絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話 -88ページ目

雑話190「ルノワールの悩み」

靄がかかったようなソフトフォーカスの女性像で有名なルノワールですが、デビュー以来一貫してそのスタイルを保ったわけではありません。


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ピエール=オーギュスト・ルノワール「アンリオ夫人」1876年頃

印象派の一員として取り組んできた彼の作品は、フォルムの輪郭を明確にせずに色調で表現し、陰影も彩色するという、流動的、暗示的な技法を採用したものでした。


ルノワールの優雅でのびやかな筆致による画面の色彩と肌合いへのアプローチは、彼を富裕で著名な人々のお気に入りの画家とし、成功をもたらしました。


しかし、ルノワールは1883年頃から自らの画風に限界を感じ、新たなスタイルを模索し始めました。


ルノワールの新しい様式はより堅固な形態を指向していて、素描や伝統的な肉付けの手法を強調してました。


「雨傘」の画面にはそんなルノワールの悩みがよく表れています。画面をよく見ると、2つの違ったスタイルが混在していて、まるで別々の作品を一つに合体させたようです。


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ピエール=オーギュスト・ルノワール「雨傘」1881-85年

この作品は1881年頃以降描き続けた近代生活を主題とした大作の一つですが、4年ほど中断してから完成されたと考えられています。


作品の前景右側にいる母親と2人の娘たちは、柔らかく、豊かで、調和のとれた1870年代の様式で描かれています。


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「雨傘」の右側の女性

それとは対照的に、雨傘、背景、そして左側の買い物中のメイドとその背後で彼女を見つめている男性は、より乾いた、抑制された技法で描かれていて、鈍い色彩とシステマティックな筆捌きが用いられています。


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「雨傘」の左側の女性

この新しい様式の頂点に来るのが、大作「浴女たち」です。


女性たちはアカデミックに表現され、なめらかな輪郭線で描かれ、入念に仕上げられています。


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「浴女たち」(部分)

ただ、背景に広がる風景のみに、古き印象主義の瞬間性がいくらか残っています。


この作品の女性たちは、アングルの裸婦を思い起こさせ、ルノワールの理想がオリエンタリスムの快楽主義的な女性幻想と符合していることが分ります。


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ピエール=オーギュスト・ルノワール「浴女たち」1887年頃

このアングル風の画風は、愛好家の大半を戸惑わせ、より保守的な世界からも支持されませんでした。


その後、ルノワールは色と線の折り合いをつけた、よりしなやかな画風を取り入れるようになっていったのでした。