この作品の初演時のエピソードは有名だ。黒馬を連れた騎兵隊の一団が会場に登場し、ステージ上に整列したといわれている。この作品はブラスバンドで聞くのもすばらしいが、個人的にはロサンゼルス・ギター・カルテットの演奏がとても印象に残っている。ギター4本がスーザのリズム感を際立たせ、曲の雰囲気を的確にかつ大胆に表現しいる。とにもかくにも名曲だ。
【推奨盤】

ロサンゼルス・ギター・カルテット[1994年or1995年録音]
【DELOS:DE 3163(輸)】
現在のクラシック音楽界の中で、独自の世界を確立している作曲家のひとりとして数えられるのが吉松隆である。「世紀末抒情主義」を提唱し、現代音楽の典型でもある非音楽的なサウンドとは相反する作品の数々を世に送り出している。
ここで紹介する『星夢の舞』もまた、彼独特のサウンドだ。邦楽器のために書かれた舞曲集で、横笛、尺八4,篳篥、笙、三味線、琵琶、十三絃4,二十絃2,十七絃2,打楽器2、という比較的大規模な編成の邦楽アンサンブルのための作品だ。10の短い舞曲から成り、吉松の作品らしく調性的で、幻想的な世界が繰り広げられている。時折垣間見えるロックにもジャズにも通じる雰囲気は、さながら90年代に流行ったフュージョンバンドの「ノリ」をも感じる事ができる。まさに、「和洋折衷」の極みといえる。
【推奨盤】
板倉康明/吉村七重(二十絃筝)/日本音楽集団[2006年3月録音]
【Camerata:CMCD-28116】
1977年の全日本吹奏楽コンクールの課題曲であり、今では吹奏楽愛好家の中ではバイブル的な存在になっている東海林修の『ディスコ・キッド』を満を持して紹介する。
吹奏楽コンクールの課題曲にしては破天荒なまでにノリがよく、エレキベースとドラムスが駆使されるポップス調の作品だ。この作品の録音はいくつも残されているが今日はあえて2種類紹介する。
まずは佐渡裕が指揮するシエナ・ウインド・オーケストラの録音。ライブ盤ということもあり、また、日本を代表する演奏家ということもあって、その演奏の技術とパッション、魅せ方と聞かせ方は天下一品だ。バーンスタイン仕込みの佐渡ならではのダイナミックな演奏は、ライブならではの高揚感を伴ってボルテージは最高潮に達する。それがこの演奏の一番の魅力だ。
もうひとつ・・・、加養浩幸が指揮する土気シビックウインド・オーケストラの録音を紹介する。日本屈指のアマチュア吹奏楽団で毎年コンスタントに録音を残しているバンドだ。云わずと知れた全国大会の常連であり、その技術とアンサンブル能力はアマチュアの域を超越したものがある。そんなバンドが奏でる『ディスコ・キッド』は、予想通りに上手い。折り目正しい楷書的な演奏ではあるが、理性的なパッションの表出がスタジオ録音であるがゆえと感じる。下手なプロの演奏を聴くくらいなら土気シビックの演奏に大枚を叩いたほうが無難な気がする。そんな気にさせてくれる彼らの演奏だ。
プロアマそれぞれ日本を代表するバンドで聴く『ディスコ・キッド』。吹奏楽の楽しさを存分に味わえるものであるのは確かである。
【推奨盤】
佐渡裕/シエナ・ウインド・オーケストラ[2004年12月録音]
【avex:AVCL-25036】
【推奨盤】
加養浩幸/土気シビックウインド・オーケストラ[2009年2月録音]
【CAFUA:CACG-0131】