雑話194「ホックニーのプール絵画」
8月も終わりに近づいていますが、相変わらず暑い日が続いています。そこで、今週はプールを描いた涼しげな絵をお届けしましょう。
デイヴィッド・ホックニー「水しぶき(大)」1967年
作者のデイヴィッド・ホックニーは、現代アートを代表するの画家の1人です。
イギリス出身にもかかわらず、ロサンゼルスに本居を構えているホックニーの芸術は、陽気な風土のロサンゼルスの、どこにでもにありそうなモノのひとつであるスイミングプールを連想させます。
特に、上の「水しぶき(大)」は彼の絵の中でも最も親しまれているものの1つです。
人が水面下に飛び込んで出来たばかりの水しぶきを描き出したこの作品は、外国人だからこそ描くことのできた、カリフォルニアの太陽の下でのカラリとしたぜいたくな暮らしの愛すべきイメージだとされています。
こうした生活の中の諸要素が、ホックニー芸術の主題となったのは、1960年代に入ってからでした。
デイヴィッド・ホックニー「ピカソの壁面のある3脚の椅子」1970年
空いている椅子、人が無造作に脱ぎ捨てた衣服、テーブルの上の(独りで使うために準備されたが、まだ手つかずのままになっているとしか思えない)鉛筆、紙、辞書、テレビ、食べ物などの静物、ひと気のない郊外住宅の芝庭、そこにあって自然と庭師の両方の活動を奪い取っている自動散水機・・・
デイヴィッド・ホックニー「散水中の芝生」1967年
そういったものの絵は、去っていった人たちを暗示しているのです。
この「水しぶき(大)」では、真平らなカンヴァスの真中を打ち砕くバロック的な華が、裏庭のオアシスの静まりかえった青い水面の下へダイヴァーが姿を消したことを告げています。
「水しぶき(大)」(部分)
飛び込み板は、カンヴァスの右下隅から向こうへ突き出ていて、その角度は、爽やかな喜びをもたらす絵の、清潔で、晴れやかな明晰性へ我々を誘っています。
情景に対してそのような位置につかされることで、我々は、姿を消すという行為の隣の列に並んでいるのです。



