暑くなる季節に向けて3〜樹木等自然景観による、心理的緩和効果〜 | 心と体と学びをはぐくむ園庭を

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こんにちは、園庭研究所の石田です。

 

「夏場の暑さに対して、園庭環境としてどんな工夫ができるのか?」

 

前記事・前々記事に続き、樹木など自然物の視覚的刺激による温熱感覚への影響についてご紹介したいと思います。→これまでの記事「日陰をつくろう」「樹木の温熱環境緩和効果

 

 

 

前記事では、樹木があることで温熱環境が緩和される効果についてご紹介しました。

 

さらに。

視覚的に植物があることにより、心理的に、暑さや寒さに対する感覚が緩和されることが明らかにされています。

 

 

樹木など自然物で覆われた地点(自然景観地点)では、建物やコンクリート・ブロック舗装など人工物で覆われた地点(人工景観地点)とを比較したところ…。

 

1)自然景観による視覚刺激により、人が感じる温冷感の中立温度が3.5℃程度低くなり、温熱感覚が緩和される。(中立温度=被験者にとって、暑くもなく寒くもない温熱的に中立な温冷感申告をした平均皮膚温度)

 

2)自然景観地点では、皮膚温が上昇しても快適感の低下が小さい。(一方で人工景観地点では、わずなか皮膚温上昇でも快適感が不快側に変化する傾向があった。)

 

また、樹木が視界に数本入るだけでも、夏季には暑さに対する感覚を緩和することに加えて、冬季には寒さに対する感覚を緩和するようです。

 

 

 

そして、もう一つ興味深い結果があります。

 

夏季の温熱環境刺激に対する人体の許容限界は、室内空間でも、屋外空間での方が高くなる(暑さを許容しやすくなる)ようです。

 

これは、夏季の屋外空間では快適さに対する期待値がそもそも低く、快適な温熱環境ではないと判断しているために、温熱環境への許容度が上がると考えられるようです。

 

この結果からは、夏季には屋外で過ごすことで不快感を感じにくい可能性が示されています。

 

また、暑さへの許容度が高まる屋外環境で過ごすことで、結果的に暑さに強い体を育てていけるのではないでしょうか?

 

 

「暑いから外には出ない」ではなく、積極的に日よけや緑陰、休憩スペースを園庭に設けながら、夏場でも子どもたちが外で伸び伸びと過ごせるように、ぜひ楽しみながら工夫してみて頂ければと思います。^^

 

 

<参考文献>

・藏澄美仁 他(2011)「屋外空間における環境刺激が人体の温熱感覚に与える影響」. 日生気誌

・宮本征一(2008)「樹木の緑という視覚刺激が屋外における温熱感に及ぼす影響」. 日本建築学会大会学術講演梗概集

 

園庭研究所 代表 石田佳織

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【園庭や幼児と自然のについての著書】

『園庭を豊かな育ちの場に:質向上のためのヒントと事例』

園庭園庭全国調査に基づいて、園庭での保育・教育の質をより高めるための視点や工夫をご紹介しています。面積が小さな園や制約がある園での工夫や、地域活用の工夫もご覧いただけます。

* 2019こども環境学会賞【論文・著作賞】を頂きました。

 

『森と自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック』

石田は以下を担当させていただきました。→第1章5「幼稚園施設整備指針と園庭調査を踏まえた屋外環境のあり方と自然」東京大学Cedep園庭調査研究グループ/第1章8「幼稚園教育要領等の5領域に合わせた先行研究」北澤明子, 木戸啓絵, 山口美和, 石田佳織

 

『保育内容 環境 第3版』

石田は第6章4節「自然環境と持続可能な社会」を担当させていただきました。