雑話117「ルノワールの最後の言葉」
「この絵で、何かわかり始めたような気がするよ。」
晩年のルノワール
これが、ルノワールの言葉として伝えられる、最後のものです。
その日ルノワールは、肺に病気が及んでいたので屋内に留まり、女中の持ってきてくれたアネモネを描くことにしました。
数時間もの間、病気のことも忘れて絵を描くことに没頭した末に、完成した作品の豊かさは目を見はらせるほどのものだったそうです。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「アネモネ」1916年
※文中の作品ではありませんが、こんな感じではなかったでしょうか?
そして筆を受け取ってくれと女中に合図をして、いったのが冒頭の言葉でした。
その時ルノワールは78歳、すでに押しも押されぬ印象派の大家として世間に認められており、レジオン・ドヌール勲章まで授与されるような存在でした。
そんな絵画の神様のような彼が、死の直前までさらなる高みを目指して学ぼうとしていたとは、まさに驚くべき探究心かつ制作意欲です。
しかも、晩年のルノワールはリュウマチに侵され、歩くことはもとより、絵筆すら持てないような状態で、絵を描くときは包帯で絵筆を手首に縛りつけていました。
車椅子の上で絵を描くルノワール
※絵筆を縛りつけているのがわかります
その上、肺の病気になっていたのですから、その時のルノワールにとって、絵を描く行為は大変な困難をともなう作業だったと思われます。
このあと、ルノワールは呼吸困難におちいり床につきました。
血管が破裂し、あえぎがうわごとに変わり、その夜のうちに彼は亡くなったそうです。
死ぬ間際まで大好きな絵を描き続けることができたのですから、ルノワールにとっては画家冥利に尽きる最後だったのでしょうね。


