雑話227「名画の値段」
先月のブログでご紹介しましたラファエル前派のリーダーの1人、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの重要な作品が、来たる5月22日にロンドンで開催予定のオークションに出品されるようです。
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「パンドラ」1871年
※落札予想価格£5,000,000-7,000,000 (8億6千万円-12億円)
「パンドラ」というタイトルのこの作品は、ロセッティの作品を代表するもので、5百万ポンドから7百万ポンド、日本円で8億6千万から12億円という高額な落札予想価格がつけられています。
もし、この予想価格で落札されれば、ロセッティの作品の最高落札価格記録を更新することになるのですが、それでもこの作品は彼の有名な作品という訳ではありません。
例えば、彼のもっとも有名な作品のひとつ、ブログでもご紹介しました「プロセルピナ」ならいくらで落札されるでしょうか?
ちなみに同作品の色チョーク版は昨年11月のオークションで3,274,500ポンド、約5億6300万円で落札され、その時点の作家別最高落札価格記録を更新しました。
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「プロセルピナ」1880年
※2013年11月に5億6300万円で売却
この作品の落札予想価格は120万ポンドから180万ポンドでしたから、予想の2倍以上で売却されたことになります。
さて、近年で話題となった名画の値段としては、2012年5月にオークションで落札されたムンクの「叫び」のパステル版が1億1990万ドル、当時の円換算で96億円で、これがこの時点での美術品オークションの最高落札価格記録となりました。
エドヴァルド・ムンク「叫び」1895年
※2012年に1億1990万ドル、約96億円(当時の円換算)で売却
この「叫び」も、もっとも有名な油彩の「叫び」ではありませんから、現在オスロ国立美術館所蔵の「叫び」が売りに出されたら、その価格はパステル作品の価格をはるかに超えるものとなるでしょう。
また、歴史を振り返ってみると、1889年にオークションにかけられたミレーの名画「晩鐘」が当時としては破格の値段で落札されました。
ジャン=フランソワ・ミレー「晩鐘」1857-59年
※1890年に75万フラン、約8億円で売却(当時の日本の国家予算の約10倍)
現在、パリのオルセー美術館に所蔵されているフランスの国宝ともいえる、この作品をオークションで最後まで争ったのは、何とフランス政府とアメリカ政府でした。
1889年、フランス革命100周年の記念行事として、パリ万国博覧会の開催が決定したフランスの美術局長は、世界的なミレーブームで圧倒的な人気のあった「晩鐘」を国で買い入れ、万博に展示しようとしました。
一方、プロテスタントが荒野を開拓して作り上げた国アメリカでも、ミレーが描いた敬虔なキリスト教徒の姿が熱烈に受け入れられていました。
なぜなら、プロテスタント教会で飾られるのは、十字架のみで、キリストや聖母像は置かれなかったからです。そこで、清く貧しい農民の姿を描いたミレーの絵が、カトリックでいう祭壇画の役割を果たしていました。
入札の結果、フランスが55万3千フラン、約5億5300万円で落札したのですが、当初の予算をはるかに超えていたために、フランス政府が支払いを拒否する事態となり、結局「晩鐘」は同額でアメリカに渡ってしまいました。
その後、フランスのデパート王アルフレッド・ショシャールが「晩鐘」は国の宝であり、祖国フランスにあるべきだとして私財を投じて買い戻しましたが、その費用はアメリカの支払った金額をはるかに上回る、8億円というものでした。
8億円だと昨今の高額な絵画の値段と比べて、随分安かったのだと思われるかもしれませんが、当時の日本の国家予算は8,215万円と一億円にも満たなかったことを思えば、途方もなく高額だったことが判ります。
誰もが知るような有名な芸術作品、例えば「モナリザ」のような作品の値段は、いったいどんな価格になるのでしょうか?ちょっと想像もできませんが、きっと恐るべき金額になるのでしょうね!



