ガリレオとモーメント | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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ガリレオsun


 長い年月関わってきたAPCDVDの編集も終わったので、これからは身軽。さっそく、ミオくん次回作のため、ガリレオ・ガリレイ(イタリア)の著作をいろいろ読み漁る日々。

 たまたま手に入った古い中央公論社の世界の名著シリーズの「ガリレオ」・・・内容の濃さと特殊性にびっくりしました。

 普通、名著シリーズならもっとも有名な本を選ぶと思うのですが、こちらに収録されているのは、「ガリレオの生涯と科学的実績」(豊田利幸)、「レ・メカニケ」、「偽金鑑識官」の三つ。

 「レ・メカニケ」(機械論)はともかく、あとの二つは濃すぎる。(それだけに、意味のある収録ですけど)

 通常なら、「天文対話」「新科学対話」がかならず入るはず。この二つが岩波文庫にすでに収録されているというのが、出版者の裏事情なのかもしれないなあと邪推してしまうくらい。

 「天文」「新科学」の豊田訳が読みたかったなあ・・・

 そのへんは、豊田氏が書いた「ガリレオの生涯と科学的実績」という小論が補う形になっていますが・・・やはり不十分。とはいえ、物理の専門家が書いたこの章と、彼が註をつけた二つの珍しい邦訳は、貴重。ぼく個人はじゅうぶんすぎるほど楽しめました。

 「レ・メカニケ」については、つい最近寿命を全うした(?)「理科基礎」という科目の教科書にもそれが紹介されていました。といっても、ごく一部の出版社が扱っただけですけどね。

 その理由は、ズバリ「仕事の原理」と「仕事量の定義」の導入。

 【仕事=力×力の向きに移動した距離】・・・(a)

 という仕事の定義は、うっかりするともっといい加減な紹介のされ方をします。

 【仕事=力×距離】

 というような。

 しかも、その仕事量が考えられるようになった必然性については、ほとんどの物理教科書が無視・・・(というか、執筆者が知らないんだろうなと思ってしまう)

 仕事を(a)のように導入した最初の人はポンスレなんですが、その根源はもっと昔のガリレオ「レ・メカニケ」にあります。

 ガリレオの「レ・メカニケ」では仕事量を「労役」という言葉で表していますが、内容はまったく同等です。

 ただし、ガリレオの頃はまだ「力」の概念がなかったので(当然ですが、「力」の概念を確定したのはガリレオの後に登場したニュートンです)、ガリレオ自身は「重さ」の概念を力の代わりに使っています。

 でも、仕事量の概念を初めて定義したのがガリレオであることは明白。(お疑いの方は「レ・メカニケ」を全編熟読されたし)

 仕事量の概念を形成する上で、ガリレオが駆使したのは、梃子の原理。なんと、「モーメント」という言葉が「レ・メカニケ」に登場しています。

 ぼくらはつい教科書を頼りに授業をしがちなので、「昔はトルクと呼んでいたけど、最近は力のモーメントと呼ぶ」などとしたり顔で話したりしますが・・・

 とんでもない。

 最初に「力のモーメントの概念」【力のモーメント=力×支点からの腕の長さ】を作ったのもガリレオなら、それに「モーメント」という言葉を与えたのもガリレオ。

 古くて基本的な言葉だったわけです。

 科学史って、自然科学教育には非常に大きな意味があると思います。

 その辺の事情は、またいずれ書きたいと思っています。

 ※イラストに使ったのは、以前自費出版で作成した「科学者タロットカード」の一枚。ガリレオ・ガリレイ=The Sun(エネルギー)のイメージがあったので、太陽のカードにガリレオを配しました。

 ガリレオのイラストは残された肖像画(いろいろあるんですが、もっとも有名なものを使いました)をカリカチュアしたものです。たぶん、ミオくんにガリレオが登場するときは、もっと激しいキャラクター付けをして登場すると思います。ガリレオは「偽金鑑識官」などを読むと、(こと真理の探究に関しては)非常に激しく攻撃的で、辛辣な議論をしかける情熱の人だとわかります。

 だからこそ、あの宗教裁判の後でも、めげずに「新・科学対話」を完成させることができたんでしょうね。

 

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