雑話53「ウフィツィ美術館自画像コレクション展」
現在、大阪・中ノ島の国立国際美術館で開催中の「ウフィツィ美術館自画像コレクション展」に行ってきました。
ウフィツィ美術館はイタリア・フィレンツェにある1581年に起源を持つ近代西洋最古の美術館です。
この美術館は誰もが知っているボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」などをはじめとするイタリアルネサンスの巨匠の作品のコレクションで有名です。
ウフィツィ美術館(奥はパラツッォ・ベッキオ)
但し、今回の企画ではそういった美術館の看板作品の代わりに、16世紀の巨匠から現代美術の作家までを集めた1700点を超える自画像コレクションの中から選ばれた78点の作品群で構成されています。
多くの優れた自画像を描いたレンブラントやゴッホの作品なら御覧になった方も多いのではないかと思いますが、このコレクションの中には自画像を見たことがないような作家の作品も多数あり、興味深いものになっています。
その中でも特に気になった作品をご紹介しましょう。
会場に入って、まず目に付いたのは自画像で有名なレンブラントの作品です。
レンブラント・ハルメンス・ファン・レイン「自画像」1655年頃
レンブラントの肖像画は、人物が浮かび上がるほど光と影の対比を強調していて、そこに静かにたたずむ人物はその内面まで描かれていると言われています。
この自画像も確かに暗い背景に顔の部分がぼんやり浮かび上がるように光が当たっていますが、その顔の部分もあまり描き込まれておらず、薄っぺらい印象です。
破産の前年に描かれたので、疲れていたせいかとも思いましたが、この年代でも優れた作品を残しています。
よく調べてみると、この作品は過去に贋作の疑いをかけられ、その真贋問題は現在も保留されている状態であることがわかりました。
対照的に良かった作品が、アングルの自画像です。
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「自画像」1858年
「ラ・グランド・オダリスク」で有名なアングルの絵画は、凹凸を強調しない抑制された肉付けと、肉体以外の表現での細部にまで至る精緻な描写の結果、距離感が薄れ平面化されたように見えるのです。
この自画像でも、アングルの特徴である肉付けを抑制する表現によって、顔の皺などの凹凸が簡略化されて描かれていますが、この表現が絵のモチーフと鑑賞者との距離感を曖昧にし、まるでその間に空間が存在するかのような錯覚を引き起こしています。
意外だったのは、女性の作品が多くあったことです。
エリザベート・シャプラン「緑の傘を手にした自画像」1908年頃
近代になるまで、女性は社会的な問題で画家というものになることができないと思い込んでいたのですが、16世紀の社会的に難しい状況の中でも、絵の技巧の習得に励んだ女性たちが結構いたんですね。
また、現代作家のコーナーに至ると、自画像と言うものに対する様々なアプローチが見られ、彼らの奇抜な創意工夫も見所の一つと言えるでしょう。
横尾忠則「眠っている私」2010年
※今回の開催を機に草間彌生、杉本博司らとともに本人から寄贈された
■ウフィツィ美術館自画像コレクション
巨匠たちの「秘めた素顔」1664-2010
〔大阪展〕
国立国際美術館
大阪市北区中之島4-2-55
http://www.nmao.go.jp/japanese/home.html
2010.1127(土)-2011.2.20(日)

