現在のクラシック音楽界の中で、独自の世界を確立している作曲家のひとりとして数えられるのが吉松隆である。「世紀末抒情主義」を提唱し、現代音楽の典型でもある非音楽的なサウンドとは相反する作品の数々を世に送り出している。


ここで紹介する『星夢の舞』もまた、彼独特のサウンドだ。邦楽器のために書かれた舞曲集で、横笛、尺八4,篳篥、笙、三味線、琵琶、十三絃4,二十絃2,十七絃2,打楽器2、という比較的大規模な編成の邦楽アンサンブルのための作品だ。10の短い舞曲から成り、吉松の作品らしく調性的で、幻想的な世界が繰り広げられている。時折垣間見えるロックにもジャズにも通じる雰囲気は、さながら90年代に流行ったフュージョンバンドの「ノリ」をも感じる事ができる。まさに、「和洋折衷」の極みといえる。

【推奨盤】
乾日出雄とクラシック音楽の臥床
板倉康明/吉村七重(二十絃筝)/日本音楽集団[2006年3月録音]
【Camerata:CMCD-28116】