番前になつて、出演するはずだった出演者のひとりが死体で発見される。


この企画を任されたバラエティプロデューサー・幸良涙花は、この困難を乗り切つて、放送を成功させることが出来るのか?

犯人はだれなのか?


人狼を見抜く。犯人を捜す。

それを生放送の中でするのだから、たいへん!


それぞれの視点で話がつながっていく。


軽妙な語り口 で会話がおもしろい。


テレビ業界の裏側は、こんなこともあるのかも。


お気に入り度⭐⭐

お台場アイランドべイビー

伊予原新 角川書店 2015年9月



 

 父であることを喪った男、母であるために走る女、そして唯一無二の「子供」である少年--傷ついた街に残る巨大な謎をめぐり、それぞれの闘いが始まる。



伊予原新さんのデビュー作ということで読んでみた。



東京地震後の退廃した都心、お台場を舞台に、元警察官の巽丑虎が孤児の丈太と出会うところから、物語は始まる。


この巽とその元上司のみどりの視点で交互で書かれている。



 最近が地震が多く、こういった社会も、現実になりそうでこわい。


消えた子どもたちの行き先は?


無国籍の児童、臓器売買、売春、癒着、やくざ絡みの出来事等、さまざまな問題が絡みあって、終盤へと話は続いていく。


ラストの脱出劇は、アクション映画さながらだった。


地震に関しては、専門的な記述があったけど、それがメインではない。


今まで読んでいたイメージと違う作品。

これがデビュー作なんだね。


気に入り度⭐⭐⭐⭐