雑話199「アメリカン・ポップ・アート展 ③ウォーホル《200個のキャンベル・スープ缶》」
3週続いた「アメリカン・ポップ・アート展」の紹介作品の最後は、この展覧会最大の注目作品であるアンディ・ウォーホルの「200個のキャンベル・スープ缶」です。
アンディ・ウォーホル「200個のキャンベル・スープ缶」1962年
ウォーホルは、広告のイメージをカンヴァス上に拡大投射して描いた一連の作品につづき、1961年終わりから1962年にかけての約半年ほどの間、キャンベル・スープ缶を描いた作品を集中的に制作しました。
32種類のスープ缶を1個ずつ描いた32枚の連作「32個のキャンベル・スープ缶」のような、小ぶりのキャンヴァスに1個だけ描いた一連の作品が制作された後、1枚の画面にたくさんのスープ缶のイメージを並べた連作が登場します。
アンディ・ウォーホル「32個のキャンベル・スープ缶」1962年
※展覧会には出品されていません
この連作には、「200個のキャンベル・スープ缶」とともに、100個のキャンベル・スープ缶を描いた作品2点、そして27個のスープ缶を3次元的に表現した木箱状の彫刻作品1点が含まれていました。
これらの作品、なかでも特に3点の絵画は、大量生産される商品のイメージを連続して規則的に並べ、一枚の画面を埋め尽くした、ウォーホルの最初の絵画であり、それゆえもっとも重要な作品の一つです。
出展作品には、200個のキャンベル・スープの缶詰が、縦に10段、横に20個、整然と並んで描かれています。
展示室の「200個のキャンベル・スープ缶」(右)と「キャンベル・スープ缶Ⅰ」(左)
このイメージは、郊外の大規模なスーパーマーケットの棚に商品が並べられている光景を連想させます。
食品などの日常的な生活必需品が、記号化された商品として工業的に大量生産・消費される社会は、第二次世界大戦後、アメリカから世界へと急速に広がっていきました。
イメージとオブジェが交換可能な記号として氾濫する、この新しい記号消費社会の本質、そしてそのなかでの感性の変容を、アンディ・ウォーホルはいち早くとらえ、表現したのです。
キャンベル・スープ缶の規則的な反復を描くために、ウォーホルは厚紙を切り抜いて作った型を画面に当てて、筆やスプレーによって絵具を塗り、同一の図柄を繰り返す、ステンシルという技法を用いました。
「200個のキャンベル・スープ缶」部分
同じ手順を反復し、画家の手技の痕跡を残さないこの技法は、それ自体が、オートメーションによって工場で作られている缶入りスープの生産自体をなぞっていたと見ることもできるでしょう。
しかしステンシルは、写真のイメージをさらに正確に転写できるシルクスクリーンに、すぐに取って代わられましたので、ほどんどのウォーホルの作品はシルクスクリーンが用いられています。
ステンシルを用いたこの作品をよく見ると、まだ手描きの跡が見ることができ、現代アートの価値観を受け入れられない私にとっては、シルクスクリーンの作品よりもさらに価値のあるように感じられます。
さて、ウォーホルの作品を含め、現代アートの作品はサイズの大きいものが多く、実際に作品を目の当たりにするとその迫力に驚かされます。
展示室の様子
時間の許される方は是非会場に足をお運びいただき、直にそのエネルギーを感じていただきたいと思います。
アメリカン・ポップ・アート展
国立新美術館(東京、六本木)
10月21日(月)まで開催




