絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話 -211ページ目

雑話67「パウル・クレー展/おわらないアトリエ」

京都国立近代美術館で開催中の「パウル・クレー展」を見に行ってきました。


平日の午前中で少々雨模様ということもあり、来館者は少なく、じっくり見るにはいい環境でした。


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美術館前・・・あまりに人影がないので閉館日かと心配したほどでした!


パウル・クレーは抽象画の苦手な日本人にとって意外なほど親しみ深い作家であり、彼の名は知らなくてもポスターや壁紙のデザインなどで彼の作品を見たことがあるという人は多いのではないでしょうか?


さて、今回の展覧会ではクレーの作品がどのようにして作られたかという点に注目し、その手法などによって分類わけされた6つの章から構成されています。


それは、クレーの作品が「どのように作られたか」を知って、はじめて正確に理解されるという理由からですが、実際に製作過程が明らかにされたことで、クレーの作品の独特の表現の謎がわかり、興味深いものになっています。


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パウル・クレー「船の凶星」1919年


例えば、上図のようにクレーの作品には描いているにもかかわらず、版画のように描線がぼやけていたり、版画を刷る過程でできた滲みのような部分があるものが多くあります。


それらは自ら描いたデッサンの下に黒い絵具を塗った紙と本紙を重ね、その上から針でなぞってデッサンを本紙に写すといった手法で描かれていました。


ですから、クレーの作品には同じデッサンを元に、線描のみのものや様々な配色で彩色されたものなどいろいろなバージョンがあるのです。


また、クレーの作品には完成された元の絵を2つ以上に切断し、それぞれの部分をつなぎ合わせて再構成したり、それぞれの部分を独立した作品としたものも多くあります。


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パウル・クレー「卵のある」1917年

※下から4分の1の部分は切り取られた後、上の絵の下部に付け加えられました。


クレーはそれを「構成のための破壊」と呼んでいました。


もう一つの制作方法として、絵画の表と裏の両面に描かれた作品があります。


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パウル・クレー「花ひらいて」1934年

※この作品のように両面作品の場合、裏表が見られるように展示してあります


一般的に、こうした裏面に描かれた絵というものは、表面の絵を破棄するためや、キャンバスを節約するためなどの理由で制作されました。


しかし、クレーの両面作品の多くは、両面の絵が構図や意味の上で何らかの関連付けがされており、絵画を3次元の物体として捉えた故に制作されています。


以上のような制作手法などの専門的な知識を知らなくても、クレーの作品に展開される小さくて不思議な世界は、一見マニアックながらも、小さくて可愛いものが大好きな日本人には大変魅力的で、ただ見るだけでも充分楽しめる展示になっています。


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パウル・クレー「襲われた場所」1922年



美術鑑賞に耽るような雰囲気ではありませんが、そんな時期だからこそ気持ちを豊かにしてくれる芸術とのふれあいの時間を積極的に持っていただければと思います。


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展覧会公式HP:http://klee.exhn.jp/index.html

※このHPではクレーの制作手法がスライド形式でわかりやすく説明されています