物理ネコ教室116ドップラー効果 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 ドップラーは19世紀、オーストリアの物理学者。近づいたり遠ざかったりする救急車のサイレンの音程が変わるドップラー効果。イラストはクリスチャン・アンドレアス・ドップラー。この時代の科学者には珍しく、ヒゲさんではありません。

 

 高校のプログラムでは、まず音のドップラー効果を学び、もっと後になって、光のドップラー効果を学びます。

 

 でも、実際の発見順はこの逆。ドップラーはまず、連星(二重星)の出す光の波長が変化することから、ドップラー効果を思いつき、1842年に論文で発表しています。音のドップラー効果が確かめられたのは1845年。

 光のドップラー効果は波長の変化の式で表します。

 

 音のドップラー効果の実験は、列車に楽団を積んで演奏してもらい、線路の近くでその音を聴くという方法で行われました。大がかりですね。

 音のドップラー効果は、主に振動数の変化の式で表します。

 

 

 

 ドップラー効果は日常生活の中でも知られていて、救急車などのサイレン音の音程が変化するのを体験したことのある人は、けっこういます。

 体験のない人、あるいは観察力のない人の場合は、近づくときは音が「大きくなり」遠ざかるときには音が「小さくなる」と判断します。これはこれで間違いではありませんが・・・

 

 音のドップラー効果では、音が空気に対して一定の速さで進むため、音源が動く場合と、観測者が動く場合で、効果の生じるしくみが異なります。(光の場合は、空気に相当する媒質がなく、音源と観測者の運動は相対的なので、しくみはまったく同じになります)

 

 プリントにはありませんが、ぼくはいつも、一番最初に音源も観測者も止まっているときに、音源と同じ音が聞こえる理由を、ドップラー効果の説明図と同様にして、解説しています。

 音楽の演奏会が成立する理由は、演者の出す音と聴衆が聞く音が同じことが前提です。

 

 

 ドップラー効果でよくある間違いは、振動数の式だけ丸暗記して、波長の方はその振動数とv=fλの式でむりやり求める、というもの。音源が動く場合にはこのやり方では正しい波長の値はでません。

 

 

 欄外に「VTR」というメモがあるのは、いつも動画を見せているからです。

 カナダの物理教材の会社が作った非常にきれいな水波の動画があります。これは以前、ループフィルムという特殊なタイプのフィルムカセットと映写機があり、それ用に作られたものです。

 新任の頃はこのフィルムも知らなかったので、アニメーション(今と違い、パソコンもデジカメもないので、手描きのセルアニメです)を作りました。8mmフィルムでそれをコマ撮りして作ったものです。

 当時、アニメを作るのが得意だった友人に協力してもらって、撮影しました。

 残念ながら、そのアニメフィルムは手もとに残っていません。

 

 (A)(B)は、音源が動く場合のドップラー効果の仕組み図です。どちらも、音源が音を出してから1秒間、そして、観測者が音を受け取ってから1秒間の図を描いたものです。

 

 最初に出した音は、音源が最初にあった場所から進み、1秒後には340m離れたところに達します。その間に仮に100個の音波を出したとすると、2個目、3個目・・・の波は、少しずつ最初の位置からずれた場所から進みますから、音源の前方では波の間隔が狭くなり、後方では広くなります。つまり、前方では波長が短くなり、後方では長くなるのですね。

 

 この音を観測者が受け取ると、音の速さはどちらも同じなので、当然、波長の短い前方の音波の方が、同じ時間に受け取る数が多くなります。音波1つを受け取るたびに鼓膜が1回ゆれますので、音波を受け取る数の多い前方では、観測者の聞く音は振動数のより大きな音、つまり、音程の高い音になります。後方ではその逆に、低い音になります。

 

 

 (C)(D)は、音源は止まっていて、観測者が動く場合の図です。

 この場合、音の波長は前方でも後方でも変わりませんが、観測者が動くせいで、観測者の受け取る音波の数が変わります。音源に近づく感触者の場合は、じっとしているときに比べて、余分な数の音を受け取りますから、より振動数の大きい、音程の高い音を受け取ることになります。遠ざかる場合はこの逆です。

 

 (E)は仕上げで、どちらも動く場合の図になります。

 この図を描いて式を求めると、いわゆる、教科書に載っている「ドップラー効果の公式」になります。

 ちなみに、この振動数の式は参考書などでは「人は車に乗る」と覚えなさい、と書かれています。式の理解としてはなんの意味もありませんが、不思議と、こういう脈絡のない覚え方をしたものは忘れがたくなる場合があるようです。

 

 なお、毎回毎回図を描いて式を求めるのも大変ですので、公式を利用して、他のケースに応用する、というやり方もありでしょう。

 最後に示した(問)がその例題です。

 

 

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