ナポレオンのエジプト誌 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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マンガ・イラスト&科学の世界へようこそ。

 

 もうかなり昔に描いたマンガ『アウトサイダー(クロノシューターと改題)』第1部の1シーン。(*1)

 当時、すでにクフ王のピラミッド周辺は観光地化が進んでいましたが、このマンガの舞台は現在より数千年未来なので、観光街はなくなっています。

 

 ピラミッドとスフィンクスの絵は当時手に入る写真や、TV番組のVTRなどから構成しました。

 

(*1)このシーンを含む『クロノシューター』の章は、関連記事の外部リンクでご覧いただけます。

 

 それからずいぶん経ってからのことになりますが、近所のスーパーのワゴンセールで、タッシェンという出版社のイラスト本が投げ売りされていました。以前、紹介したポピュラーサイエンスなどの科学イラスト本も、そのとき買ったものです。

 

 でも、そのとき、迷わず購入したのが、こちらの本。

 

 

 ナポレオンがエジプト遠征したときに、記録として残したたくさんのイラストを本にまとめたものです。まだ写真が発明されていない時代のものですから、記録といえば絵の時代。

 

 ナポレオン遠征は軍事政治的には大失敗でしたが、文化的には大成功といえます。

 

 ナポレオンが遠征に連れて行ったのは、数学者21人、天文学者3人、技師17人、博物学者・鉱山技師が13人、建築家4人、製図家8人、著述家10人、印刷工22人を含む167名の若い学者グループ。平均年齢は25才だったそうです。

 ナポレオンはエジプト遠征を「人類の科学と芸術の発祥地」の探究ととらえていましたから、ただのおバカな皇帝ではなかったんでしょうね。

 

 

 これがそのときのピラミッドとスフィンクスの絵です。この精密さ!

 

 当時の画家のレベルの高さがわかります。

 

 スフィンクスは首から上だけが砂漠の上に出ていて、こちらの図は発掘が進んで、胴体部分が見え始めたころの絵です。(今は、冒頭のイラストのように、前足が見えるところまで掘り出されています)

 

 『アウトサイダー(クロノシューター)』を描いていたころ、この本が手もとにあったら、どれだけ楽だったかと、いまさらながら悔しい思いをしています。

 

 さて、フランス軍は、イギリス軍とトルコ軍に敗退しますが、研究成果をイギリスに渡せといわれた遠征隊の学者たちは、そうするくらいなら成果を燃やすと返答し、研究継続を認めさせたそうです。(すごい覚悟)

 

 発掘されたロゼッタストーンなどは、イギリスが持ち帰り、今は大英博物館などにあります。みんな、ありがたがって見に行ってるけど、略奪品が展示されているんですよね・・・あれ。ぼくも、ヨーロッパに物理教育国際会議にいったとき、帰り道に大英博物館に寄り、ロゼッタストーンの現物を見てきました。でも、本来はエジプトのものなので、いつまでもイギリスが持っていてはおかしいと思います。

 

 このナポレオン誌は、ナポレオンの命令で、このあと400人の銅版画家が20年以上かけて10巻製作したものです。タッシェンの本は、その銅版画を完全収録した「完全版」と銘打たれています。

 

 ナポレオンのエジプト遠征をきっかけに、古代エジプトの文化が研究されるようになり、ヒエログリフがシャンポリオンによって解読されることとなりました。

 

 この本にも、もちろんロゼッタストーンの詳細な銅版画が収録されています。

 

 

これが、一番上のヒエログリフ。

 

 

 こちらが、中段と下段。下段はギリシャ語。中段はその中間の言語で、民衆文字といわれています。このロゼッタストーンが、解読のきっかけになったのは、歴史に興味のある人ならたいてい知っているお話し。

 

 シャンポリオンが、ヒエログリフを単純な象形文字ではなく、アルファベットのような表音文字としても使われていたことを見抜いた話も有名です。ぼくは理系なのでこの方面はあまり明るくなかったのですが、シャンポリオンの逸話はカール・セイガンの科学番組『COSMOS』で知りました。

 なお、同時期にイギリスのトマス・ヤング(光の波動論を証明した物理学者)が、専門外にもかかわらず、ロゼッタストーンのヒエログリフ解読に挑戦しており、やはり表音文字として読めることを見抜いています。

 

 ちなみに、もっと後の話になりますが、物理学者ファインマンが旅先でマヤの文字の一部を暇つぶしに解読したという逸話もあります。物理学者と文字解読って、どこかでつながっているのかもしれませんね。

 

 

 この銅版画の技術はとんでもないですね。

 今では失われてしまったアートの技術といえるかもしれません。

 

 遠征隊が描いたイラストは細密画と呼ぶ方がいいかもしれません。

 

 

 うーん、やっぱり、すごいな。

 

 

 こちらの道具や装置の絵は、ただの絵描きには描けません。構造をよく理解していないと描けない図です。技師がたくさんついていっているので、おそらく技師と相談しながら作成したか、製図家が描いたのでしょうね。

 

 

 カラーの図版もあります。

 

 遺跡ばかりではなく、エジプトの生態も詳細に記録しています。虫や蛇なども詳細に描かれています。学術的な調査であったことがよくわかりますね。

 

 

 こちらは、壁画を模写して描いたものの一つ。おそらく、パンクラチオン的な格闘技を描いたものでしょうね。絵を見る限り、レスリングより、今のプロレスや総合格闘技に近い感じがします。

 

 この本をぱらぱらとめくっていると、いろいろと思いつくことが多いのですが、今回は、このくらいにしておきます。

 

 本当は、ピラミッドのデータの中に円周率が含まれている「都市伝説」の正体とか、いろいろ書きたいことも多いのですが、それはまた、別の機会にしたいと思います。

 

 では、このへんで。

 

 

関連記事

 

未来アート

 

(外部リンク)
クロノシューター 第一部 大地に臨むものたち SECTION1 廃都

 

 

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