鳥はなぜ空を飛ぶか〜これ、科学? | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 今回の「これ、科学?」は鳥の問題。

 鳥がどのようなメカニズムで飛ぶのかという議論については、今回とは別に、「かごの鳥」問題にかかわる、膨大な議論の積み重ねがあります。その回答を集めるだけで、本が何冊も描けそうなぐらいの量があるのです。

 そこで、今回は、「かごの鳥」問題とは別に、単独で質問された「鳥はなぜ飛ぶか」の問題に関わる意見を紹介しましょう。

 

 

Q【なぜ鳥類は進化の過程で哺乳類と違い飛べるようになったのか】2016/3年

 

 なかなか壮大で深いテーマです。

 どう答えるのでしょうか。

 

【回答】2016/3年

 まず、この問題を考えるにあたって、飛ぶことのできない鳥類について調べてみた。有名なところだと、ペンギン、ガチョウ、マイナーなものだとヒクイドリなどがあるらしい。

 同じ鳥類でも、能力の特化の仕方が違うと、飛ぶことができなくなるのではないかと考えた。

 例えば、ペンギンは生活のほとんどを水中で過ごす。

 水中での敵から逃げるために、羽根を飛ぶためではなく、水中での移動をするために特化させたのだと思う。

 ガチョウは足がとても速く、敵から逃げるために飛ぶ必要がなくなり、羽根が退化してしまったのだと思う。ヒクイドリも同様である。

 

 これと同じことが、鳥類と哺乳類の違いにもいえると思う。

 鳥類も哺乳類も、もとは同じ生き物だったが、鳥類は地上の天敵から逃げるため、また木の上にあるものを食べるため、手が発達して羽になり、飛べるようになったのだと思う。

 哺乳類は敵から身を守るために他の術を身に着けたか、他の能力が特化したことで、飛ぶ必要がなくなったのだと考える。

 

 以上のことから、自分は、「鳥類が他の哺乳類と違い飛べるようになった」のではなく、「飛べるようになった種類の生き物がのちに鳥類と呼ばれるようになった」のだと考える。

 

 余談ですが、自分の好きな曲に「進化論」という歌がある。その歌詞に「首の長い動物は生存競争のためにそのフォルムを変えて来た」というものがある。自分の願いが今は叶わなくても、構成に受け継ぐことができるのかなと思う。この考えだと、人間も飛ばないと行きられない状況になるか、飛びたいと強く望むことで、いつか飛べるようになるのかもしれない。

 

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【ひろじのつぶやき】

 逆転の発想で、鳥は飛べるように進化したのではなく、飛べるように進化したものが鳥となったというのは、深い。さすがに理系の3年生。なかなかよく考えています。

 よく「ペンギンは水の中を飛ぶ」といわれます。この回答者はそれに近いイメージを持っているようですね。

 「鳥は恐竜の直接の子孫」というのが、現在の生物学・古生物学の定説ですが、まだまだ謎は深いようです。

 「願いが進化を生む」という歌詞のテーマは、生物学的にはダーウィンではなくラマルクの考えに近い。生物学的には否定された進化学説ですが、歌の世界にはまだ残っているのですね。

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Q【なぜ鳥や虫は羽ばたくだけで飛べるのか】2019/2年他

 

 こちらは、もう少し、「飛ぶ」メカニズムに踏み込んだ質問。鳥だけにこだわらず、虫も合わせて考えることで、「飛ぶ」メカニズムの本質が、より深く追求できるでしょう。

 

【回答】2019/2年

 羽ばたいたときに羽根が空気に下向きの力を与え、その力の反作用で体が浮いているのかなと思いました。それに加えて、羽根の角度も重要なのではないかと思いました。

 飛行機は前からくる風を下に流すことで浮いているという話を聞いたことがあります。

 鳥も、空中に飛び立つ時はしっかり羽ばたいていますが、空中ではあまり羽ばたいていません。モモンガが空を飛ぶのも同じ理由だと思います。

 それから、飛ぶ物体の重さも関係すると思います。

 鳥や虫は比較的体が小さく、羽根もとても軽くできています。体の重さが軽ければ、飛び立つ時の力は小さくてすみます。

 それに、羽ばたく速さも重要だと思います。

 虫の羽ばたきは目で追えないくらい速いですし、鳥も飛び立つ時はとても速いスピードで羽ばたいています。

 先生が「昔、人も空を飛ぶことを試した」とおっしゃっていましたが、羽根の角度や重さ、羽ばたきの速度を、うまくやれば、人も空を飛べると思います。

 

 

Q【鳥にはスズメのように羽根をはばたかせて飛ぶもの、トンビのように羽根をあまり動かさないものがある。なぜそのような違いが生じるのか】1986/2年

 

【回答】1986/2年

 スズメは体のわりに羽根が小さく、トンビは体のわりに羽根が大きい。それにトンビは風の流れ(上昇気流)に乗って飛ぶのです。

 したがって、羽ばたかない場合、スズメでは(上昇気流を受ける羽根の面積が小さいので)上昇気流の押し上げる力より体重の方が大きくなり、羽根を拡げているだけでは飛べません。

 トンビでは(上昇気流を受ける羽根の面積が大きいので)上昇気流の押し上げる力の方が体重より大きくなるため、トンビは羽ばたかずに飛べます。

 

 

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【ひろじのつぶやき】

 一人目の質問者は鳥と虫を、二人目の質問者はスズメとトンビを比較しています。

 一人目は鳥と虫の共通点を論じ、二人目はスズメとトンビの相違点を論じています。

 回答者は二人とも、羽ばたく飛び方と羽ばたかない飛び方を比較することで、「飛ぶ」メカニズムを解明しようとしていますね。

 よいアプローチだと思います。

 一人目の回答者は人間が飛ぶ場合のことについても、少し触れています。

 次は、これを中心にすえた質問を見てみましょう。

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Q【鳥も地球から重力を受けているのになぜ飛べるのか。人間も鳥と同じ作りの羽根を持っていたら飛べるのか】1986/2年

 

【回答】1986/2年

 鳥は人間と違って骨の中が空洞になっているから、人間と比べると相対的に軽い体重をしている。その軽い体で軽い羽根を羽ばたかせて、たくさんの風を送り出すことによって飛んでいると思う。

 だから、人間の相対的体重を鳥なみに軽くして、同じつくりの羽根と、それをじゅうぶんに動かせる筋肉があれば、人間も鳥のように飛ぶことができるようになると思う。

 

 

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【ひろじのつぶやき】

 この回答者は人間と鳥の骨の違いや、体重や筋肉の違いに言及しています。

 これは生物を物理学的に見ることで理解できます。

 鳥と人間の「相対的な体重」を考慮に入れているのは、なかなか鋭い指摘です。

 

 体の大きさが2倍になると、体の体積や重さは2の3乗、つまり8倍になります。

 ところが、羽根を動かす筋肉の強さは断面積で決まりますから、体の大きさが2倍になると、羽根のを動かす筋肉の量は2の2乗倍、つまり4倍になります。

 筋力は体重の増え方に比べれば多くないので、体が大きくなるほど羽ばたきで体を浮かせるのは難しくなります。

 レオナルド・ダ・ヴィンチが弟子に両手で羽ばたくことのできる羽根を装着させ、建物の屋根から飛べと支持した話も有名です。人間の筋力では体を浮かせることができず、弟子は大怪我をしたと伝えられています。(伝聞ですので、真偽の程はわかりませんが)

 ライト兄弟に先駆けて空を飛んだ日本の表具屋幸吉が使ったのは、グライダーでした。

 前の回答者のスズメ・トンビ理論の通りですね。体重が鳥より遥かに重い人間の場合、相対的な筋力不足のため羽ばたき方式では飛べません。幸吉は試行錯誤の挙げ句、それに気がついたのでしょう。

 さて、次は羽ばたき理論についての質問です。

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Q【鳥は上下に羽根を羽ばたかせているが、羽根を上に曲げたとき、その分体が下に下がって飛べなくなることはない。なぜか。】1986/2年

 

【回答】1986/2年

 昔TVでやっていたけど、下に羽根を下ろした時と上にやるときでは、羽根の開き具合が変わるんです。

 一枚の紙を羽の代わりにしてみると、上から下に下ろすときは空気をそのまま下に押して上に浮上する力を得て、下から上に上がるときは空気を逃しているような。やってみてください。

 

 

Q【鳥が前へ飛んだり空中で止まったりするのは見たことがあるが、横へ飛ぶのを見たことがない。こんな鳥は存在するのか】1986/3年

 

【回答】1986/3年

 そんな鳥はいないと思う。そんな鳥がいたら気持ち悪い。だいたい物事は「気持ち悪い」「そんなものあるか」と思えるようなことは、ないものです。でも、地上ではカニがいるから、いてもおかしくはないけど。

 

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【ヒロジのつぶやき】

 「飛ぶ」メカニズムについては、最初に書いたように、「かごの鳥」問題での膨大な議論があります。「かごの鳥」問題を考える上で、鳥の「飛ぶ」メカニズムを考えることがどうしても必要になるからです。

 しかし、その膨大な議論をここで紹介するのは不可能なので、単独で出た質問とその回答を紹介するだけにとどめておきます。(以前、まとめようとして、その膨大さに気が遠くなりました)

 ところで、本当に「横へ飛ぶ鳥」はいないのでしょうか。

 ハチドリは非常に小さく体重も軽いので、虫のような、ときにはホバリングさえする、自在な飛び方ができます。ひょっとしたら、横へ飛ぶときもあるかもしれませんね。

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【蚊や蝿などの小さい虫が大雨の中でも飛び続けることができるのはなぜか】2018/1年

 

【回答】2018/1年

 人間にとっては雨が当たっても体が濡れるくらいで、たいした害はありませんが、小さい虫にとっては雨が一粒当たっただけでも、つぶされてしまうほどの威力があると思います。

 しかし、雨一粒一粒をよけることは不可能なので、虫の体にはなにか特徴があると思います。

 たとえば、体に水をはじく性質がある。そうすれば、雨が当たっても、水をはじくため、雨に邪魔されることなく飛び続けることができると思います。

 

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【ひろじのつぶやき】

 たしかに雨の日でも虫は飛べますが、その理由は、防水仕様の体だけではない気がします。

 小さな虫にとっては、空気は水のように粘性のあるものです。その中を落下する雨粒も、虫にとってはパラシュート降下のように見えるかもしれませんね。

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