LEDで光電効果実験〜<遊>のミニサークル2022.7.10 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 今日は<遊>のミニサークル。

 スギさん、林ヒロさんとぼくで、前回話題になったLEDを使った光電効果の実験をあれこれ試しました。

 

 今日もまた、お客さん登場。もう、常連です。

 

 

 ヒロさんは、この子がくるのを見越して、子供向けの実験を用意していたらしく、いきなり「ベルトバランス」を渡しました。でも、小4にはちょっと難しかったかも。

 

 思いがけず、大好評だったのが、目に関する実験。

 とくに、こちらの「みつめるニャン」には、大興奮。

 

 

 科学館などで似た原理のトリックアートを見たことがあったということで、どうして目がいつも自分の方を見るのか、その原理に興味津々。自分の体を動かし、目の動きがなぜ自分を追うのか、ずっと考えていました。

 

 基本的な原理を教えてあげましたので、家で自分でつくることもできるでしょう。

 

 

 視覚つながりでこの盲点の実験も。✕を見つめつつ、この紙を遠ざけたり近づけたりすると、ある位置で、ニコちゃんマークが消えます。

 

 

 上のイラストは人間の頭部を上から見た図で、目については断面図になっています。

 視覚細胞から伸びた視神経を一箇所にまとめて脳へ送る、いわば視神経コードの通し穴が盲点で、ここには視覚細胞がないため、光が来てもそれを検知できません。

 

 さて、今日の<遊>はLED光電効果実験の開発が主。

 

 ヒロさんは受光素子のLEDの電流をアンプで2段階増幅させる回路を組み、その出力先に別のLEDを置いたものを作りました。前回の予備実験の議論を受けて、作ったものです。

 

 ただ、受光部分も出力部分もLEDなので、実験の解釈に余分な混乱を招きそうでした。また、出力のLEDの光り方はさまざまな事情で実験ごとに異なります。

 いろいろ試し、最終的には出力部に電子オルゴールをつなぐことにしました。

 これは大正解。安定した出力で、受光部にどんな光が入ったときに反応するかがはっきりわかる装置になりました。

 こちらが、その動画。

 出力が音なので、編集らしい編集はしていません。3回にわけてやった実験を1つの動画にまとめただけいのものです。実験中の会話もそのまま収録されています。ご了承ください。

 

 

 

 光電効果は、負に帯電させた箔検電器に亜鉛板を乗せ、それに光を当てると、光の波長次第で亜鉛板から電子が飛び出してくる現象です。光のエネルギーで飛び出す電子なので、この電子を光電子といいます。

 光電効果は、19世紀までの、光を波動だと考える古典物理学では、まったく理解できない現象です。

 光の波動理論なら、光のもつエネルギーは振動数と振幅の両方により決まるので、波長が長くて振動数の小さい光でも、振幅を強くすれば(明るくすれば)エネルギーが増え、亜鉛板から電子を叩き出すことができるはずです。

 ところが、実際には、この実験ではある波長の紫外線より波長の短い光の場合は、光がどんなに弱くても光電効果が起こり、それより長い波長の光の場合は、光をどんなに明るくしても光電効果が起きません。

 これは、光を波動ではなく、電子のような粒子(つまり、光子)と考えないと理解できない現象です。

 1905年に光電効果を光子を用いて解釈したのが、かのアインシュタイン。アインシュタインは同じ年、相対性理論と分子の熱運動の論文を発表していますが、ノーベル賞受賞の対象となったのは、光電効果の論文です。(相対性理論は、当時はまだ実験による検証がなされていませんでした)

 

 このLED実験では、受光部LEDに、ある波長より短い波長の光を当てると受光LEDに電流が流れ、それより長い波長の光を当てると受光LEDには電流が流れません。当てる光の波長(振動数)によって現象がかわるのは、アインシュタインの光量子仮説を用いないと説明できません。

 この場合は、反応の起きる光の波長を受光LEDの種類を変えることで手軽に変更できます。

 赤色LEDは赤、緑、青の光に反応して電流が流れ、緑色LEDは緑、青の光には反応しますが、それより波長の長い、赤の光には反応せず、電流が流れません。青色LEDは青の光には反応しますが、それより波長の長い、赤、緑の光には反応しません。

 

 (箔検電器の実験では乗せる金属板を変えればよいのですが、表面を実験直前によく磨く必要があるので手間がかかります。また、光電効果が起こる波長が紫外線領域の金属が多いので、金属による違いがはっきり示せません)

 

 LEDの点灯する仕組みや光を受けて電流を流す仕組みは、量子力学のエネルギーバンド理論が必要ですが、光が光子で、それまでの波動理論と違って、波長だけ(振動数だけ)で光子のエネルギーが決まるということを示す目的なら、とくに難しい説明をしなくても、箔検電器の光電効果実験と同様に扱えると、ぼくは思います。(ヒロさん、スギさんは「いや、エネルギーバンドの説明は必要だ」との意見ですが)

 

 この実験については、前回の最後にやった色下敷きを使うケースも使うのもよいかなと思いますが、今回は下敷きのことを忘れていました。ちょっと思いついたこともあるので、次回にはそれも試してみたいと思っています。

 

 さて、エネルギーバンドの話をするうち、LEDのスペクトルはナトリウム灯などの輝線スペクトルと違って幅があるので、回折格子で分光することでその様子を見ることができるだろう、という話になりました。

 

 スマホのカメラレンズの前に回折格子のレプリカをテープでセットしてみると・・・

 

 

 天井の蛍光灯の1次回折光が見えますね。蛍光灯は水銀が発光しているので、水銀の出す輝線スペクトルを多く含んでいます。ガラスの内側に塗ってある白い物質(蛍光物質)がさまざまな波長の光を出すので、蛍光灯のスペクトルは電球の連続スペクトル(七色のスペクトル)に、水銀の輝線スペクトルが重なったものになります。

 

 

 部屋の蛍光灯を消し、表のガラス窓から差し込む外の光景を回折格子ごしに撮影すると、こんな感じになりました。これは、太陽光の七色のスペクトルですね。(吸収スペクトルの特徴であるフラウンホーファーの暗線は、このざっくりした実験では見ることができません)

 

 では、まず、白色LEDの光を回折格子で分光してみましょう。

 

 

 太陽光とは異なりますが、わりと似たスペクトルになっています。

 

 では、単色のLEDの出す光のスペクトルを見ていきましょう。

 赤LEDの出す光が、こちら。

 

 

 赤の領域で、かなりの幅を持っていることがわかります。よく見ると、緑の光も少し出ていますね。

 

 次は、緑色LED。

 

 

 光源が明るくて、スペクトルの緑色部分が白くなっていますが、これは撮影機器の問題。残念ながら、緑色LEDのスペクトルは緑だけでなく、(光量は少ないのですが)赤や青まで伸びています。

 

 最後に青色LEDは、どうでしょうか。

 

 

 やはり、光量の強い青は、画面では白っぽく写ってしまっています。また、光のスペクトルは緑色まで伸びています。

 

 やはり、実験は大切。実際にやってみると、LEDの出す光はそれほど単純でないこともわかりました。今後も検討を続けます。

 

 他にもいろいろ。

 

 7月24日の「科学実験お楽しみ広場」で、スギさんが司会進行をすることになったことや、<遊>の片付けの件など・・・

 

 では、今回はこのくらいで。

 

 

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