雑話201「隠されたメッセージ」
下の絵は、16世紀のドイツやイギリスで活躍した、ハンス・ホルバインの「大使たち」です。
ハンス・ホルバイン「大使たち」1533年
向かって左側の男性が駐英フランス大使、右側はその友人の司教だといわれています。
さて、この2人の男性を描いた絵画は、単なる肖像画ではありません。
二人の間に置かれた家具の上には、様々な小物が置かれています。これらは、もちろん偶然そこにあった訳ではありません。
※これらの詳細部分は宗教的な分裂を意味している可能性があります。
例えば、切れたリュートの絃は不信心を、その下にある讃美歌集はキリスト教的調和への願いを表しているかもしれません。
地球儀や折れたリュート、日時計などの謎めいた静物は、それぞれ何らかの象徴として描かれているのです。
しかし、それ以上に不可解なのが、二人の足元に描かれている奇妙な物体です。一体これは何なのでしょう?
実は、この奇妙な物体の正体を知るには、ちょっと特殊な見方をする必要があります。
この物体が短く見えるように、絵に近づいて斜め上から見ると、あら不思議!
奇妙な物体がドクロに変わりました。
こうして足元に特殊な見方をしないと見えないドクロを描くことで、ホルバインは、有能な若者たちにもいずれ死が訪れる=「常に死を想え」というメッセージを託しているのです。
このような技法はアナモルフォーズと呼ばれ、16世紀のヨーロッパで流行した手法でした。
目に見えるものの裏側に別のメッセージを忍ばせる-「大使たち」は、そんな当時の人たちの遊び心があらわれた傑作といえるでしょう。



