-統合失調症 再発から1ヶ月半-
-妊娠13w-
担当の助産師さんの計らいで、
1週間早く妊婦健診を受けてきました。
精神科病棟に妻を迎えにいくと、
外出手続き中、
妻は信号待ちのランナーのように、
足踏みをしていました。
トイレ我慢中の妻の癖です。
トイレ行った状態で待ってればいいのに…
妻らしさが出ていました。
ジーンズの後ろポケットから、
妊婦用サプリの袋がはみ出していて、
最近肌身離さず持っているようでした。
「最近何も言わなくてもご飯食べるんです」
「妊婦用サプリも自分で飲んでますよ」
外出前に看護師さんと少し話していましたが、
妻がランニングマン状態だったので、
すぐに院内のトイレに移動しました。
「産婦人科で尿検査あるぞ…」
「え…」
「とりあえずお茶飲んどくしかないな」
「飲む」
家に帰り少しして、
産婦人科のある総合病院に行きました。
受付を済ませ尿検査、
「なんとかなった」
担当の助産師に呼ばれ、
血圧、体重測定、むくみチェックをしました。
「身体の変化、腹痛や出血はありますか?」
「ないです」
「心境の変化はありますか?」
「前とは少し違います、心配です」
意味深な返答だなと横で聞いていましたが、
「そうですよね」
「今日はじっくりエコー見ましょう」
「はい、わかりました」
受け答えは前よりできてきたなと、
私は私で妻を健診している気分でした。
体重も1kg増えていてご飯頑張っているんだなと、
そんな気持ちでみていました。
診察室に通され、
「妊娠13週目、今日からお腹でエコーみますね」
先生は早速エコーに取りかかりました。
妻は前回より落ち着いていました。
「いいですねー」
「頭、鼻、口、手、足、心臓、順調ですよ」
「はい」
いろんな角度から何回も、
妻と私に赤ちゃんの状態を見せてくれました。
検索魔と化していた私は、
エコーの見方や所見は一通り調べていたので、
何となく順調そうなのはわかりました。
言われたサイズ感や頭の大きさも、
13週の平均値くらいだなと思い、
よく言われる12週の壁も越えたのだと、
少しほっとしました。
妻はただじっと画面を見つめていて、
妻より私の方が動揺してたのかもしれません。
先生はさらに、
出生前診断を控えた私達に、
「一般的に染色体異常がある場合は」
「この辺り、首から腰に浮腫がでやすいです」
「この子の場合は浮腫はでてませんし」
「まだ小さいですが鼻もこれかな」
そんな感じに説明してくれました。
妻は健診後、
先生や助産師さんに何度も、
「ありがとうございました」
と言っていました。
「もしNIPTで何かあればすぐ連絡ください」
そう言われて診察室を後にしました。
待合で待っていると、
妊婦さん達がいかに様々な心境かがわかります。
弾むように笑顔で歩く方、
涙を浮かべておられる方もおり、
喜びや悲しみが交差した空間です。
妻はまだ表情がつくれない状況で、
はたからみたら哀しそうに見えたと思います。
私達以外はほとんど1人で来ており、
妊婦さん達は病院では1人で健診の不安と、
向き合わないといけないんだなと、
そう感じました。
妊婦健診休暇なるものを作り、
夫婦で健診を受けられる世の中の方が、
きっと孤独感や不安を解消できるのでは…
そんな事を考えていると妻が急に、
「色々と普通にやってくれありがとう」
「え?どういうこと?」
「普通じゃない事、普通にやってくれて」
「ありがとう」
妻がそんな事を考えているとは、
びっくりしました。
今年の夏は例年にもなく真夏日が続き、
再発がいつ起きてもおかしくないという事実、
妊娠という今後の人生を左右する出来事、
不安と決心が同時に心に焼きつきました。
食欲の秋、
帰りにとんかつ屋に行きました。
季節感など失ってるはずの妻ですが、
定食を私より早く食べ終わり、
おかわりしたキャベツも食べ、
最後にサプリをお茶で流し込んでいました。
その単純さに、妻の強さを感じました。