実験・割れないガラスのルーツ〜物理サークル通信より | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 『いきいき物理わくわく実験』初版は1988年に新生出版から出ています。前回の記事で紹介した「割れないガラス」の実験も、この本に「Δtが命をすくう〜オートバイに乗るならヘルメット」として掲載されています。

 

 ぼくの調べた限りでは、この実験の初出は愛知物理サークル通信(1979年12月発行)の伊藤昇さんの発表。一宮工業高校の物理実験として紹介されています。(冒頭の画像)

 

 生徒実験なので、データがちゃんと取れるように、スタンドに取りつけたものさしでパチンコの玉の高さを測定できるようになっています。スタンドの足を床代わりにするのはうまいアイディアですね。

 

 通信の紹介記事によると、使用したガラスはスライドグラス。直接の衝突では高さ2〜4cmでスライドグラスが割れ、スライドグラスの下に厚さ5mmのスポンジをはさんだだけで、割れる高さが40cmくらいになると書かれています。実に10倍以上の違いが出るというのですから、驚きの実験ですね。

 

 演示実験で行うときは、もっとアバウトにやったほうが、何をやっているかわかりやすいので、ものさしを一切使いません。スポンジをはさんだだけで割れなくなり、高さを上げていってもなかなか割れないというのは見ているだけで不思議です。それに、いつかは割れる!というどきどきは、別の意味でもオモシロイ。

 

 運動量と力積の実験をもう一つ、サークル通信から紹介しておきます。


 

 こちらは、1983年2月発行の通信。演示実験ですが、外部入力端子のあるタイマーがたくさんあれば、生徒実験ができます。(むしろ、生徒実験として行った方がおもしろいかもしれません)

 

 動摩擦力が速さによらずほぼ一定とみなせる(ある範囲内での近似ですが)ことを利用した装置でもともとは衝突の際に台車が棒を押し込む距離を測り、仕事=力×距離を確認するための実験です。

 棒に乗せるおもしの本(教科書など)を2冊、3冊と増やして棒に働く摩擦力を2倍、3倍にしていくと、棒のもぐる距離が2分の1、3分の1になっていくのを見る実験です。つまり、力×距離が一定だということを見るための実験ですね。

 

 これは山本久守さんのアイディアです。同じ職場だったぼくも開発に協力しました。衝突後台車は止まるので、ガラスに当たるパチンコ球のように、運動量の変化は同じ。そこで力積=力×接触時間も同じになるだろうということで、接触時間をタイマーで測れるようにしたものです。

 それにしても、金属板をばねのように使って、押しつけられている間だけ電流が流れるようにして、それでタイマーを動かすという発想は、おもしろい。

 普通は、こんな手作りのばねで接触時間が正確に測れるのかと、思いついた途端に諦めるアイディアです。実際にやってみたら、ちゃんと機能しました。

 

 本を2冊、3冊と増やしていくと、接触時間はみごとに2分の1、3分の1になっていきます。

 

 この実験は、外部入力付きの大きなタイマー(演示実験として行う場合は大事な条件です)を使うことと場所を取ることから、横に長い教卓のある講義室・実験室でないと行えません。そこが、ネックですが、仕事とエネルギーの関係を示す実験と、力積と運動量の関係を示す実験が、同じ実験装置で行えるのは魅力です。同じ実験なのに、測定機器を変えるだけで(ものさしを使えば仕事、時計を使えば力積が測れる)物理現象の別の側面が見られるというのは、興味深いですね。

 

 

 

 

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