かがくのひろば遊で応用物理学会打ち合わせ | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 久しぶりに「かがくのひろば遊」に行ってきました。

 

 今日は、シャッターが開いていました。中が見えます。なんだかすごいことになっていますね。通りかかった子どもたちが不思議そうに覗いていきます。

 

 本当はもっとすっきりした場所になるのですが、まだ持ち主の林ヒロさん夫婦がどちらも忙しく、当初想定していた状態にはなっていません。ほとんど、有志の科学実験や打ち合わせ用の秘密基地と化しています。

 

 今日は、ぼくは10月に刊行予定の『いきいき物理マンガで冒険』の帯に乗せる推薦文を書いていただけるよう、F先生(今はナイショ)に会いに行きました。ちょうど今日、こちらに来られているとの話で、直接お会いしてお願いしようと思ったのです。

 

 忙しい方なので、難しいかなと心配しましたが、快諾していただきました。

 

「今日は何の実験ですか?」

「いや、9月の応用物理学会のシンポジウムで、林さんが先進科学塾の発表をするので、その検討会だよ」

「はあ・・・」

 物理教育をなんたらすることを議論するシンポジウム。すみません、正式なタイトルをちゃんと聞かなかったので、書けません。9月中旬に名古屋の国際会議場で行われる学会です。

 そんなような発表、前にもやりましたよね?

「前のはぼく(F先生)がやったんだ。まあ、みんな、あれはよくない、これもよくないと、批評家のような発表が多くて、じゃあどうするか、という点ではなかなか意見がでない。今度の先進科学塾の発表がその突破口になるかと思っているんだが」

 

 ・・・行きがかり上、そのレポートの事前検討会に、ぼくも飛び込み参加することになってしまいました。

 

 そういえば、ずいぶん前になりますが、ぼくも似たようなテーマのシンポジウムで発表を依頼されて、やったことがあったなあ・・・と思いだしながら・・・

 

 いろいろ意見を交わすうち、現在の先進科学塾が、15年前の開始当初とはかなり違ってきて(進化して)いることも確認できました。

 

 ぼくも何回かお手伝いをしてきていますし、一度、講師もやりました。時間の都合のつくときにふらりとお手伝い(遊び)に行く程度ですので、あまり大きなことはいえません。

 

 でも、ちょっとだけ貢献できたかなと思うこともありました。

 

 講座は土日の二日間開かれるのが基本です。

 

 長い間、例えば土曜日は中学生以上、日曜日は高校生以上と、同じテーマの講座を対象年齢を変えて行ってきました。

 

 それは、設立メンバーの強い思いがあったと聞いています。

 

 高校生に(学校の授業より)もっとレベルの高い内容を伝えることで、将来科学の道に進む人材を育てたい、というようなことだったそうです。

 

 設立メンバーは、高校の教員(主に退職者)、科学館の学芸員、大学教員ですが、「高校生に」というのは、高校の教員の強い意向があったと聞いています。

 

 ぼくが講師を引き受けたとき、問題提起したのは、なぜ一日目と二日目で対象年齢を変えるのか、という素朴な問いかけでした。

 

 というのは、実際にお手伝いに来てみると、高校生以上としている日にも小学生や中学生が混じっていたからです。それは、大人の参加者が連れてきた子どもたちなんですね。

 

 講師は高校生以上の日は、はりきって、遠慮なく高いレベルの講義もやります。子どもたちはぐったり。実際、高校生以上の人たちも、半分くらいはぐったりする時間があったんじゃないでしょうか。

 

 ぼくは、これはまずいんじゃないかなと、思いました。

 

 ぼくがスギさんと組んで講座を請け負ったとき、思い切って、二日とも対象年齢を同じにしてもらいました。

 

 もともとのメンバーの間でも、この件に関しては逡巡があった頃です。

 

 同時期に開催した「ひらめきときめきサイエンス」のようなイベントにやってくる小中学生の反応を見ているうちに、高校生以上にこだわる気持ちが薄れてきたと聞きました。

 

 実際、ぼくたちが対象年齢をわけずに行った講座は、小学生も含め、意欲的に参加してもらえました。

 

 案ずるより産むが易し、ですね。

 

 反省会では、もともとのメンバーから、当初は「高校生から始めないと人材は育たない」と思っていたが、講座を重ねるうちに「高校生ではおそすぎる」と思うようになった、と打ち明けられました。

 

 ぼくたちの講座以降、どの講座も対象年齢を分けずに行うようになりましたが、それによって、講師側にも大きな変化が現れました。

 

 小中学生も含めた講座を持つと、難しい物理法則も、かみくだいて教えないといけません。専門用語を使って高校の授業のように教える、ということがなくなりました。

 

 これは、一般の参加者の方にとっても、嬉しい変化だったと思います。いくら科学に興味をもっているからといって、科学の道に進まなかったからこそ、こういう講座に顔を出したくなった方が多いわけですから、当然ですね。

 

 実験を主体にした講座なので、ともすれば工作教室みたいになってしまうのですが、あくまでも理論にこだわるのが、先進科学塾。これは、ほんとうに素晴らしいことなのだと、ぼく自身、改めて感じました。

 

 林ヒロさんが行った揚力をテーマにした講座で、講師のお手伝いで、ぼくが紙ブーメランを飛ばす実験をしたときのことです。

 

 ブーメランが戻る原理を、かなり本格的に(といっても、小学生にわかるレベルにして)説明し、その後、作り方と飛ばし方を教えて、実際に体験してもらいました。

 

 そうしたら、小中学生も含め、すべての参加者がブーメランを飛ばせるようになったんですね。

 

 これは、ぼくにとっても、驚異的なできごとでした。

 

 ぼくは高校の授業でも時間が許す限り、ブーメランコンテストをやってきましたし、小学生くらいの子どもが集まるイベントで紙ブーメランを飛ばす指導をしたこともたくさんあります。

 

 ブーメランを正しく飛ばせるようになる割合は、高校の場合は半分くらい、小学生や一般の場合は一割くらいです。

 

 これらのケースでは、時間の関係で、ブーメランの作り方と飛ばし方に特化して教えざるを得ませんでした。でも、その方式だと、成功率がすごく低いんですね。

 

 ところが、先進科学塾では、成功率が100%。

 

 これは、ブーメラン作りに長年たずさわってきたぼくにとっては、驚異的な結果でした。

 

 最初は、先進科学塾の参加者がレベルが高いからかなと思っていましたが、そうではありませんでした。

 

 普段、はぶいている理論的な説明を、きちんとしてから、実作に入ったからなんですね。

 

 ぼくたちは理論と実験を別物として区別してしまうことが多いのですが、理論と実験は自然科学の両輪で、どちらが欠けてもうまく行きません。このブーメランの例が、それを強烈に物語っています。

 

 林ヒロさんのレポートが完成して、学会での発表が終わったら、この場でもその内容を紹介したいと思っています。

 

 

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