単位の起源〜シカ部な人おおいに語る | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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えみり「さあっ、わたしの番ね」

みすみ「メカオタクだから、どうせメカの話題でしょ?」

ひな「昔からメカってあったんですか?」

きりる「メカといっても、いろいろあるな。カラクリ仕掛けもあれば、温度計や秤みたいな計測器もある。メカの世界は広く、深いぞ。だいたい、装置の大きさを調べようとしても、今と単位が違うから、見当がつかないことが多い」

えみり「さすが、部長。わかってるね〜。古い時代の文献を読んで、どんな装置を作ったか調べるとさ、最初に壁になるのが、単位なんだ」

ひな「単位って、メートルとかキログラムとかですか」

えみり「例えばさ、ガリレオが高いところから木の球と鉛の球を落とす実験を繰り返しているんだけど、それを『新科学対話』とかで調べると、<100キュービットの高さから落とす>みたいなことが書いてある。昔の長さの単位って、キュービットが多いんだよ。でも、どのくらいの高さかイメージわかないと、同じものを作るのも難しいのよ」

ひな「あっ、わたしもわからないのがありました。親ととアメリカにいったとき、ヤードとかフィートとかマイルとか、ぜんぜんイメージわかなくて困りました」

きりる「ふむ。そうだな。一度まとめておくといいかもしれないな」

 

えみり「じゃあ、ひなのいってたフィートとかから始めようか。これはちょっと、調べたんだ」

 

 

えみり「フィートはフットの複数形だから、1フット。これは、もともと足の長さだったって」

みすみ「たしか、1フットは30センチくらいだった。足、そんなに大きい人いるのかな? 男の人で大きい人って、27センチくらいじゃない? 昔のイギリス人ってそんなに巨人だった?」

えみり「昔の単位でキュービットっていうのがある。これは肘から手の先までの長さで、1キュービットは46センチくらいなんだ。これがだいたい2分の1ヤードに当たる。だから、1ヤードは90センチくらいかな」

 

 

ひな「ええと、フットはどこへいっちゃったんですか?」

えみり「古い単位のキュービットだけど、2キュービットが3フィートと同じっていうことになっていったみたい。そうすると、1フットが30センチくらいになる」

ひな「最初にきめた長さと変わっていったんですか?」

きりる「それは、よくある話だぞ。日本でも、どんどん変わっていったというし」

 

 

きりる「長さの1尺っていのは、昔の中国で、もともと親指と人差指を広げたときの長さから生まれた単位だった。<尺>の字形が、上のイラストの手の形と似てるだろ。その頃は、1尺はだいたい、18センチくらいだった。でも、今は1尺は1フットと同じくらいで、だいたい30センチだ」

ひな「18センチが30センチって、どうしたらそんなに変わるんですか?」

みすみ「それ、聞いたことがあるじゃん。中国じゃ税金代わりに布とか、物品を収めさせていたじゃん。尺の大きさを少しずつ大きくして、よりたくさんの物品を収めさせるために、王族や貴族がずるしたんだよ。それを繰り返しているうちに、倍くらいになっちゃったんじゃないかな」

ひな「それ、ずるいです〜」

きりる「計測の単位を勝手にいじるのは、日本に限らず、権力者がよく使ってきた手だ。たぶん、どの国でも、似たようなことで、最初に決めた値から変わっていったんだろう」

 

 

きりる「1尋(ひろ)は両手を広げた長さで、1.8メートルくらい。西洋でもこの長さを1ファゾムと呼んでいたらしいけど、今は使われていないな」

ひな「1インチっていうのもありますよね」

 

 

えみり「1インチは親指の幅で、だいたい2.5センチくらいだ。1フットの12分の1が1インチで、これがちょうど親指の幅くらいになるの」

きりる「中国ではこの親指幅を1寸と呼んだ。1寸は1尺の10分の1だから、だいたい3センチくらいだな」

みすみ「ふう〜ん、1尺と1フットが同じくらいなのに、親指の幅はイギリスではその12分の1、中国ではその10分の1にしたんだ」

きりる「ふむ。西洋は12等分する文化だが、中国は10等分する文化だから、その違いが出たんだろう」

ひな「単位って、文化的な背景が関係するんですね。もっと、きちっとしたものかと思っていました。そうすると、1マイルというのも、なんか由来があるんでしょうか」

 

 

えみり「むかしの単位で、2歩分の歩幅を1パッススといっていたの。1パッススは150センチくらい。成人男性の1歩って、だいたい70〜80センチくらいだから、ぴったりね。その1000倍を1マイルと呼んだのが、マイルの起源っぽいよ」

ひな「そうすると、1マイルは1.5キロメートルくらいですね・・・あれ? たしか、1マイルって1.6キロメートルくらいだったんじゃ・・・」

みすみ「マイルも、いつの間にか少し大きめになってるじゃん。やっぱり、単位っていいかげんだね」

ひな「マイルって日本だと里って書きますよね」

きりる「似たような量だから、その漢字をあてはめているが、値はぜんぜん違うぞ。源頼朝が1里を6町と決めたっていうけど、1町は109メートルだから、この頃の1里は650メートルくらいだ。でも、徳川家康の頃には1里は36町と定められていて、何倍もの距離になっている。ええと、ざっくり計算すると、1里は3.9キロメートルだな」

みすみ「海里っていうのもあるよね」

えみり「それはnautical mileの訳で、陸上のマイルとは由来が違うの。緯度1分(1度の60分の1)にあたる海面上の距離が1海里で、1.8キロメートルくらいよ」

ひな「えみり先輩、詳しいですね」

えみり「いやいや、調べたんだよ。こんなの、覚えていられないから」

 

ひな「あのう、重さっていうか、質量の単位も同じような感じですか?」

きりる「ふむ。わたしの知っている限りだと、長さも重さも似たような状況で、地理や歴史に影響を受けているな」

 

 

きりる「中国の開元通宝という硬貨の重さを1銭とか、1匁(もんめ)と呼んだ。中国で<銭>は同じ音の<泉>で代用されることが多く、その草書体が<匁>の字となったといわれる。もんめはもともと<文目>で、硬貨1枚分の重さという意味だったんだろう」

ひな「きりる先輩は中国の歴史に詳しいんですか」

きりる「雑学だ。そんなに詳しいわけじゃない。たまたま知っていただけだ。そういえば、日本ではやはり硬貨を使って、長さの単位を作ってるな。寛永通宝の直径を1文としたので、これは1文銭と呼ばれた。1文は2.4センチくらいで、1寸の8割くらいの長さだ」

 

 

えみり「重さとか体積の単位は、すごくいい加減よ。重さのポンドはだいたい450グラムだけど、重さのトンや体積のガロンは、イギリスとアメリカで違う。結局、扱う品物ごとに単位を決めていたので、トンやガロンは何種類もあったのよ」

ひな「じゃあ、イギリスとアメリカで、おなじトンやガロンが違う値になっているんですか? 不便ですね」

えみり「(メモを見ながら)わたしたちが使っている世界共通の単位だと、1トンは1000キログラムだけど、イギリスでは1トンが1016キログラム、アメリカでは907キログラムよ」

みすみ「ぜんぜん違うじゃん」

えみり「1ガロンはイギリスでは4.5リットル、アメリカでは3.8リットルくらい」

ひな「おなじ英語圏でも、こんなに違うんですね。日本は、世界共通の単位でよかったです」

 

みすみ「そうそう、忘れないうちに、温度のこと確認しておこう。イギリスとアメリカって、日常に使う温度の単位が違うよね。ええと、華氏だっけ?」

えみり「うん。世界共通の単位はK(ケルビン)だけど、多くの国では日常的には℃、つまり摂氏温度を使ってる。°F、つまり華氏温度を使っている国は少ないの」

ひな「摂氏、華氏って、当て字ですか?」

きりる「もともとはセルシウス温度とファーレンハイト温度だからな。それを略した言い方だ」

ひな「セ氏とカ氏ってことですね・・・あれ?・・・セ氏はわかるけど、カ氏っておかしくないですか。ファ氏ならわかるけど」

きりる「摂氏、華氏は中国経由で日本に伝えられた呼び名だからな。中国ではセルシウスを摂爾修、ファーレンハイトを華倫海と書いたんだ。<華>は日本では<カ>と発音するが、当時の中国では<華>は<ファー>と発音したからな」

ひな「あー、そういうことですか」

みすみ「華氏と摂氏って、換算がややこしいじゃん?」

えみり「摂氏温度は氷の融点を0℃、沸点を100℃としているけど、華氏温度ではもっと複雑なの。ファーレンハイトはなるべく日常でマイナスの温度が出ないように、氷の融点より低い温度を0度としているから。ええと、水と氷と塩化アンモニウムの混合物の最低温度を0°F、氷の融点を32°F、人体の温度を96°Fとして決めたのが最初だって。のちになって、より厳密に定義するために、氷の融点を32°F、水の沸点を212°Fとして、その間を180等分して1°Fとしたんだって」

みすみ「それなら、換算できそうね」

きりる「カ氏温度をF、セ氏温度をCとすると、いまの定義から、

F=9/5・C+32

当然、この式になる」

えみり「そうね。セ氏温度で100度分にしてあるのを、カ氏温度では180等分してあるから。あと、氷の融点が32ずれているからね」

ひな「ええと・・・あとで、ゆっくり考えてみます」

 

 

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