今回の共通テスト、物理はなんと全国平均が50点ないということを聞き、どんな問題だったんだろうと、興味を持ちました。大学入試センターのウェブサイトに問題が公開されていたので、それをダウンロードして内容を検討をしてみました。
ざっくりと印象を述べると、今回の出題では;
(1)これといった出題ミスはない。
(2)問題の難易度はたしかに難化している。
今回の共通テスト物理は、なぜそんなにも全国平均が悪かったのでしょうか。
具体的な問題を見ながら、一つ一つ、考えていきましょう。
問題は大学入試センターのウェブサイトからダウンロードしたPDFを印刷し、それをスキャナーで読み込んだものを加工しましたので、文字等が劣化していますが、ご容赦ください。
解答・解説は手書きです。
ワープロで打つとすごく時間がかかるので、手書きにしました。こちらもご容赦を。
第1問(問1)は、ドップラー効果のごく基本的な問題です。
(ア)は速度と距離と時間の関係。
(イ)はドップラー効果の振動数の式を用います。
→[1]の答は「5」アは2.1(s)イは1020(Hz)
第1問(問2)は、抵抗やインピーダンスについての標準的な問題ですが、あまり見ないタイプの問題なので、迷った受験生もいるでしょう。
さて、この問題の答と解説は;
[2]は直流回路の問題なので、電球が明るくなるのは、直流に対する抵抗値が小さいものを2つ選べばよいですね。
直流に対しては理想的なコンデンサーは抵抗値無限大の抵抗、理想的なコイルは導線と同じく抵抗値0の抵抗としてふるまいます。
よって、2つの素子は、導線とコイルを選べばいいですね。
→[2]の答は「1」導線とコイル
[3]は交流回路の問題。これはインピーダンスを用いないと解けません。
インピーダンスは三角関数で計算することもできますが、単振動が等速円運動の射影という数学的な性質を利用して、動径ベクトルの図で計算することができます。解答の図を見てください。
交流に対しては単独でインピーダンスが0になるのは導線だけですが、2つの素子を組み合わせるとなると、導線と何を組み合わせても、上図のように、2つの素子の合計のインピーダンスは0になりません。
ところが、位相がちょうど逆のコイルとコンデンサーを組み合わせると、同じ大きさの動径が逆向きなので、合成するとインピーダンスが0になります。
よって、電球がもっとも明るくなるのは、2つの素子をコイルとコンデンサーにした場合となります。
→[3]の答は「4」コイルとコンデンサー
第1問(問3)は、慣性力の問題です。
この問題は、慣性力のイメージをちゃんと理解しているかどうかを見る良問ですが、じつは正答率の低い問題です。
加速する乗り物の中のヘリウム風船や、ろうそくの炎がどう傾くかを考える問題です。
このタイプの問題は、慣性力と重力をばらばらに考えている人はよく間違えます。
今回の出題では、いきなりこの問題を出すと、間違える人が多発するだろうという予想のもとに、ヘリウム風船と二酸化炭素風船がどう傾くかを、ヒントとして与えてあります。
このヒントがないと、以下の問題の正答率はかなり下がるでしょう。
こちらが、その間違いがどうして生じるかを解説したものです。
慣性力の向きに力を受けて、ヘリウム風船も二酸化炭素風船も、加速方向と逆向きに力を受けると考えると、上のような間違った図を考えてしまいます。
しかし、風船は空気の中にあり、空気もまた慣性力を同じ向きに受けています。
したがって、風船がどう動くかは、二酸化炭素、空気、ヘリウムガスが受ける慣性力をすべて考慮に入れ、その結果どうなるかを考えなくてはいけません。この方法で考えると、かなり難しくなります。
高校の物理教科書では、慣性力と重力を別々のものとして取り扱いますが、アインシュタインが一般相対性理論で示したように、狭い範囲では、慣性力は重力と同じだと考えてよいのです。
この考え方は、高校生でも慣性力と重力の合力である「見かけの重力」を考えることで、簡単に扱えます。
上図のように、慣性力と重力の合力である見かけの重力は斜め左下を向きますから、バスの中はこの見かけの重力の世界になったと考えるべきです。
見かけの重力の向きに新しい上下方向が生じるので、空気より重い二酸化炭素風船は(見かけの)下へ向かって落下し、空気より軽いヘリウム風船は(見かけの)上へ向かって上っていきます。
そのため、問題文のヒントの図にあるように、ヘリウム風船と二酸化炭素風船は見かけの重力の方向に一直線に並ぶことになります。
さて、この図が問題文にヒントとして与えられているので、それを理解した人は(問3)を間違えることはないでしょう。
しかし、私の経験では、これらの慣性力の問題を見かけの重力の世界の問題として捉える発想は、そのように教わらない学生にはなかなか思い浮かばないものです。
せっかくのヒントですが、その意味を理解し、応用できた学生がどのくらいいたでしょうか。今回の全国平均点の悪さから考えると、うまく応用できた学生は多くなかったのではないでしょうか。
さあ、ヒントについてはこのくらいにして、問題に移ります。
今回は、カメラの位置が変えてあります。
慣性力(この場合は遠心力)は、円の中心に向かう加速方向とは逆向きに遠心方向になりますから、慣性力(遠心力)はカメラから見ると右向きになりますね。
カメラから見ると、見かけの重力は右斜め下方向になります。
したがって、このバスの中の見かけの上下方向は上図のようになりますから、ヘリウム風船は上へ、二酸化炭素風船は下へ動き、上図のような図になります。
→[4]の答は「2」
今回はこのくらいで。
続きは次回。
では。
*タイトルを内容がはっきりわかるように変更しました。
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