雑話202「印象派を超えて-点描の画家たち①」
現在、東京六本木の国立新美術館で開催中の「印象派を超えて-点描の画家たち」に行ってきました。
国立新美術館2Fの展覧会場入口
この展覧会は、スーラやシニャックなど点描画で有名な分割主義と呼ばれた画家たちの作品を中心に構成されています。
今回は、印象派の筆触分割という技法をもとに、科学的な知識を加えて開拓された点描技法が、ヨーロッパ各地に広がり、抽象絵画へと発展していった過程をそれぞれの作品を通して見ていきます。
それでは、展覧会の構成順にダイジェストでご紹介していきましょう。
第1章「印象派の筆触」では、分割主義の発想源となった印象派の巨匠たちの作品が展示されています。
クロード・モネ「サン=ジェルマンの森の中で」1882年
印象派の典型的な様式である筆触分割とは、粗い筆触とスケッチのような仕上げのことです。
彼らはこのような大胆な筆触で市民の賑わいや、その光景を反射しつつゆらゆらと揺れる水面の様子などを描きました。
「サン=ジェルマンの森の中で」の左下アップ
筆触分割という描法は、理論的に方式化されていたわけではなく、印象派の画家たちが感覚的にたどり着いたものでした。
次章の「スーラとシニャック-分割主義の誕生と展開」では、印象派の筆触分割に触発されたスーラたちの作品が並んでします。
ジョルジュ・スーラ「ポール=アン=ベッサンの日曜日」1888年
自由な筆遣いによって、移ろいやすい光を捉えることに努めた印象派の作品は、次第に飽きられ始め、画家たちの関心は観察と本能に基づく仕事から、科学的な知識に基づく仕事へと移っていきました。
スーラは、色彩と光学に関する当時の発見を使って、印象派の筆触をシステマティックな点描に発展させ、印象主義に新しいステップをもたらしました。
彼は、パレットの上で色を混ぜるのではなく視覚において混ぜるべく、純粋な顔料の小さな点をカンヴァスの上におきました。
「ポール=アン=ベッサンの日曜日」の左下のアップ
純粋な色をカンヴァス上で注意深く並置することで、それらが視覚的に混ざったように見えますが、この場合パレット上で混ぜ合わされた顔料より、色調の豊かさと鮮やかさを強めるとされていました。
スーラのシステマティックな筆遣いに感銘を受けたシニャックは、スーラと協力して分割主義の基本的教義を発展させてきました。
スーラが31歳の若さで亡くなった後は、彼の厳格な分割主義から徐々に距離を取っていきましたが、分割主義の基本的な原則には忠実であり続けました。
ポール・シニャック「オレンジを積んだ船、マルセイユ」1923年
※1890年代より細かく分割されすぎた筆触によって、色調が灰色に近づいているとして、タッチの幅を大きくしました。こうした装飾性が高いモザイク風の筆触はシニャックの後期作品の特徴となりました。
スーラによって定義された様式そのものは、短い期間しか存続しませんでしたが、シニャックの尽力によって分割主義は自然の再現に対して、絵画が優位性を確立していく過程を示し、フォーヴィスムやキュビスムといった20世紀美術の運動の基礎を準備したのでした。
<次週に続く>





