パスポートサイズ
CCD-TR55
家庭用VTRの画期的作品だった、ソニーの8mmハンディカム“CCD-TR55”通称パスポートサイズ。
ソニーの本機に対する気合の入れ方は相当なもので、大阪の家電量販店の映像担当者だった私らを新幹線で岐阜羽島にある工場まで招待してくれました。 平成元年の出来事です。
それまで家庭用ビデオカメラというと、大きくて重くて操作も複雑だった欠点を全て改良した製品で、まだ市場に出回る前の試作機を手にした時は衝撃で、これは必ず売れる!と確信したものです。
ソニーはβタイプ家庭用ビデオデッキのシェアをVHS連合にコテンパンにやられてしまったこともあり、まさに社運を賭けた製品でした。
予想通り商品は売れまくりで常に在庫不足の状態が続いたものです。
慌てたVHS陣営は急遽VHSテープをコンパクトサイズにしたVHS-C仕様のビデオカメラを送り出しますがやはりソニーは強かったです。
パスポートサイズは小型で軽量だったために、手振れが発生するという欠点をついた“ブレンビー”という商品をVHS-Cサイドのパナソニックが発売しました。
(CMには鈴木保奈美さん)
が、手振れ補正モードを使用すると画質が劣化するという欠点もありソニー優位は変わらず、パスポートサイズはステレオ録画が可能な高品質版のTR-75や廉価版TR-45とバリエーションを増やしていきました。
現在使われている家庭用、プロ用問わず全ての製品がパスポートサイズTR-55のコンセプト
を受け継いでます。
この製品の優れたところは、過去の家庭用ビデオカメラの不満だったところを、機能や性能を一切妥協することなくまさに一から商品を作り上げたというところです。
初めて手にした時の軽さ、ビジュアルの衝撃は今でも忘れません。
他社もソニーの独走を許すまいと高画質化や高音質を低価格で提供するようになって、この分野の商品の進化と発展があり、写真から映像に思い出を残す媒体が変化していきました。
8mmビデオ対VHS-Cの家電戦争は、我々文化の進化に大きな役に立っているのです。
家電戦争は、有名な家庭用ビデオ規格を巡ってのベータ対VHSや、電子レンジの、シャープ対パナソニック対決など実に興味深いエピソードがあります。
そのお話はまたいずれ・・・