両乳房を切除し、再建もしないと決めた私に、何人かが「カナコは勇敢だね」、そう言ってくれた。私は自分のことを勇敢だとは思わなかった。決断にそれはどの決意を必要としなかったし(イズメラルダのおかげだ)、傷口を見たとき、「なんてかっこいいんだろう」と、心から思った。もしかしたら私は、他の人から見れば「かわいそうな女性」なのかもしれない。でも私は、自分のこの体を、心から誇りに思っていた。人生で一番自分の体を好きになった瞬間かもしれなかった。ずっと、小さな胸がコンプレックスだった。テレビや雑誌では、大きな胸の女性が褒め称えられていて、一方小さな胸の女性は、小さな胸である限り、小枝のように痩せていなければならなかった。「俺は小さな胸の女性が好き。だって小さな胸の人って恥ずかしがるじゃない? それがいいんだよ。」などと、堂々と言う人までいた。つまり、小さな胸の女性は、その胸を恥じないといけないということなのだった。……。……。
そもそも、胸の大きさや形で、私たちの価値を評価されるなんておかしい。年を経るごとにその思いは強くなったが、長らく自分の身体にかけられていた呪いを解くことはなかなか困難だった。つまり、心のどこかでは、やはり胸に対するコンプレックスは消えていなかった。でも、それらを全て失った今、私はなくした胸に対して、言いようのない愛情を感じた。「どう見えるか」なんて関係なかった。大きさなんて、形なんて、乳首の色なんて、関係なかった。私の胸は、本当に、本当に素敵だった。医療廃棄物として処理されたであろう私の胸と乳首に、私は今、心から謝罪したい。そして、感謝したい。
(4 手術だ、Get out of my way)