電流戦争、連載2回目です。
ウェストオレンジは、エジソンが2度目に立ち上げた発明工場です。
エジソンの重要な発明は、ほとんどこの発明工場で作られています。
エジソンは直流にこだわり、ウェスティングハウスは交流がよいと判断した。どちらも、時代を象徴する発明家です。
19世紀末から20世紀初頭にかけての科学技術は「発明家」の時代。才能のある個人が次々に新時代の発明を発表し、それによって富を得て、社会も発展した時代です。
現代は個人の発明が時代を作ることはありませんので、隔世の感がありますね。
エジソンは蓄音機の発明で、すでに「メンロパークの魔術師」の称号を得るほど、世界的に有名でした。
実用的な白熱電球の開発に成功したあと、エジソンが望むものは、白熱電球を家庭に運ぶ「電力輸送」システムでした。
ところが、ここで、エジソンは致命的な失敗をします。
「わかりやすい」直流電流のシステムを基本においたため、電気事業ではライバル会社に負けてしまうのですね。
送電線での発熱(ジュール熱とも呼ばれます)は、電流量が少ないほど小さいので、どうやって送電する電気の電流量を減らせるか、が、電力の送電システムでは最重要の課題でした。
エジソンが「よくわからない」と放棄した交流システムでは、テスラという天才工学者を得て、この問題を解決しました。当時発見されたばかりの「変圧器」を利用すれば、交流の電圧を高くして、電流を小さくすることができるとわかったのです。(交流なら、変圧器を使うことでこの問題を簡単にクリアできます)
直流を愛していたエジソンはそう簡単には交流システムに方向転換することはできず、あくまでも直流にこだわります。
そのため、投資家はエジソンの直流事業をみかぎり、つぎつぎにウェスティングハウスの交流事業に乗り換えたのです。
その象徴的な事件が、アメリカの万博。
万博会場に採用される電気が、ウェスティングハウスの交流システムか、エジソンの直流システムかを調べた結果、委員会は交流システムを選びました。(当然といえば当然ですね)
この万博会場でどちらの電気が採用されるかは、今後の電気事業の覇権争いの分岐点でした。
直流システムが劣勢になっていくのを見て、エジソンはかなり焦ったでしょう。
エジソンが直流に固執した理由は、いろいろと取りざたされています。
ここでは、代表的な2つの「理由」を紹介しておきましょう。
(1)エジソンは交流が理解できなかった。
これは、エジソン自身が語っった言葉。小学校を中退した努力家のエジソンにとっては、物理理論は難しかったのでしょう。エジソンにとって、電流の向きが周期的に反転する交流は「難しくてわけのわからない電気」という発想だったようです。
彼の会社に雇われたテスラが交流の利点を熱心に説いたにもかかわらず、エジソンは直流に固執しました。
そのテスラが、ライバルのウェスティングハウスから声をかけられて交流事業を起こし、エジソンの会社の強力なライバルになるとは、皮肉ですね。
(2)エジソンは電気代の回収にこだわった。
エジソンは直流なら、各家庭に電気分解の装置を設置し、析出した金属量により、正確な使用電力を計算できると考えていました。「発明はお金にならないと意味がない」と考えていたエジソンなら、こう考えるのも当然でしょうね。
マンガを読み進むと、びっくりするかもしれませんが、エジソンは「電流戦争」に勝つために、最後の手段を用いました。
それは、交流が危険な電気だという印象操作をするため、死刑囚用の電気椅子にライバル会社の交流を採用するということです。
電気で人を殺す新語として「ウェスティングハウスする」というのを発表したのも、エジソン。
こういう発想って、危険ですね。
でも、そういうことを平気でやるのが、発明王エジソン。
エジソンは偉人伝で語られるような、単純な「立身出世した真面目な天才技術者」ではなかったのです。
この発表は当時の電気業界でも問題視されました。電気事業そのものの印象が悪くなるのではないか、と。でも、エジソンにとっては、自分の直流が認められるかどうかだけが、最重要問題だったようです。
ところで、4pの2コマめでエジソンの横に立っている人物は、ただのモブではありません。(短いマンガの都合上、詳しくは描けませんでしたが)
電流戦争でのキーパーソンの一人です。
彼については、次回の解説で触れることができると思います。
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