公認会計士。税理士。日商簿記検定。中小企業診断士。
受験生の皆さん。こんにちは。
まず、今回のテーマの前提となる投稿です。
三菱地所物件一つで減損損失1,000億円超!三菱地所が損失を先送りしないワケ。
三井住友銀行 巨大銀行も逃れられない会計操作の誘惑:究極編
これにより三井住友銀行はわかしお銀行を受け皿にして
全国津々浦々にある自行の土地を取得原価から時価にカサ上げした訳で、
これは取得原価主義に反する行為です。
では、三井住友銀行はなぜ脱法行為である【吸収合併】を選んだのでしょうか?
それは【吸収合併】を選んだことで繰延税金負債が0円!で済んだからです。
当時のリリースです。
三菱地所 土地建物の評価見直しに伴うH14.3月期業績予想修正
土地含み益6908億円×税率42%=繰延税金負債2905億円
以下、2兆円と言われる土地含み益をカサ上げしていながら、繰延税金負債は一切発生していません。
フッターP.65 わかしおが三井住友から引継いだ資産・負債の内容。
フッターP.98 吸収合併後の連結貸借対照表・負債の部。
フッターP.163 連結貸借対照表における繰延税金負債の発生原因別の内訳。
※リリース資料は今後アップされなくなる可能性もあります。
興味のある方はフッターP.○○も含め早めの保存をお願い致します。
次に、処理スキームの図表を添付致しました。
なお、パソコンよりスマホ・タブレットの方が見易いと思います。
仮に、三菱地所の採った『土地再評価法』で処理した場合、
繰延税金負債8400億円(税率42%)を計上しなければならず、
含み益の内、1兆円近い金額が負債に流れてしまいます。
この繰延税金負債への流れを遮断し、
含み益全額を自己資本に充当する為【吸収合併】を選んだ訳です。
当時は準国有化の懸念があったことは、先日のブログでも触れましたが、
自己資本充実を経営トップが火急の問題と捉えていたことが伺えます。
特に、三井住友銀行の財務企画部長として最前線で指揮を執った、
現三井住友フィナンシャルグループ会長国部毅氏の回想からは、
現場の危機感がヒシヒシと伝わって来ます。
このエリートと呼ばれる三井住友銀行のメンバーのなりふり構わない姿に
私は畏怖の念すら抱いてしまいます。
最後に、三井住友銀行の行為は以下2つを踏みにじるものでした。
① 含み益のある資産に対し繰延税金負債を計上する会計ルール
②『土地再評価法』を時限立法として例外を認めない法制度趣旨
この姿を見た企業会計審議会の先生方の危機感は想像を絶するものであったと思われます。
また、三井住友銀行へは何らのペナルティもなく、
三菱地所を始め『土地再評価法』に基づき適法に処理した企業にとって
かなり不満の残る一件だったと思われます。
以上、この一件は日本の会計史において特筆されるべき事件であったと思います。
なお、この事件について当時の小泉政権は全く正反対の評価を行なっていました。
以下の投稿も併せてご覧下さい。
三井住友銀行による脱法行為の良し悪し
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