こんにちは、園庭研究所の石田です。
6月に入り、「暑さ」の問題がにじり寄ってきていますね。
私たち大人が子どもだった頃は、7ー8月でも暑いと感じつつも、それほど苦とせずに外で遊べたのではないでしょうか?
けれど近年は、地球温暖化によって気温が少しずつ高まり、夏場の外遊びが厳しくなってきています。
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従来園庭は、広いグラウンド(ひらけたスペース)に加えて、脇に遊具や樹木が設けられている形でした。
この形だと、端の方に行けば木陰がありますが、もっと多く活動する中央部のグラウンドは、夏場は暑くてたまりません。
「健康」とは程遠い環境となってしまいます。
ただし、園庭や校庭を利用するのは従来は、特定の時間の「体育」や「運動」、「休み時間」や「自由時間」といった特定の時間での利用が多かったため、日陰が少なくてもそれほど大きな問題になりませんでした。
けれど、子どもの心身にとっての園庭の意義が見直されつつある今、子どもたちがたっぷりとした時間の中で、どんな時でも十分に活動できる園庭環境が求められています。
(園庭環境と子どもの育ちについての先行研究については、こちらで取り上げています。→ 園庭での育ち1)
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では、夏場の暑さに対して、園庭環境としてどんな工夫ができるのでしょうか?
まずは、樹木や日よけシート、テント等により日陰を園庭全体に点在させたり、多くの面積を覆うことです。
加えて、ベンチやデッキなど、休憩したり穏やかな活動ができる場所を設けることです。
例えば、関西学院幼稚園さん(兵庫県)は、典型的なグラウンド型だったところを、刈った草を地面に撒いて堆肥化して地面の健全化を計りながら、様々な樹木を植えられて、森のような園庭にされました。
紫野幼稚園さん(京都府)では、ひらけたスペースはあるのですが、脇の空間を活かして林のような空間にされています。
井上幼稚園さん(愛知県)は園庭中央部に広い築山を作って、様々な地域由来の植物を植え、里山のような空間を作られています。
また、かほる保育園さん(山梨県)は、園庭全体に樹木を点在して植えられており、各遊びスペースに木陰ができます。
くらき永田保育園さん(神奈川県)では、日よけシートをつないで、園庭全体を覆われています。
大森西保育園さん(東京都)は公立園のため大きく環境を改変することは難しいのですが、テントを園庭の中に数カ所設けられています。
そして今年は、日よけシートも組み合わせて、子どもの動線を考えて日陰の場所と日当たりの場所を設けられています。
私はまだ出会ったことはないのですが、ひらけたスペースの中に樹木が点在する、という形も良いのではないかと思います。(ボール遊びや追いかけっこなど広さを活かした遊びであっても、子どもならきっと上手く樹木をよけて動くだろうと思います。)写真は公園ですが、こんなイメージ?
くらき永田保育園の園長先生のお話では、「紫外線防止の意味もありますが、この日よけを使って雨を楽しんだり、影を楽しんだり、さらに上にボールなどを投げて楽しんだり日よけという環境に子どもたちが働きかける姿が面白いんですよ」とのこと。
お日様や影、雨、きっと風も。こんな風に空とつながって楽しめる空間づくり、素敵ですね。^^
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【園庭や幼児と自然のについての著書】
『園庭を豊かな育ちの場に:質向上のためのヒントと事例』
園庭園庭全国調査に基づいて、園庭での保育・教育の質をより高めるための視点や工夫をご紹介しています。面積が小さな園や制約がある園での工夫や、地域活用の工夫もご覧いただけます。
* 2019こども環境学会賞【論文・著作賞】を頂きました。
『森と自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック』
石田は以下を担当させていただきました。→第1章5「幼稚園施設整備指針と園庭調査を踏まえた屋外環境のあり方と自然」東京大学Cedep園庭調査研究グループ/第1章8「幼稚園教育要領等の5領域に合わせた先行研究」北澤明子, 木戸啓絵, 山口美和, 石田佳織
『保育内容 環境 第3版』
石田は第6章4節「自然環境と持続可能な社会」を担当させていただきました。