雑話59「災害を描いた印象派」
先週の1月17日で、戦後未曾有の大災害となった阪神淡路大震災から丸16年経ちました。
その後も世界中で大規模な自然災害がつづき、最近ではオーストラリアやブラジルが大洪水に見舞われるなど、自然の脅威の前には人間はいかに無力であるかを思い知らされます。
アルフレッド・シスレーの写真
さて、印象派の中には、そんな災害の場面を印象派らしい風景に変えてしまった画家がいます。
それは風景画を得意としたアルフレッド・シスレーで、彼はある洪水をシリーズで描き、それらは彼の最高傑作のひとつになりました。
彼が描いたのはポール・マルリーというパリ近郊の、セーヌ川沿いにある小都市が洪水に見舞われた時の様子でした。
現在のポール・マルリー
そのうちの一枚は第2回印象派展にも出品されました。
この時に描かれたシリーズは全部で7点で、洪水の様々な局面を段階を追って捉えています。
アルフレッド・シスレー「ポール・マルリーの洪水」1876年
洪水と言う災害の一場面を描いたにもかかわらず、ここには悲惨な感覚がありません。
災害によって引き起こされたであろうドラマは、人々がその横にある真っ黒で四角のドアやそれが水面に映った影と同じように描かれることによって取り除かれているのです。
アルフレッド・シスレー「ポール・マルリーの洪水」1876年
画面の中では、空・水面・影が一体となり、人々は皆同じように描かれて、静かで動きません。
そこには自然の必然性が感じられます。
こうして、シスレーは二度とたどり着くことのできないほどの壮大さのある画面を達成したのです。
街中に溢れた水の中にイーゼルを立てるような中で描いたはずですが、シスレーの興味はあくまでも視覚的な効果に集中しています。
その意識がこの洪水のシーンをまるで美しい水辺の風景のようにみせています。