妄想吹奏楽部 (連載その3) | 好きなコードはEadd9

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錦戸亮
スノストトラジャ7ORDER
デビューしてからの彼ら皆通りました
(今はストトラ)
そして
7人→6人の関ジャニ∞の記録

本日2個目です。

 

 

 

以前アップした、

妄想吹奏楽部の続きです。

すごくひさしぶりになってしまった。。。

 

 

 

 

おっとその前に。

 

同じく妄想仲間wwのUさんが、これまたすばらしいスピンオフの物語をアップしてくれまして。

 

これがまた、すっごいいいんですよ。。。

 

ああ。。。青春。。。。。。。

【 妄想 】あるテニス部員の話 序幕

(この後、1〜8&終章まであります!!)

 

 

 

 

 

 

前回までのお話。

 

妄想吹奏楽部 (連載その1)

妄想吹奏楽部 (連載その2)

 

 

こちらがその「まとめサイト」です。

キャラクター設定、

各人の担当楽器、

演奏会でどの楽曲を演奏するかまで、細かく妄想が進んでおります(笑)


 

 

 

フランスにいらっしゃるMさんの原稿をお預かりして、私がブログにアップさせていただくことになっております。

 

 

 

 

 

 

 

では、

続きです。

 

 

 

 

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この星が輝く理由

 

 

 今日の6限目は委員会の集まりがあり、どの委員にも属していない者は帰宅しても良い事になっていた。

 特に何にも属していなかった大倉忠義はふらふらといつも通り音楽室に向かっていた。

第一音楽室を覗くと、まだ8人程しか集まっておらず、トロンボーンの部員は一人もいなかったので、そのまま隣りの第二音楽室に入り、隅に組まれたまま置いてあるドラムセットに座った。近くの棚に手を伸ばし、ドラムスティックを握ると、足元のバスドラムをひとつ踏み込んだ。

 ドッ。

とても切れのよい音がお腹の下に響く。息を吸い、吐きながら今度は優しくバスドラムを数回踏み込む。

 トントントントントン・・・。

 「大倉はリズム感あるから、きっとドラムが出来るって。」

 バンドを組もうと安田に誘われた時に言われた言葉だ。大人になったら、兄弟の長男としてオヤジの会社を継ぐのであろうと漠然と思って生きていた大倉にとっては、バンドというモノがとても新鮮であった。

 もちろん、これでメジャーデビューしてやる!何て丸山の言うように笑っては言えないし考えてもいないが、これが青春の一コマになるのなら悪くないと二つ返事で初めた。

どんな事も続ける事は簡単ではない。それでも安田の目が良かったのか、大倉はどっぷりドラムにハマり中学最後の文化祭では安田、丸山とさまざまな曲をコピーして披露した。友達にゲストでセンターボーカルを頼んだ後夜祭では、体育館が揺れる程の盛り上がりを見せた。

 三人共に同じ高校への入学が決まった時、忠義は自然とまたバンドが出来ると思っていた。軽音楽部に揃って入部するはずが、あの日安田は何を決心したのか「吹奏楽部に入ろうと思っている。」と言い、丸山と二人で驚きを隠せなかった。

 入部体験で軽音楽部には顔を見せることなく、三人でそのまま吹奏楽部に入部し、楽譜の読み方が今ひとつ分からないまま今年で二年目。半分気の迷いか、もしくは何かタイミングが狂ったのか、その後三人でバンド演奏することはなくなった。

 大倉は、左足をハイハットにかけ軽く何度か踏み込み感触を確かめると、慣れた手付きでスネアを小気味よく叩き出した。初めて叩いた時は、何と忙しない楽器だと思い、叩く順番のようなものを必死に追いかけていたが、ある時から音とリズムの波長を感じとれるようになり、慣れてくるとリズムを刻むのがだんだん楽しくなった。

 足元で表拍を取りながら、手元で裏拍を取りつつ、スネアとタムで効果を付けたし、思い出したようにシンバルを鳴らす。いつからかドラムを一人で叩いていると、それ以外の事を考えずにいられるとても良い場所になった。さらに安田と丸山がいたらどんなに楽しいだろうと、そんな事を考えながら右側の壁にある音楽室の窓の外をぼんやりと眺めながらドラムを叩いた。

 「ドラム、上手いんやね。」

 そうぼそりと声をかけられても大倉はすぐに反応できなかった。あれ?誰か話しかけた?ドラムを叩く手を止めずに、何拍か考えてから体を左側に捻ると、第一音楽室に続く扉に寄りかかるように渋谷すばるが立っていた。目が合って、ドラムを叩く手を止めると、ドラムと忠義を交互に見ながら猫背のまま、渋谷はゆっくり近づいて来た。

 「何の曲、やってたの?」

 やってたの?のタイミングでだるそうに右手でドラム指すと、忠義をじっと見つめた。

 「ズッコケ男道ってやつです。」

 「ふーん、忙しない曲やね。」

 理解したように今度はふむふむと小さく頭をふると、ドラムから少し距離をとったまま渋谷は視線を落としてしまった。

 なんか気まずいなぁ。忠義もまた手持ちぶさたになってしまい、手元に揃えたバチをいじくりながら、どうしようかと考えていた。まだトロンボーンを担ぐ気にもなれず、もう少しドラムを叩いていたかったのだが、小さな先輩は放心したように先程の場所でじっとしたまま何を考えているのか分からない。

 忠義は、仕方なしに座っていた椅子から体を起こそうと、バチを置きながら椅子を後ろへずらすと、音に反応するおもちゃのように渋谷が「あっ」と小さく声をあげ、忠義を見つめた。

 何事かと忠義は驚いたが、この小さな先輩が何か言いたいことがあるのかとしばらく黙っていることにした。しばらくと言っても長い時間ではない。ただ、渋谷が忠義を見ているようで視線が定まっていないこの何かを考えたままの表情に変化が現れるまで待とうと思っただけである。

 案の定、渋谷はまた「あっ」と言って我を取り戻すと

 「もう一回叩いてくれへん?」

 とドラムを指した。

 「はぁ。」

 言われた事は理解できたので、こくりと首をかしげるような返事をしたものの、いったい渋谷が何をしたいのか分からなかったので、忠義はゆっくりと腰を下ろし、バチを掴んだまま頭をきょろきょろと渋谷から音楽室の壁、手元からスネア、最終的にはバチを持った右手で頭の後ろをポリポリ掻きながら渋谷へ視線が戻った。

 渋谷は子供のように笑っていた。声は出さずににんまりと、欲しかったおもちゃを買ってもらえたように、とても嬉しそうだった。

 「えっと、さっきのやつでイイですか?」

 笑っているのにつられて忠義もはにかむように笑っていまい、少し恥ずかしくなってしまったので、うつむきながら椅子をドラムへ近づけ渋谷への視線を外した。

 ドラムとの距離を確認するために、いつものように軽く叩き始めると

 「あ、待って。」

 渋谷が右手で忠義を制しながら、左前のズボンのポケットをごそごそと空いた手で探り、取り出したのは銀色に輝くブルーハープであった。

 忠義は思いもよらない事が起きたため、あっけにとられたまま渋谷を見つめた。

 ブルーハープを引っ張り出して右の掌でごしごしと吹く位置をこすり、両手で抱え込むと、ふぁ、ふぁ、ふぁーっと音が出る事を試し、一人でまたニンマリと笑った。

 手元に落としていた視線を忠義にむけると、準備はエエよと言わんばかりに見つめ返し、コクコクと演奏を促すように頭を振った。

 忠義は無意識のままバチでカウントを取るとドラムを叩き始め、渋谷は知ってか知らずか、この曲の前奏部分に差し掛かると音を爆発させるように演奏に加わった。

 その演奏がとても自然で、気が付くと忠義はテンポを速めて渋谷を試すように叩いていた。

 「この人、本当にセンスがイイ。」何がと問われたら瞬時には答えられないが、忠義は日ごろから感じていた渋谷の天才的な部分に今一度触れ、興奮していた。

 連続して奏でられるトリルは16ビートを無視して唸るように乗降を繰り返す。

 きっと感性が鋭いのであろう。感覚的に全てを掌握し、常に最善のものを発信することのできる渋谷は、持って生まれたモノに加え、経験から積み上げられたありとあらゆる技法をその場その場で使い分けているのだ。きっと本人には自覚がないのかもしれない。忠義は演奏しながらも渋谷をそう冷静に分析していた。

 渋谷も試すように目元で忠義を煽ってくる。その行為が無性に嬉しくなって、忠義はぴたりとドラムを止めると、一泊おいてドラムをフリーで叩く。

 足を広げ、前かがみでオラオラと渋谷は忠義を煽る。その目はとてもキラキラしていた。

 忠義が両のシンバルを交互に叩き合図を送る、渋谷もフルートの時と同じようにソリを吹きだした。いったい何種類のビブラートを披露されたのかは分からない程に渋谷は狂ったようにブルーハープを演奏した。

 何小節たったかはどうでもいい。忠義は自然と歩幅を合わせるようにまたドラムを叩いていた。

 最後に、渋谷が伸ばした音に添えた右手でパタパタと演奏の終盤をかもすと、忠義も大きくシンバルを叩いた。

 ダダン!

 ドラムが切れる音とどんぴしゃりでブルーハープを吹ききり、忠義もシンバルを両手で止めた。

 渋谷は「イェーイ」とシャウトし、目を閉じたまま肩で数回呼吸を整え、思い出したようにまたキラキラとした笑顔を向けた。忠義も顔が崩れるくらいに笑っていたのだろう、渋谷は「よかったよね。」と投げかけるように笑った。

 数人の拍手が聞こえて初めて気がついたが、第一音楽室に続く扉には後輩が集まっていて、感動したと言わんばかりに手を叩いていた。

 そして、音楽室から廊下に通じる校庭側の扉にも二人の女子生徒が上半身だけを覗かせ、こちらに向かって興奮気味に拍手をしていた。ドラムから扉まで距離はあったが、その女性達が吹奏楽部員ではないと気付いた忠義は不審な目を向けてしまったのかもしれない。大きな瞳をキラキラと輝かせ、うっとりと渋谷を見つめていた方の女性がハッと気が付き、もう一人の大柄な女性の肩をバシバシ叩いて、あっちに行くわよと言わんばかりに扉から消えた。その大柄な女性も忠義に気が付くとビクリと肩を揺らし、ぎこちない笑顔を作りながらウインクをよこしてきた。どこか丸山に似て気持ち悪い。と忠義は思った。

 そそくさとひっこむように音楽室を後にした人物などどうでもよい。それよりも忠義は、この場に安田と丸山がいたらどんなに楽しい事だろうと、無意識にそう考えていた。

 自分が思っている以上にバンドを楽しんでいた事に初めて自覚した。

 忠義は、目の前がぐらんと歪むような感覚にとらわれ、焦点が定まらないからか座っているのに倒れそうになる。

 あれ、結構ダメージがデカいのか・・・

 自分の事なのに、まったく現状が理解出来ない。そうか、今まで将来の夢を描いても心のどこかでは、いつかオヤジの後を継ぐのだろうと漠然と思っていた。

 バンドも、安田からの誘いで始めたけれど、それはいつか終わるものと思っていた。いつもそう思っていたはずなのに、今手元に持ったバチを手放せずに放心している。

 やりたい事は誰でもやれるものではないじゃないか。

 でも、やらされている事をやっている自分はきっと・・・

 「大倉。」

 突然声をかけられて___突然と思ったのは忠義が放心していただけで、対して時間はたっていなかった___手元のバチを取り落してしまった。

 「はぁ、い?」

 「またやろっ!」

 そう言って、渋谷はにっこりと少年のように笑った。

 あんまりにも渋谷がにっこり笑うのに驚きもあったからか、忠義はこくりと頷くことしか出来なかった。

 それでも渋谷にはその返事で十分とばかりにもう一度笑うと、第一音楽室の方へ向きを変え「練習はじめるで。」と手を叩きながら、集まった後輩を散らすように消えていった。

 忠義は椅子を引きながら体を前に倒して転がり落ちたバチを探した。ドラムの横に綺麗に八の字を書いて落ちていたそれを見て忠義はふっと笑ってしまった。

 「楽しかった。」

 それは自然と口からこぼれ落ちた。安田と丸山は今どうしているのだろう。今の状況をどう思っているのだろう。

 自分はトロンボーンという楽器を与えられたから吹いていたのかもしれない。現にいま、ドラムプレイは楽しかった。いや、渋谷が居たから楽しかったのか。いったい自分は何を考えて生きているのだろう。

 この気持ちはなんだろう、焦燥感というか喪失感というか、やりきれない不安と不満が頭の後ろにどっかりと居座っているような気がする。

 忠義は、こめかみの痛みを紛らわすように顎を上げ、首を後ろに大きくそらし、左回りで顔を正面に戻すと、正面にある扉を右から左へ、廊下から第一音楽室の方へ先程の女子生徒二人が場を取り合うように隠れもせずに通り過ぎるのが見えた。

 きっと渋谷のファンか何かであろう。

 そうやって、何かに情熱を向けられる人が心底羨ましくなった。

 

 

 

 

 

続く。