フェイブルマンズ(2022) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 フェイブルマンズ(2022)

 

 

 

 

スティーヴン・スピルバーグの自伝“的”作品。

スピルバーグ本人をモデルにしたフェイブルマンズが映画を撮るという夢に向かっていく物語です。

 

スピルバーグの史実的内容は、先日レビューしたドキュメンタリー『スピルバーグ!』の方が事実に即していると思いますが、ドラマ的にはやっぱりこちらに軍配が上がる。

 

幼い頃両親に連れて行ってもらった映画『地上最大のショー』を観て映画の素晴らしさを知ったフェイブルマンズ。

 

8mmカメラをプレゼントしてもらい(8mmといってもフィルムです。ビデオテープじゃないです)、家族の生活などを撮影していくうちにその楽しさに虜になり、ついには友人たちを多数集めて“作品”を作るようになる。

その撮影センスと編集技術で、作品は好評を得るが、現実と虚構の世界の狭間の恐怖に入ってしまった彼は次第にカメラを回すのを恐れるようになり・・・

 

スピルバーグの作品は、物語の少し先を観客に予想させながら進めていくのが特徴でそれがとてもうまいのは相変わらずです。

 

観客が、「こうなればいいな」とか「こうなったら悲しい」とか「こうなったらやばいよ」という心理をうまくつきながら、その通りになれば観客はカタルシスを感じるように作っている。

 

主人公に訪れる様々な試練や困難をはねのけて夢に向かっていくストーリーだから気持ちが悪くなるはずがない。とても心地よい仕上がりになっています。

 

映像が人の心を動かす。

映画芸術の真髄が実にうまく描かれてましたね。

ただ、ユダヤ人である主人公がいじめられたりする場面は、たとえそれが事実だったとしても類型的だったかな。

後半物語を端折りすぎたところも少し残念だったね。

もっと時間をかけてもいいから後半を充実させてほしかった。

 

でも、クライマックスで主人公が映画の神様、ジョン・フォード(まさかデヴィット・リンチが演じるなんて驚いた!)と出会うシーンの見せ方の上手さはさすがだなと思いましたね。

駅馬車』『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『三人の名付親』『リバティバランスを射った男』etc...

 

フォード監督が監督した数々の名作のポスターを見渡しているときの主人公の表情。こちらまで胸が高まるいいシーンでした。

 

自分の思い出と両親に捧げた作品だから、ちょっとおセンチが過ぎたきらいもあるけれど、スーパーヒーローも破壊光線もエイリアンも登場しない本作・・・好きです。

 

 

『フェイブルマンズ』The Fabelmans(2022)米

スティーヴン・スピルバーグ監督 151分

2023年3月日本公開