物理ネコ教室117ドップラー効果の応用 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 イラストはエルンスト・マッハ。超音速の研究をして、いわゆる「マッハ数」を導入した人です。「サイボーグ009はマッハ3で走る」とかのマッハです。

 

 でも、ちょっと物理をかじったことのある人なら、アインシュタインの特殊相対性理論の基本アイディアのもとである、物理現象の相対性を追求した人として、ご存じのことと思います。

 

 現在の物理学では、遠心力のような慣性力は、力を及ぼし合う相手がいないので、本物の力ではなく、見せかけの力である、という解釈に立っています。

 

 しかし、マッハは、回転するバケツに遠心力が働くのも、相対的に考える必要があると提唱しました。つまり、バケツが静止していて、宇宙全体がバケツのまわりで回転したとき、遠心力が生じるかもしれないという可能性です。

 

 アインシュタインに多大な影響を与えたマッハですが、その頑固さが弊害になることも。

 19世紀から20世紀にかけて、科学界では「原子は本当に存在するか否か」でもめました。ボルツマンたちが原子の実在を仮定して熱運動の理論を作ったのに対して、見えないもの、存在するかどうかわからないもの(ここでは、原子のことです)を前提とした理論は意味がない、と、当時増えつつあった原子論者を牽制しました。

 

 その原子の実在を理論的に証明したのが、マッハから多大な影響をうけたアインシュタインが1905年に発表したブラウン運動に関する論文だったのも、皮肉が効いていますね。

 

 では、ドップラー効果の応用として、ショックウェーブ、すなわち衝撃波のお話を。

 

 

 1は、現実の世界でのドップラー効果の話。実際には音源の進行方向の真正面に観測者がいることはありません。すこし離れた、音源の進行方向から見ると少し斜め方向で音を受け取ります。この場合にどう扱うかというお話ですね。

 

 2は、衝撃波(ショックウェーブ)。音の衝撃波が原因で生じる大音響のことをソニックブームと呼びますが、こちらの言葉は物理学の教科書にはあまり登場しません。

 

 衝撃波の仕組みはどの波でも同じなので、衝撃波は音波だけでなく、ふつうの水面波でも光でも生じます。ただし、光の場合は、衝撃波が生じるための条件があります。それはまた、後ほど。

 

 基本的な仕組みはあとで触れますが、日常の生活でいうと、船が進むときに舳先から後方へ向かってVの字に広がる波がありますね。あれが、海の波のショックウェーブです。

 船のV字の波が衝撃波だということは、あまり知られていないようですが、あれこそ衝撃波の典型的な姿です。

 

 3の壁反射のある場合のドップラー効果は複雑ですが、壁をあるときは観測者、あるときは音源として考えることで、比較的容易に理解できます。こちらは、書き込みプリントを見てください。

 

 

 

 4〜7はドップラー効果の練習問題です。

 とくに、5は重要。この原理は、スピード違反取り締まりや野球で休息を測るときに使われるスピードガンに応用されています。

 

 では、書き込みをどうぞ。

 

 

 

 1は、描きこみの図の通りです。

 ドップラー効果の式を考えるときは、そもそも音源と観測者を一直線で結び、音源が出す音のうち、その直線上を進む音を扱います。

 

 音源と観測者の速度も、その一直線上を進む音速と比較して式に入れることになりますから、それぞれの速度を音速方向とそれに垂直な方向の2成分に分けて扱います。

 

 2は、ショックウェーブ。これも水面波で実験してみるのが一番なのですが、前回紹介したドップラー効果のVTRの続きに衝撃波の出来る様子を撮影した部分があり、よく使っています。

 

 3の例題は典型的なものの1つです。

 

 

 4は斜めのドップラー効果の応用例です。音速方向の速度成分がドップラー効果を起こすので、D、F点で出した音は音源と同じ音になります。(ただし、光のドップラー効果の場合だと、特殊相対性理論で考えるため、真横に進む光もドップラー効果を起こします)

 

 5は、スピードガンの原理です。

 この問題の考え方はいろいろあるのですが、プリントに描き込んだように「壁は受け取った音と同じ音を返す」と考えるのが、もっとも簡単で、すっきりした考え方です。壁に魔法の音叉を持つコビトさんがいて、聞いた音と同じ音程の音を鳴らす、と考えるのが簡単です。

 

 この問題は2つのパートに分けて考えるのがよろしいでしょうね。

 

 前半は壁が受け取る音の波長と振動数の理解です。

 

 動く壁は動く音源と同じで、動きながら音を出します。この音は音源よりわずかに高い音になっています。

 

 壁のコビトさんは、魔法の音叉で、自分が聞いた音と同じ音を発します。この音を観測者に近づきながら発するので、音を受け取る観測者は、本来の音より高い音を聞くことになります。

 この音を動きながら出すので、今度は壁を動く音源として扱います。

 こうやって2段階で考えると、観測者が聞く音を簡単に求められます。

 

 この現象は電磁波でも起こりますので、スピードガンでは動く自動車や球を動く壁としてとらえ、反射してくる電磁波を受信し、もとの電磁波と重ね合わせてうなりをとります。このうなりの値から、壁の速度を逆算することができます。

 

 ドップラーが最初に発見した光のドップラー効果については、光に入ってから扱いますので、少々お待ちください。

 

 

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