絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話 -160ページ目

雑話118「現代アートは巨匠にもわからない?」

最近話題に上ることの多い現代アートですが、実際にその良さを理解できる人は少ないのではないでしょうか?


印象派の手法が当時の画壇に受け入れられなかったように、新しい芸術が理解されにくいのは今に始まったことではありません。


しかし、芸術の改革者として時代をリードしてきたかつての前衛芸術家ですら、後進作家たちの作品について判断しかねていたと聞いて驚く方は少なくないでしょう。


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アンリ・マティス「しま模様のTシャツを着た自画像」1906年

アンリ・マティスは20世紀を代表する画家の一人で、フォーヴィスムをはじめ、独自のスタイルを生み出していった芸術の改革者です。


そんなマティスも、第2次世界大戦後アメリカでおこった新しい芸術に対しては正当に評価できないと感じていました。


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ジャクソン・ポロック「No.5」1948年

※2006年に14億ドル(約112億円)で落札され、史上最も高額な作品となりました

それは、彼がジャクソン・ポロックら新進芸術家の作品について語ったことですが、実はマティス自身同じことをルノワールから言われていたのでした。


マティスが若い頃、彼はルノワールの絵が大好きでした。


第1次世界大戦が終わろうとしていた頃、ニースで療養していたマティスはまだ存命中だったルノワールに会いにカーニュにある彼の自宅を訪れました。


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ルノワール宅でのマティス(1918年)

マティス(中央)、ルノワール(右下)

ルノワールにとてもフレンドリーに迎えられたマティスは、何度か訪問したのち自分の絵をルノワールに見せました。


ちょっと残念そうな様子を見せたルノワールは、正直なところマティスが大した画家でないどころか、下手な画家だといいたいくらいだ、といいました。


しかし、マティスの使った黒がキャンバスのおさまるべき位置におさまっているのを見て、ルノワールはマティスを感じたままに評価することをためらいました。


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アンリ・マティス「ヴァイオリンのある室内画」1917-18年

※ルノワールを訪ねているころに描かれた、この作品も黒が画面を支配しています

ルノワールにとって黒の使用はキャンバスに穴を開けることと同じであり、黒は色彩ではないと考えていました。しかし、色彩の言葉を話すマティスは、黒を使いながらも、キャンバスにきちんとおさめていました。


そこで、ルノワールは自分の好みからすると、マティスは出来の悪い画家ということになるが、結局はマティスも(いいも悪いもない)一人の画家なんだろうと締めくくったそうです。


ご存知の通り、ルノワールもかつて、新しい価値観を生み出したない芸術の変革者の一人でした。


そんな彼らをもってしても、新しい芸術の流れを理解することが困難だったわけですから、凡人の我々がたやすく新しい芸術を理解することができなくても無理はないでしょう。


ただ、彼らが凡人と違うのは、自分たちの価値観が新しい芸術を正当に評価できないかもしれないことを自覚していたところです。


我々も芸術に限らず新しい事柄に対して先入観にとらわれず、公平な目で評価したいものですね。