物件一つで減損損失1000億円超!三菱地所が損失を先送りしないワケ。 | 連結会計よもやま話

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受験生の皆さん。こんにちは。

 

昨年の投稿で三菱地所の前身の陽和不動産を取り上げました。

陽和不動産(三菱地所)株式買占め:相互持合株式(その他有価証券)の誕生

ここで日本一の大地主:三菱地所のパワーを象徴する資産は二つ。

① 東京『丸の内』の土地

② 横浜ランドマークタワー

 

問題は、横浜ランドマークタワー。

稼ぎ頭としての期待に反し、思うように収益が得られません。

理由は、周辺の物件との競合の激化に伴う賃料の低下の模様。

結果、ランドマークタワーは幾度か減損損失を計上しています。

2002年度3月期850億円(単体)

2015年度3月期737億円(他の物件の損失も含む)

従って、ランドマークタワー単体での損失累計は優に1000億円超!

ところで、三菱地所は2002年度3月期の減損損失を2006年3月期まで先送りしませんでした。

何故でしょう?その秘密は『丸の内』の土地にあります。

 

実は、政府は2006年3月期からの減損会計導入と引き換えに

2002年3月期までの実施を条件として(時限立法)

『土地再評価に関する法律』を施行しました。

三菱地 土地建物の評価見直しに伴うH14.3月期業績予想修正

時事会計No

その結果、2002年3月期に税効果を除いた4003億円もの含み益が、

『土地再評価差額金』として三菱地所のB/Sに加算されました。

勿論、この含み益の主な発生源は『丸の内』の土地。

これとセットで評価損1624億円を減損損失の前倒しとして計上。

一方、2015年度の減損損失はコチラ。

三菱地所2015年3月期有価証券報告書.pdf フッターP.85P.99

三菱地所の貸借対照表の資本の部の内訳を見ると、

『土地再評価差額金』は非常に巨額であることが分かります。

 

ところで、そもそも土地は原価評価が原則です。

従って、『土地再評価差額金』の計上も1回限り。

その為、2002年3月期に計上した金額が現在も引継がれています。

このように「その他有価証券評価差額金」と異なり、

毎年時価評価を行う訳ではありません。

この点にご注意下さい。

 

最後に、『丸の内』の土地の価値を巡って、

前回は相場師による買占め劇。

今回は減損損失を補って余りある『土地再評価差額金』。

このように三菱地所は『丸の内』の土地によって

ピンチを招いたり、ピンチを救われたりする。

関係者の心中は如何なるものか、興味は尽きないものです。

 

PS.次回は、いよいよ三井住友銀行の会計処理の闇に迫ります。

想像を絶する内容です。ご期待下さい。

三井住友銀行はなぜ脱法行為を選んだのか?(三菱地所との対比)

 

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