実験・火熾し器の秘密 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 手作りの火熾し器はいろいろな体験施設にありますが、実際に試してみると焦げた粉までは出るものの、それが赤い火種とならないケースが多いですね。擦る時間やスピードが足りないのかと一生懸命やってもだめ。それは、どうしてでしょうか。

 

 1978年1月の物理サークル通信にはちゃんと「キリクズが出てそれが燃え始めるところがおもしろい」とあります。火熾し部分を拡大すると・・・

 

 

 ・・・ですね。

 

 ぼくもずいぶん前に左の図のタイプの火熾し器を作ったことがあります。

 

 回転軸の木の先にはドリルで縦に穴を開け、立ち枯れしているセイタカアワダチソウの茎を切って差し込みました。茎が減ってきたら交換できるようにです。

 サークル通信には下の板(火キリ板)は「ホウの木」とありますが、そんなものは簡単に手に入らないので、実験室に転がっていた適当な木切れ(かまぼこの板っぽいもの)を使いました。

 

 でも、うまくいきませんでした。理屈では火種が出るはずなのに、焦げた粉しか出てきません。煙は上がるのですが、火にならないんですね。(サークル通信も、煙が上がったのを火が出たのと見誤ったのかもしれません)

 

 先輩の岡田晴彦さんに相談したところ「ぼくもやったことがあるけど、木が乾燥してないとうまくいかないよ」との返事。

 

 木の乾燥?

 

 セイタカアワダチソウが立ち枯れする季節だったので、それなりに乾燥しているはずなんだけどなあと思いつつ、実験室をあっちにいったりこっちへきたり(考えるときあたりかまわず歩き回るのは生来の癖です)・・・

 

 でも、このときは、その癖が役に立ちました。

 

 うろうろしているうちに、気がついたら物理実験室ではなく、化学実験室に来ていました。そこに、赤外線乾燥機が置いてあったんですね。昔、容器などを乾燥させるのに使っていたもので、当時はほとんど使わなくなっていました。

 

 ふと思いついて、火キリ板を赤外線乾燥機で乾燥させてみました。これなら自然乾燥より確実に乾燥度が上がるはずです。

 

 それを使ってみたところ、キリクズの焦げた粉の色が変わりました。それまで焦げ茶色だったのが、真っ黒に近い色に。そして、数分続けていると、その中に赤い点が見え始めました。火種です!

 

 さっそく、それをモグサがわりの乾燥した草(用意してなかったので、喫煙者の人からタバコを一本恵んでもらってほぐし、それを使いました)に乗せ、うちわで扇ぐと火がつきました。

 

 ちょうど、社会科の歴史の授業で火熾しを見せたいという同僚がいたので、もう少し派手にするため、トイレットペーパーの横腹をカッターでえぐってそこに乾燥した草を乗せ、そこに火熾し器で熾した火種を乗せてうちわで扇ぐことにしました。

 

 炎がめらめらと上がり、大歓声。火災報知器がなるまえに鎮火させましたが、今考えるとわりと激しいことをやっちゃいましたね。トイレットペーパーを丸ごと一つ使う必要はなかったなあ・・・まあ、若気の至りということで・・・

 

 昔の人は赤外線乾燥機は持っていなかったので、おそらく冬場に乾燥したサイロのような役割をする自然の保管庫(たとえば石積の穴蔵のような)に乾燥した木を保管していたのかもしれません。

 日本のような湿潤気候の地域では、火打ち石や、落雷等山火事の火の継ぎ足しの方が有効だったでしょうね。

 

 さて、ちょびっとおまけを。

 

 今度は「みゃあみゃあNW(ネットワーク)」1996年2月より。「みゃあみゃあ」はぼく、すぎさんなどで始めたミニサークルです。下の図は、当時ぼくがいた学校の物理部の部員が描いたもの。火熾し大会の記録の一部です。

 

 

 板をじゅうぶん乾燥させておくというノウハウを部員に伝えたところ、ちゃんと火が熾きました。それにしても、何種類も作るとは、見上げたものです。

 

 

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実験・火吹き〜物理サークル通信より
 

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