雑話55「セザンヌとキュビスム②」
先週のブログでは、キュービスムが影響を受けたセザンヌの絵画世界についてお話しましたが、今週はセザンヌの影響を受けて発展を遂げたブラックの絵画のお話です。
ブラックは1906年にサロン・ドートンヌで見たセザンヌの作品から着想を得て、セザンヌの過ごしたレスタックでいくつかの作品を完成させます。
その時制作された「オテル・ミストラルのテラス」では重くかつ制限された色調や、深い空間と浅い空間の間の関係を示す壁や木々の利用が、セザンヌからの影響を反映しています。
ジョルジュ・ブラック「オテル・ミストラルのテラス」1907年
その後、ブラックはセザンヌの絵画論を押し進めた作品を次々と制作していきます。
「レスタックの水道橋」では、セザンヌの用いた短く方向性をもった色彩の斑点や、パターン化された要素によってしるされたあいまいな空間的移行への参照がよりはっきり現れています。
ジョルジュ・ブラック「レスタックの水道橋」1908年
1908年の夏に制作した「レスタックの家々」は、セザンヌの影響が一番強いものとなりました。
ジョルジュ・ブラック「レスタックの家々」1908年
ブラックは一貫性のない明暗法を使い、そのために光が右側からも左側からも差し込んでくるように見えます。
また、右下の木々はその上の家の軒とつながるかのような奇妙な稜線を形作ることで、絵画表面上の諸形態が互いに関連させられています。
セザンヌが色彩の論理で世界を表すことによって奥行きと表面を同時に捉えようとしたのに対して、ブラックは、色彩を粗野なものに限定して、セザンヌのシステムの外面的には奇妙な効果を、その論理よりも優先させようとしているのでしょう。
そして、この「レスタックの家々」含む、この時制作された作品が最初のキュビスムの作品ではないかと言われています。
その後、この奇妙なセザンヌ的発明にピカソが加わり、キュビスムは更なる展開を迎えることになるのです。
こうしてみると、ブラックやピカソは決してセザンヌの絵画論を純粋に発展させたわけではなく、自分たちの興味のある部分だけを選んでその部分を特化していった末に、キュビスムが生まれたようです。
それは必ずしも、セザンヌの意図したところではないかもしれませんが、それでもセザンヌの絵画論がモダンアートに多大なる影響を与えたことには違いなく、彼の考え方の先進性が伺われるところですね。



