暑くなる季節に向けて2〜樹木の温熱環境緩和効果〜 | 心と体と学びをはぐくむ園庭を

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こんにちは、園庭研究所の石田です。

「夏場の暑さに対して、園庭環境としてどんな工夫ができるのか?」

前記事に続き、植物の温熱環境緩和効果についてご紹介したいと思います。→前記事「日陰をつくろう

 

 

 

 

植物の緑陰による温熱環境緩和効果は、たくさんの研究から明らかにされています。

 

人にとっての温熱環境には、外的要因は以下の3つが関わっています。

①風の流れや速度、②気温、③湿度

 

 

樹木の有無、樹形、地面素材(アスファルト、砂地、草地など)、壁面緑化の有無など様々な角度から研究が行われています。

 

その中でも特に、樹木による大気の冷却効果が大きいようです。

 

 

その仕組みは以下です。

 

前記事でご紹介したように、樹木は木陰となり、太陽光を遮ってくれるため木の下は涼しくなります。

 

さらに、樹木は根から水を吸い上げ、葉から水分を蒸散させています。

 

この蒸散時に水は液体から気体になるのですが、液体から気体になる際に周りから熱を奪います(=気化)

 

水1g蒸散するのに、600calの熱が奪われるそうです。

 

こうして樹木周りの空気は冷やされ、冷えた空気は重いため降下し、地表面にも冷えた空気が届きます。

 

 

また、水分を含んだ空気は、含んでいない空気より軽いため、蒸散によって水分量が多くなった木の周りの空気は、上昇していきます。

 

特に太陽の光がよく当たる南側は、蒸散が起こりやすく、また空気も温められ易いため、上昇気流が起こりやすくなります。

 

一方で日が当たりにくい樹木の北側は、温度が低めです。

 

このため、樹木の南側の空気は上昇し、北側の空気は下降し、この両者の流れによって、樹木下には涼しい空気の流れ(そよ風)が起きます。

 

 

ただし、樹木、特に葉が茂る部分は、風速を低下させます。

 

風速は涼しさに関わってくるため、風速が低下すると暑く感じやすいんですね。

 

ですので、特に樹木が広い面積で存在する場合は、密に植えない、風通しの良い剪定をするなど、配置や剪定に気をつける必要があります。^^

 

(続きます)

 

 

<参考文献>

・甲斐徹郎 他(2004)「まちに森をつくって住む」. 百の知恵双書

・吉田伸治(2008)「樹木の植栽が都市の風通しや温熱環境に及ぼす影響」日本風工学会誌

・枦元裕梨 他(2007)「実測に基づく夏季の樹木による温熱環境改善効果」. 日本建築学会九州支部研究報告書

・小野剛司 他(2005)「乱れ強さを考慮した人体の平均対流熱伝達率の予測式による屋外温熱環境評価」. 日本建築学会関東支部研究報告書

・吉田伸治 他(2008)「樹木モデルを組み込んだ対流・放射・湿気輸送を連成解析による樹木の屋外温熱環境緩和効果の検討」. 日本建築学会計画系論文集

・山田宏之 他(2000)「異なる地表面状態の屋外空間における夏季暑熱環境の評価」. ランドスケープ研究

・吉田伸治 他(2008)「対流・放射・湿気輸送を連成した屋外環境解析に基づく緑化の効果の分析」. 日本建築学会計画系論文集

・橋田祥子 他(2003)「芝生化された小学校校庭の夏季温熱環境評価」. ランドスケープ研究

 

 

園庭研究所 代表 石田佳織

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園庭園庭全国調査に基づいて、園庭での保育・教育の質をより高めるための視点や工夫をご紹介しています。面積が小さな園や制約がある園での工夫や、地域活用の工夫もご覧いただけます。

* 2019こども環境学会賞【論文・著作賞】を頂きました。

 

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石田は以下を担当させていただきました。→第1章5「幼稚園施設整備指針と園庭調査を踏まえた屋外環境のあり方と自然」東京大学Cedep園庭調査研究グループ/第1章8「幼稚園教育要領等の5領域に合わせた先行研究」北澤明子, 木戸啓絵, 山口美和, 石田佳織

 

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